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アレキサンドライトの思い出

高級で希少な宝石

卸業をしていた時の得意先の一つにキャッチセールスの会社がありました。

そのキャッチセールスで扱うアレキサンドライトの事を書いたので、それについての思い出を書こうと思います。

ボクがアレキサンドライトを初めて知ったのはキャッチセールスがキッカケです。

それ以来、仕事でもアレキサンドライトの商品や裸石(ルースと呼ばれる)を探すので目にする事が多くなりました。

アレキサンドライトの魅力

いつもながらアレキサンドライトの商品を見るのは枠にセットされた物が多く、デザインもダイヤモンドが周りをズラッと囲った「取り巻き」というデザインがほとんどで、古臭いデザインが多くありました。

ただ、アレキサンドライトは珍しい石ということだけではなく1カラットアップの大きな石も多く、高級ジュエリーに使われる事が多かったのです。

アレキサンドライトの売れ行き

百貨店の外商さんに委託販売してもらう為に用意したりしていましたが、流石に百貨店の外商さんは良い物を売る顧客とトークテクニックを持ち合わせておりよく売れました。

小売価格となると大体が200万円以上でお客さんに売っていたと思いますし、不景気な時代だったので、どこにでもお金持ちはいるんだなと感じた事を覚えています。

アレキサンドライトの商品開発

そういった外商さんは数人いたのでその人に貸す為に商品を作らなければなりません。

という事はそれに見合った石と枠を用意しないといけませんし、今までのように枠に石がセットされた物はいまいちパットしないという事で、石を購入してから枠作りをするようになりました。

アレキサンドライトの仕入れ

これはいつか書こうと思っていたのですが、キャッチセールスとの取引でかなり勉強になった事です。

基本的に珍しいアレキサンドライトを持っている仕入先はそう多くなかったので、社長の懇意にしている友達から紹介してもらったり、東京から出張に来る仲間内の業者さんから仕入れたりしていました。

今回はそのアレキサンドライトの仕入れのお話です。

その日は社長が出かけた時に昔からの知り合いと出会い(当時は色々な業者さんが社長と知り合いだったので、街で捕まえてはお茶に誘い仕事の情報交換をしていた。)、事務所に連れてきていました。

「おい、アレキ持ってるやついたぞ。」

という連絡を受けて出かけていたボクは会社に戻っていました。ボクはもちろん初対面という事で名刺交換を行い、社長がその業者さんの紹介をしアレキサンドライトを見せてもらったのです。

この頃は仕事を始めて5年以上経っていたので仕事は全部ボクに任されており、ボクが石を見る事になっていました。

記憶を辿ると確かその業者の人は京都の人だったと思います。宝石業者さんは石だけを売る石屋さんと、枠だけを売る枠屋さん、そして製品を売る業者さんと分かれており、その人は純粋に石だけを売っていて、色々な種類の石を売っていました。

ちなみに、石と書いているけど宝石の事で、ボク達はただ「石」と呼んでいます。

アレキサンドライトの選別

そして、珍しい石なども見せてもらって勉強をさせてもらいます。当たり前ですが石屋さんだけに各宝石の知識も豊富で、そういった事を教えてもらい聞きながら自分のセールストークにするのです。

目当てのアレキサンドライトを見せてもらい、大きさ、色、形、そして、アレキサンドライトの場合はカラーチェンジの具合など、ルーペを使ったりペンライトで色の変わり具合を見ながら、必要な物とそうではない物を選別していく。

今回はキャッチセールス用の石ではなく、百貨店の外商さんや大きな展示会に行く業者さん用の石で大きめの石を探していたので、大きさは1カラットアップの大きめの石を見ていました。

透け石の商談

その中でも、大きさは1.2カラットで形はオーバル(楕円)、色目は深いダークグリーンで色変わりも均等に赤くなる石が良いなと感じました。

ただ、ルーペーで見ると少し色が抜けている部分がありました。そういう石を透け石と読んでいて、指輪やペンダントにすると地肌や裏側が透けて見えるのであまり好まれません。

それがちょっとなと思いながら他に適当な石もないので、それに向けて商談を開始しました。ボクの商談材料は透け石という事と、価格が想定より高かったという事。

強気の取引

確か、向こうの言う価格は25万円くらいだったと思います。当たり前だけど大阪では値引きをしないと買わないし買えません。当然ながら向こうもそれを織り込んだ価格を言ってきます。それが前提です。

だから、ボクは一気に大げさな価格を言って18万円なら買う。と言って牽制してみました。それは流石に無理という事で23万円ならと返してきます。

そこで、ボクの作戦はこの石に見合う枠だと15万円くらいかかる。石と合わせて40万円もする。それに利益を乘せて50万円で百貨店に出すと上代価格は200万円もする。

それくらいの価格になると他の業者もそれくらいの価格になるから、勝負にならない。
20万円程度まで下がると枠も含めて5万円は安くなるから上代価格は180万円くらいになって、セールスも品質の割に売りやすくなる。

と、こういう事を言いながら「だから、ある程度希望通りに近い価格にして欲しい」とこちらの難しい状況も説明しながら攻めます。

石屋さんの利益率は少ない

そう言われると相手もそういう事を考慮した価格に下げざるを得ない。という事で少し値下げしてくれる。ボクとしては最終的に18万円希望と言いながら20万円少しになればと思っていた。最悪21万円。

膠着状態を打破した一言

向こうが提示してくれた価格は22万円。。。そうかぁ、、、それだと難しいなぁと言いながらしばらく膠着状態が続いた時にうちの社長が、

「そろそろ良いんじゃないか?」

と言った。多分社長はこの状態では無理と判断したんだろうと思う。ボクも少しやりすぎたかなと思ったものの、引き返せない状態になっていたから助かりました。

という訳である程度お互いのメンツを守って良い石が買えた訳です。社長は初めての商売だからと即金で支払いを済ませてくれました。

石屋さんの利益率は少ない

実は石屋さんというのは、石だけで勝負しているしある程度の相場も知れ渡っているから、利益率は少ないのです。ましてや卸業となるとなおさら。恐らくボクが初めに提示した18万円前後が本当の原価くらいだったと思います。

それでも4万円も利益が出てるじゃないかと言われそうだけど、こんな大きな物が毎日売れる訳ではなく、小さな細々な石をチビチビ売って生計を立てている人がほとんどだから、一回での利益はメチャクチャ少ないのです。

商売には売り先の事情がある

とはいえ、こちらも売り先があっての商売でその人達が売りやすい価格帯にしたいという事情もありました。

ちなみに、その時のアレキサンドライトは東京の業者でペンダントに加工してもらい、45万円程度の価格を付けて外商さんに貸し出し1ヶ月程度で売れました。上代価格は200万円以下だから、エンドユーザーは良い買い物が出来たんじゃないかと思います(^^)

ボクが犯した失敗

今回良いアレキサンドライトを買えたのは良かったのですが、今となっては大切な事を失敗しています。

それは今回攻めすぎたせいで、この業者は以後来なくなってしまいました。
この時もう少し優しさを出して交渉が成立していれば、「あそこへ行くと大きはないけれど、儲けさせてくれる。」という事で業界の情報とともに良い石を持ってきてくれたかも知れないという事です。

それが出来ていればまた違った展開が出来てお互いにもう少し設ける事が出来たのかも知れません。


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