見出し画像

カラオケ行こ!感想雑記

ずっと気になっていた、映画「カラオケ行こ!」をようやく観てきた。以下、ネタバレありの感想戦。

一言で言うと、「なんでもっと早く見なかったんだ!最高すぎる!」という感想。エンターテインメントとして完成されすぎていた。

聡実くんと狂児の、なんとも言えない、ただただあたたかい二人のやり取りは見ていて微笑ましかった。中学生とヤクザ、という、肩書きだけ見るとちぐはぐな二人。しかし、二人でいることがとても自然で、そこに変なノイズが一切なく、だからこそ互いに向けるあたたかさや信頼がスっと入ってきた。エンドロールが流れると、「いいものを見たなあ、、」と、とても満たされた気持ちになった。そんな中で飛び込んできたエンドロール後の映像には、まんまとやられた。敢えて内容は書きませんが、恐るべし成田狂児、とだけお伝えしておきます。

聡実くんと狂児の関係性が軸にはなっているが、聡実くんの部活まわりの描写が個人的にはとても刺さった。部長という立場にありながら、変声期を理由に合唱部に行けなくなってしまう聡実くん。それに苛立ちを覚える後輩の和田くん。合唱部に顔を出さなくなった聡実くんに何も触れず、そばにいる、映画を見る部の栗山くん。部活という狭いコミュニティならではの各人の葛藤や、それを受け入れてくれる場所があること。この描写がとても丁寧でよかった。聡実くんに、居場所があって本当によかった。

ストーリーから少し外れたところで言うと、俳優陣の関西弁のクオリティに安心感があった。関西弁話者としては、非関西弁話者の話す関西弁がどうしても受け入れられず、内容が全く入ってこないことが多々ある。「カラオケ行こ!」に関しても、ここの不安が拭えず、なかなか見るに至らなかった。しかし、狂児の一言目の台詞「カラオケ行こ?」の発音で、その不安は一切無くなった。成田狂児という、どこか胡散臭さのあるキャラの喋り方、そして聡実くんとの奇妙な出会いのシーンの台詞として、丁度いいラインの違和感をついてくる。関西弁っぽさがもう少し軽くても、ネイティブな関西弁として違和感がないと思うのだが、強めの関西弁かつ、こんくらい強い人もいるよな〜と、納得できる、本当に絶妙なバランスなのだ。聡実くんが、ヤクザ達の歌を聴いて「カスです」と言い放つシーンもよかった。関西の中学生にはあれくらいの逞しさがある。大人に対して物怖じしない強さ。メインキャスト二人の関西弁が聴いていて違和感なく、かつ役に合った喋り方だったことが、この映画の味をかなり調えていたと思う。

そして、この映画を語る上で欠かせないのが、紅。まさか紅に泣かされる日が来るとは。冒頭で狂児が歌うどこか滑稽な紅も、終盤の聡実くんがスナックで声を掠れさせて歌う紅も、どちらも好きだが、一番はと言われると、聡実くんが紅の英語部分を訳すシーン。中学生が訳したにしては、かなり意訳だな、と思ったが、狂児に歌詞を理解させる、という目的があって訳したのなら合点が行く。歌詞の最後に「ぴかぴかや」と付け足されているのが、狂児用カスタムの象徴だと思う。

最後に、わたしが一番好きだったシーン。聡実くんが、狂児の音域に合った、歌いやすそうな曲をリストアップしてくるシーン。全曲しっかり練習してくる狂児の変わらない健気さと、狂児のことを想って選曲した聡実くんから狂児への歩み寄りが描かれている。そんな背景は置いておいて、聡実くんの選曲が良すぎた。中学生のチョイスじゃないでしょ、ルビーの指輪もマシマロも。わたしがもっとも食らったのは、歩いて帰ろう。わたし的、好きな人に(好きな人でなくても)カラオケで歌われたら惚れる曲ランキング上位に入るので、まんまと惚れました。綾野剛さんのファンのみなさんからしたら、あのシーンの殺傷能力が高すぎないか?と勝手に心配している。推しの歌声カタログじゃないですか、あんなの。

カラオケ行こ!、今年のベスト映画候補。とにかく最高すぎました。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?