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【OrigInn Space】歴史建築の味わいに浸れる個性派プチホテル|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(8)

台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作『台北・歴史建築探訪』。このほど発刊される増補版では、初版の171件に加えてコロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど40件が追加されています。この連載では、『増補版 台北・歴史建築探訪』より一部を転載し、ご紹介致します。

増補版 台北・歴史建築探訪』(片倉佳史 著/ウェッジ)

 大稲埕だいとうていは茶葉や米、布地などの交易で栄え、今でもバロック風の装飾を正面上部に据えた商館建築が多く並んでいる。ここはその入口に当たる場所にあり、南京西路と迪化街の交差点に近い。6棟が連なっている大型建築で、地元では長らく「六館街」と呼ばれていたという。

南京西路に面した外観。一棟がそのまま保存対象となっている。

 外壁はすっきりしているが、さりげなく装飾が施されており、アクセントとなっている。竣工は1931(昭和6)年。所有者は台湾北部の大富豪であり、名家の誉れ高い林本源。現在は一部がリノベーション空間となっており、ショップやレストラン、ビアバーなどが入っている。

1階は現在、カフェとして営業している。

 中でも「OrigInn Space」は老家屋を用いたリノベホテルで、高い人気を誇る。屋内は天井が高く、レコードプレイヤーが置かれていたり、北欧ブランドのソファーが用意されたりしていて、居心地の良い空間となっている。

客室の様子。もともと、1階は商店で上は住居となっていた。
客室はわずか4室。戦後は長らく布問屋となっていた建物である。
部屋数が少ないので、早めの予約は必須。

 保存対象の建物なので、改修には制限が多く、細かい手続きを経なければならない。そのため、リニューアルには1年を要した。そして、本来の姿を保つべく、増設などはせずに部屋数4部屋のプチホテルにしたという。正式オープンは2017年3月。老家屋を利用した宿泊施設としては台北初のケースであった。往年の裕福層の暮らしぶりに触れられる空間となっている。

年季の入った階段や手すりにも味わい深さが感じられる。

文・写真=片倉佳史

──今回発刊された増補版では、コロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど、実際に訪れたくなる約40件を新たに追加して計211件が掲載されています。美しい建築写真をご覧になり、日本人と台湾人がともに暮らした半世紀を振り返れば、きっとまた台湾を旅したくなるはずです。ぜひお楽しみください。

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片倉 佳史 (かたくら・よしふみ)
1969年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。武蔵野大学客員教授。台湾を学ぶ会(臺灣研究倶楽部)代表。台湾に残る日本統治時代の遺構を探し歩き、記録。講演活動も行なっている。妻である真理氏との共著『台湾探見 ちょっぴりディープに台湾体験』『台湾旅人地図帳』も好評。
●ウェブサイト「台湾特捜百貨店

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