一級建築士試験一発合格のための戦略記(学科編)

7/28に令和一発目の一級建築士試験の学科試験が行われたようなので、私が2008年=平成20年(一級建築士制度が変わる最終年度)に受験した際の体験記を、戦略を交えてご紹介しようと思う。

※なお、この取り組み方での合格は保証しない。


受験当時の環境

2008年に大学院を卒業し、準大手ゼネコンに入社した。構造設計部門への入社であったが、入社後1年は現場監督として勤務しており、朝5時起き〜夜12時寝の5時間睡眠だった。私は性格上かつ体質上、しっかり寝たい派の朝弱い人間である。現場は5月のGW明けから杭工事が始まり、12月15日引渡の工期7ヶ月、超突貫工事の物流倉庫であった。1年目だったが、最初に副所長と交渉したことは、

「日曜日は予備校のため休みを欲しい、それ以外は出勤で良い」

という、日曜も交渉しないと休めない、なかなかブラックな内容であった。現場はセブンイレブン状態だったので致し方ないと思ったが、これで自分が勉強に当てられる時間を概ね把握したようなもので、これは相当効率よく勉強していかないと難しいと思い、戦略を立て、不合格でも納得できるようなラインを設定する必要がありそうだとぼんやり考えていた。

学科試験は当時、計画・法規・構造・施工の4科目で、1科目25点の5択問題だった。もし今回落ちた場合、次年度から環境の科目が追加される状況で思ったことは、

「今回学科で落ちたら、制度変更後の来年に受かる気がしない…」

というものだった。それくらい、環境という科目が苦手であり、是が非でも学科だけでも今回合格しなければ!という気持ちが非常に強かったのを覚えている。しかも対戦相手は、定時に退社して勉強時間を確保しやすいホワイトカラーたちである。ブルーカラーのヘルメットおじさん達ではない。そこで、GWに法令集に線を引いてよーいどん。以下の戦略を立てて進めることにした。


1.勉強できる時間を把握する

肝心なのは、自分のクセを知り、自分に合った勉強方法を早急に見つけることだ。短時間睡眠できる人間か。集中力は続く人間か。理解型か暗記型か。コツコツ型か一気型か。などなど。ただ、今回の私にはそれほど選択肢が無く、以下を設定した。

どんなに長くても1.5時間で一旦勉強を切り上げる。

日曜日はAM授業、PMに復習・次週の予習で計1時間程度。その後は法規の練習。

通勤時間往復2時間は、ポケット問題集に当てる。(ただし、睡眠時間の関係で段々朝の勉強がしんどくなり、1週間後には帰宅時の1時間のみと変更した。想定の半分しか時間が取れない計算だ!)

平日の勉強は、電車の中だけで終了させる。(家でも喫茶店でも勉強できないタイプであり、家では仕事の疲れを取り除くことに専念したいため。)

つまり、平日は帰宅時の1時間の勉強、土曜は夜多少出来るものの、メインは日曜である。とはいえ集中力が無尽蔵に続く方では無いため、無理に勉強時間を稼ごうとはしなかった。恐らく、通常の人の半分も勉強時間は取れていないのではないかと思われる。


2.ペースメーカーをポケット問題集とした

この方法は万人受けしない。絶対に万人受けしない。が、当時平日に1時間しか勉強時間を取れなかった(取らなかった)こともあり、テキスト・過去問題集で勉強する余裕は無かった。そこで、なぜ総合資格がポケット問題集を発行しているかを考えた。

「この程度の問題が解けなければ、土俵にすら登れないゾ!」

と言われている気がして、恐らく厳選問題集と言っても過言ではないだろうと都合よく且つ合理的に考えた。一問一答形式であったが、問題暗記とはせず、何を問うているかを意識しながらやっていた。

何度でも言うが、分厚いテキストから選抜された、エッセンスたっぷりの問題たちである。とことん味わい尽くすのである。ただし、本番の試験とは剥離があるので、戦えるようになるにはポケ問だけで満足していてはいけない。

ポケット問題集は、エッセンスたっぷりの厳選問題集だ。


3.机に向かう必要がある科目とそれ以外に分ける

これは誰しもが思うことであろうが、法規をモノにするには時間がかかる。しかし、条文を丸暗記するわけにもいかない。ポケット問題集では全然埒(らち)が明かないだろうと思った。結局、法令集のどの部分にどんな条文があったかを体に覚えさせる方が良いと判断し、法規の勉強は机に向かえる時=日曜日とし、それ以外の科目は通勤時間とした。

