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京都──涼景寸刻(写真・解説=星野佑佳)

風流な川床、優雅を極める祇園祭、夜空に浮かびあがる五山の送り火……
京都には、古都ならではの夏の風物詩がいくつもあります。
一方で、中心部から少し足を延ばせば、心地よい風が吹く自然豊かな場所も。山、海、川──京都在住の写真家・星野佑佳ゆかさんが切り取った一瞬の涼。夏景色のなかの〝束の間の京都〟です──。(ひととき2022年8月号より)

■ 琴引浜の丹後ブルー [京丹後市網野町]

「丹後半島の西部に位置する琴引浜ことひきはまは、砂に石英などの鉱物が含まれており、歩くと摩擦でキュッキュッと音がする鳴き砂の浜として有名です。京都市内からだと夏は琵琶湖へ湖水浴に行く人が多いのですが、私はなぜか丹後の海を見たくなります。子供の頃に家族と来た思い出があるからかもしれません。全長1.8キロにわたる浜で、撮影地は東端。駐車場からはかなり歩くので熱中症対策をお忘れなく! やはり夏は暑いですが、晴天の日の早朝は、風が吹くと心地良くて、美しい海の青さからも涼を感じられますよ」

写真=星野佑佳

■ 夕暮れの経ヶ岬 [京丹後市丹後町]

きょうみさきは丹後半島の先端、近畿地方の最北にあって、柱状節理の海食崖など雄大な自然が間近に見られます。真っ白な経ヶ岬灯台との対比を、海風に吹かれながら眺める夕暮れは気持ちのいい時間です。遊歩道もありますが、野生動物が出没する自然豊かなところなので、歩きやすい服装でお出かけくださいね」

写真=星野佑佳

■ 伊根の舟屋 [与謝郡伊根町]

「『ふな』と呼ばれる民家が海の上に浮かぶように立ち並ぶ景観が人気の伊根いねちょう。伊根町観光協会が主催する『舟屋3ヵ所巡り』に参加した際に撮影した一枚です。昔から変わらぬ舟置き場からの景色で、時がゆっくり流れているような感覚になりました」

*「舟屋3ヵ所巡り」については下記をご参照ください
https://www.ine-kankou.jp/active/naibu

写真=星野佑佳

■ 久多の北山友禅菊 [京都市左京区]

久多くたは滋賀県との県境にある山間の集落。北山友禅菊は、この久多地域に自生していた野生菊(チョウセンヨメナ)の中から、特に強くて色の鮮やかな系統を選抜して、栽培しやすいように改良したものだそうです。見頃は7月下旬から8月上旬。夕方は比較的人も少なくて、おすすめです。この日は夕暮れ時に霧が漂いはじめ、一面の紫が幻想的な雰囲気でした」

*近くに駐車場(有料)があります

写真=星野佑佳

■ 将軍塚から望む月の入り [京都市山科区]

「将軍塚の市営展望台からの眺めです。京都タワーと満月がこんなに近くなるのは夏至から間もない時期だけ。夜の短い夏、市営展望台には深夜でも早朝でも誰かしら必ず人がいるんです。恋人たちが無言で佇んでいたり、友人同士が語らっていたり……いろんな人がそれぞれの今を過ごしていて、そんな情景を見ると“夏が来たなぁ”と感じます」

写真=星野佑佳

写真・解説=星野佑佳

星野佑佳(ほしの・ゆか)
写真家・フォトエッセイスト。京都市生まれ。同志社大学法学部卒業。2000(平成12)年から国内外を放浪しながら撮影を始め、05年より地元京都の風景や風物詩の撮影を手掛ける。著書に『京の祭と行事365日』(淡交社)やフォトエッセイ集『撮り旅』(風景写真出版)がある。

──夏景色の中の"束の間の京都"。ひととき8月号では、京都在住の星野佑佳さんが切り取った一瞬の涼、全9点をお楽しみいただけます。誌上の旅をぜひお楽しみください。

出典:ひととき2022年8月号




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