見出し画像

本物は、素人を舐めない。

みんなの図書館「本と一筆」に登録してくださっている本棚オーナーさんの棚から一冊取り上げてみるコーナー。みんなの図書館「本と一筆」の運営メンバーが本の感想や感じたことを書いていきます。

今回の本は、「絶滅危惧職、講談師を生きる」。

講談師、神田伯山さんが神田松之丞まつのじょうさんだった時の著書。
全国に80人ほどしかいないという絶滅危惧職でもある講談師ですが、松之丞さんの半生から真打に至るまで、インタビュー形式で書かれた本です。

私自身講談について全く知りませんでしたが、この神田松之丞さんの講談に対する熱い想いにとても感動して、東京で講談を聞きに行ってみようと思ったほどでした。

印象に残ったのは、本物の人は素人を舐めないということ。

何の予備知識もなく、その場にいる人を打ちのめすのが本物で、予備知識があるやつだけがいいと思うものは大したことない。

「絶滅危惧職、講談師を生きる」 新潮文庫

絶滅危惧職の講談師だからこそ、講談をもっと知ってもらうためにはおじいちゃんでもギャルでも子どもでも、「面白い」と思ってもらわないといけないという気迫。

にわかファンと揶揄されたり、予備知識がないと行ってはいけないというような分野があると思いますが、その業界のことを本気で愛している人は、絶対に素人のことを馬鹿にしたりしないんじゃないかと思いました。(もちろん初心者もその場に敬意をもっていることは前提にありますが。。)

一流の人ほどスタートラインに立っている人に対して親切で。それはその業界を文化として当たり前に楽しめるものとしたいからなのかなと感じます。

例えばまちづくりの分野でも「こんなすごいことやってます!」という方はたくさんいるけれど(もちろんすごいこと)、もっと遠くを目指している人は、誰に対しても「一緒に楽しみながらつくっていきましょう!」という姿勢の方が多い印象があります。

それはその人が考えている「こうあったらいいな」の世界が文化として根付くことが最終ゴールだからだと思うのです。

だから神田伯山さんも、講談を日常的に親しんでもらえるためには、講談初心者の人が予備知識なく「おもしろい!」と思ってもらわないといけないと感じているんだと思いました。

「わかる人にわかってもらえたらいい」と良く聞く言葉ですが、本当に実現したい世界があるのであれば、そんなことを言ってはいけないなあとちょっと耳が痛い言葉でもありました。

ここでは全く講談の面白さをお伝えできませんでしたが、ぜひ一度でもこの本を読んだりYoutubeで神田伯山さんの講談を聞いてみたりしてほしいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?