4月2日

先月インフルエンザに罹患してから、嗅覚が消えた。
発症しているときはどちらかというと咳の症状の方がひどくて気が付かなかった。
仕事のときは毎日いい匂いのハンドクリームをつけることでやる気を出しているのだけど、ある日何の匂いもしなくて大変ショックを受けた。
いい匂いをまとうことで自我を保っている部分があるので、最近はずっと人間未満のまま働いている。

好きな匂いが分からなくなったのも悲しいけど、ごはんのにおいが全く分からないのが一番悲しい。
夫がどんなにおいしそうなごはんを作って、湯気の立つお椀を目の前に出してくれても、何のにおいも感じない。
自分で料理をして何かを炒めていても、全くの無臭なので味付けの勘がはたらかない。
パンが焼けるにおいや、真っ白なご飯が炊けたときの湯気のにおいが好きなのに、ここ数週間嗅いでいない。
おいしいって味覚だけで感じるものじゃなかったんだ。

それから、嗅覚は自分の身を守ることにおいてとても大切なものだということに気が付いた。
食器を漂白剤に浸けていたとき、いつもなら塩素の強烈な臭いにすぐ換気扇を回すのだけど、すっかり忘れてしまっていた。
何なら無臭であるせいで、浸けていたこともしばらく忘れて放置していた。
危険を察知することに関して嗅覚が果たす役割は大きいのだなと思った。
もしガス漏れがあったり、近所で火事があったとしても、今のわたしはすぐに気が付くことができないだろうと思う。

嗅覚、早く戻っておいで。
たくさんのいい匂いがおまえの帰りを待っているよ。

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