法規は机で。計画・構造・施工は電車で。


4.授業は必ず出席。予習・復習は必ずやる。

得意だと思っていた構造が、ポケット問題集をやっていると木造・SRC造やCB造など馴染みが薄くてわからない部分も多々あり、何だか片手落ちどころか両手落ちな気分だったので、時間を金で買ったつもりで取り組んだ。授業は全科目出席している。

大事なことは、授業に出席すること以上に予習・復習である。特に復習問題は、一問一答形式でなく本番形式の問題であり、各授業の回で数問だった気がしたが、復習問題=過去問からの分野別厳選問題と思って取り組んだ。

実は、最初は復習を蔑ろにしていたが、このことに気づいてから復習問題を回転させることでどの教科にも効果があったが、特に効果テキメンだったのが法規であった。日曜しか勉強出来ないものの、過去問をやるのも億劫だ。ただ、ポケット問題集では心許ない。そこで復習問題というわけだ。用途地域・建ぺい率や容積率問題など、分野別の問題を数問やると、法令集のどの部分に条文があるかわかってくる。出題形式もわかる。何より、闇雲に過去問を解くより、数問解くだけでその分野が攻略できるので効率が良い。試験直前期の見直しにも最適で、ボリュームが多いと言われる日建学院だったら恐らく合格していなかったと思われる。

復習問題で幹を、ポケット問題集で知識の枝葉を。


5.過去問は直近2、3年分はやろう。目的が大事。

過去問を解く大きな目的は、時間配分の把握と「ポケット問題集で得た知識をどうアウトプットするかの練習」である。一問一答形式で解けていたものが、多肢形式だと正解にたどり着かないのは、選択肢が多いからだし、選択肢の言い回しに惑わされるからだ。最後の2択まで絞り込めても、正解にたどり着かない限り点数にならない。なので、直前期で全然解けなくて絶望するより、5、6月のある段階で一度模試や過去問を解いてみて、「やっべぇ!」と思ったほうが良い。復習問題もちゃんと取り組もうと思えるヨ。

最後の2択で正解を導くには、結局は一問一答形式で鍛えた自力がモノを言う。一問一答を暗記していては、文章のアヤで引っかかる。何を問うているか。これを意識しながらやるべきだろうと思う。

ポケ問だけでは解けないが、ポケ問をやらないと解決しないことを理解する。ポケ問の取り組み方を是正するきっかけになる。


6.必ずスランプは来る。折れてはダメだ。

最後にメンタル面を少々。

勉強していて点数に繋がらないことは多々あり、「あれだけやったのにー涙」と思うこともある。特に模試の点数がほぼすべての教科で平均以下だと殊更しんどい。あと1ヶ月しか無いよぉどうしよう滝汗、となる。焦る。でもどうせ落ちるなら、

「ここまでやって落ちるなら仕方ない。今年やれるだけのことはやった。」

と思いたいものだ。勉強の方法を変えるのも一考かも知れない。ただ私は変えなかった。ここで今までのやり方が失敗だったと判断するのは間違いだろうと思った。合否を確認できて初めて判断すれば良いことだ。

仕事環境から来る睡眠時間や気分転換・自分の性格を考慮して、限りある勉強時間をいかに濃密なものにするか。

ここはブレていないから、方法論は変えなかった。ポケット問題集や復習問題を慎重にもう一巡したくらい。あとは、ポケット問題集を「あーもう終わりにしようかな」と思ったあとに1、2問解くようにした。

小さなことの積み重ねを大切にしようと思った。後悔しないように。もし方法論を変えていたら、ホワイトカラー共を相手に勝てなかったと思うが、当時の私には時間が無かったため、方法論を変えるなどという選択肢も無かった。突き進むしか無かった。でもそれで良かった。

スランプで行うのは今までの振り返り。

微差は大差。いや、微差を大差にするのだ。不合格が合格になるかも。


まとまるかわからないまとめ

「微差は大差」は、私の人生の教訓にもなっている。明確な勝ち負けが存在するか否かに関わらず、自分が納得出来るかに主眼を置いたことが良かったのかも知れない。

「そのやり方は、あなただから出来るのであってですねぇ…。」

よく言われるが、果たして…。現実は、学科に合格したら1合目である。

(構造設計者としては、製図に合格で2合目、ルート1で3合目、適判で5合目、評定で7合目、新技術適用で9合目くらい?)

では、製図編でお会いしましょう。


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