デザインとは「人工物あるいは人工環境と人との間で起こるほぼ全てのことを計画し、幸福な体験を実現すること」 -- 山中俊治氏

「デザインとはなにか」というとても大きな問題について、最近ちょっとだけ言葉にしてみようとしています。大学の授業などでも話すのですが、僕なりの定義ではデザインとは「人工物あるいは人工環境と人との間で起こるほぼ全てのことを計画し、幸福な体験を実現すること」です。

「人工物あるいは人工環境」については、例えば花のデザインとか昆虫のデザインという言葉も普通に使いますが、僕が定義する場合は少なくとも人工物に関するものにしようかなと思います。

「人との間で起こるほぼ全てのこと」もそうで、純粋に性能を実現するためだけにスペックを計画するということもありますが、より根本的には対人に限定します。

そして「幸福な体験を実現すること」。ここにはいろんな幸福が含まれますが、幸福とは、人工物の創造を計画する人たちが対人的に与えるさまざまなベネフィットのことです。

アートやサイエンスはデザインと違って、本質的にはベネフィットって関係ないんですね。そのことを最終目的とはしていません。アートは必ずしも人を幸福にするばかりではなく、嫌な思いをさせることも、恐怖を与えることも、なんかお前違うんじゃないかと問題意識を突きつけることもありますよね。そういう意味でアートはデザインのこの定義とはちがうものなのです。

「takram Dialogue 05:山中俊治 × 田川欣哉 × 緒方壽人」より抜粋 http://10plus1.jp/monthly/2015/01/takram-directors-dialogue-05.php

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