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在野研究一歩前(8)「はじめての短期労働(私的経験編:搬入作業)」

 私が取り組んだ「搬入作業」とは、具体的にどのようなものであったのか。
 それは、出来るだけ短く言えば「寝具関係の展示会の会場作り」であった。
 私は最初、単純に「ベッド類」を、トラックの中から取り出して、会場に運んでいくだけで終わりかなと思っていた。多少、身体にダメージは受けるだろうが、まあ特に頭を使う作業というわけではないから、「できるか、できないか」で心配する必要はないと。
 確かに実際も「できるか、できないか」で心配することはなかった。ただ、作業内容は、意外と「クリエイティブ」であったと思う。

 まず、予想に漏れず、トラックの中から、ベッドや布団、毛布、枕、電気スタンドなどの「寝具類」を、会場に運んでいく。作業はきちんと「軍手」をはめて行い、「搬入作業」に従事するのは初めてかどうかはとくに訊ねられることもなく、手慣れたスタッフの方から、寝具類を次々と渡される。
 「寝具類」というのは、枕や電気スタンドなどの小物類を除いて、一人で運ぶには難しい物が多かった。そのため、8人の労働従事者の内の1人が、無理して一人で布団を運ぼうとして、床に引き摺りながら会場に運んでいると、現地でスタンバイしていたスタッフの一人が、

「お前! 無理して運ぶな! 他のやつといっしょに運べ! 頭使えや」

と叫んだ。
 ここで、わたしは、スタッフの発言に「!」を添えているが、これは別に誇張ではない。言葉遣いに関しても、むしろ実際より少し柔らかいくらいで、自分が耳にしたときの「怖さ」というのは、うまく言葉で表現することはできない。
 私も何度かスタッフの方に怒鳴られた。その内容は、後に様々な「短期労働」に従事していくことになる私にとって、一つの「教訓」として活用されている。その「怒鳴られ」の中で、一番どの現場であっても活用できる普遍性をもったものとして、「声を出せ!」がある。
 例えば、今回の「搬入作業」の場合、大半の寝具類は二人以上で運ぶことになる。そのため、物を「持ち上げる」ときや「下ろす」とき、「運ぶ」ときに、「そんじゃ、持ち上げますよ、1、2の3」などどお互いに声を掛け合うことは大切になってくる。無言で作業をしていたら、一緒に運んでいる人に怪我をさせてしまう危険性があるからだ。
 私は最初、ほとんど声を出せていなかった。とにかく「寝具類」を会場に運ばなくては、とそれだけで頭がいっぱいになっていた。そんな時、スタッフの一人から、

「お前、物を受け取る時は、声を出せ! 怪我するぞ!」

と怒鳴られ、ある意味でぬくぬくと大学生活を過ごしてた私には、かなりの衝撃が走った。
 小学校、中学校、高校、大学と進級していくにつれて、「受験」というシステムによって選別された、自分と似たような「知識量」をもった人たちが、自分の周りを占める率は高くなっていく。中学時代までは、自分の周囲にも、意味もなく「怒鳴り散らしてくる」人たちが数人はいた。だがその人たちとは、高校進学以降になると、めっきり遭遇する機会は少なくなり、乱暴な叫びを耳にする機会もなくなる。

「まだ会って数分の人に、ここまで怒鳴れるとは……乱暴やな」
と思う自分と、
「短時間のうちに、作業を終らせなければならないから、多少乱暴な言葉を使うのも仕方がないよな」
と思う自分と。
 幾つかの「自分」が、私の心中(脳内)で拮抗していたが、結論としては、
「まあ、とりあえず、声を出そう」
と思い、行動に移した。
 その結果、そのあとも幾つかこまごまとしたことで「怒鳴られる」ことはあったが、「お前、物を受け取る時は、声を出せ! 怪我するぞ!」に感じた恐怖に勝ることはなかった。

 「声を出す」ことは、「短期労働」の現場、とくに「搬入」などの「肉体労働」の現場では、とにかく重要である。ぜひ、覚えていて欲しいです。

 私の従事した「寝具関係の展示会の会場作り」は、集合時間8時半~作業終了時間16時で、何回かの休憩時間をはさみながら、無事完了した。
 私が取り組んだ作業には、以下のものがあげられる。

①寝具類の搬入(トラックから会場へ)。
②会場内の指定された場所に、寝具類一式を運んでいき、カッターなどを使って梱包をといていく。
③ベッドを組み立てる。
④完成したベッドに、布団・毛布・枕などをセットしていく。
⑤作業中に出たゴミをできるだけ一つの袋に纏めて、会場外に持っていく。

 以上のように「搬入作業」には、おおかた「組み立て」という作業もくっついてくることが多い。もちろん、ある程度の「慣れ」や「熟練した技術」を備えていないと、こなせない作業もあるため、必ず「組み立て作業」に従事することになるとは言わないが、一応「搬入作業」に取り組む際は、「組み立て」を想定しておいた方がいいだろう。

【今回のまとめ】
①「搬入作業」では、多少「怒鳴られる」ことがあるが、それはスムーズな作業のためには仕方のない部分もあるため、素直に「内容」だけ受け止めて、行動に移していこう。
②「短期労働」、とくに「肉体労働」では、とにかく「声を出す」。
③「搬入作業」には「組み立て作業」がついてくる。

以上で「在野研究一歩前(8)はじめての短期労働(私的経験編:搬入作業)」を終ります。お読みいただきありがとうございました!


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