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【第三十四夜】『スワン家のほうへ』夜話 – プルーストの処方箋

叔父はスワンに、しばらくオデットと会わずにいなさい、そうすれば——

ハナは話をはじめた。◆

「シャルリュスさんやアドルフ叔父さんと相談して、次の展開があるのかと思ったんだけど、スワンさんの悶々がさらにつづくのね……」

「オデットさんの過去にまでさかのぼってるもんね」

「でもなんか、とことんまで溺れようって感じもしてきた。ちょっとよくわかんないけど」

「あと、目の前にいる実物のオデットから、頭の中にいる観念のオデットになってから、こことか実際のオデットさんを見てても、二重写しになってるんだよね」

しばしば彼は、何も言わずにオデットのことをじっと眺め、思いにふけるのだった。すると彼女が言う、「なんて寂しそうな顔をしてるの!」スワンが、彼女はこれまでに自分の知った最良の婦人たちにも似た善良な女であるという考えから、だれかに囲われた女だと言う考えに変わったのは、そう以前のことではなかった。だがまた反対にそのあとで、どうやら遊び人仲間や女好きの連中のあいだで有名だったらしいオデット・ド・クレイシーから、ときどき実におだやかな表情を見せるあの顔に、実に人間味のあるあの性質にと、逆戻りすることもあった。

「寂しそうに見つめられる、オデットさんも辛いよね……」

「ほんと、切なくなる……」

◆——そうしてハナはゆっくりとまぶたが閉じていくのを感じながら、眠りに落ちていく。

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