見出し画像

第12回MOE絵本屋さん大賞2019発表!

発売中の月刊誌MOE2月号で、今年も全国書店員が選ぶ絵本屋さん大賞のランキングが発表になりました。
全国の絵本屋さん3000人に聞いています。
ちなみに前回2018年も、前々回の2017年も、3000人に聞いたと書いているので、人数は増えてもいないし減ってもいません。

ランキングは本誌を見ていただくこととして、もちろん私も児童書担当として投票させていただきました。私が投票した三作品を、投票文付きで紹介します。


○第一位
たべものやさんしりとりたいかいかいさいします(白泉社)
シゲタサヤカさん

文句なしに面白い!
子供から大人まで、同じテンションで楽しめる絵本。そうそうないんじゃないでしょうか。
この展開、まさか…(汗)と読者をハラハラ・ニヤニヤさせて、大どんでん返しのオチへと誘うドラマチックな展開と、味わい深いユーモアたっぷりの絵柄がたまりません。“シュールな世界観”のその先に到達した、見事な一冊でした!

第一位で投票したのは、シゲタサヤカさんの『たべものやさんしりとりたいかいかいさいします』です。(ランキングでは3位)
八百屋さん、果物屋さん、お寿司屋さん、パン屋さん、ラーメン屋さん…商店街に並ぶ食べ物を扱うお店が、それぞれの商品でしりとり大会を行います。子どもと一緒に読んでいたら、もうこの導入の時点で「…やばくない?」って子どもが言い出して。頭カチカチになっちゃったおばさんは全然気が付かなかったんだけど、その通り、やばいんです。商品名が「ん」で終わる商品ばっかりの店あるじゃん!
シゲタさんのシュールな絵柄と相まって、この流れが最高に面白かった。
今年は、マクドナルドのハッピーセットのおまけ絵本を担当されるなど、シゲタさん大活躍の一年でした。ベストレビュワー賞に選ばれたのは、シゲタさんをずっと応援し、発売時には既刊も併せて紹介する小冊子を作っていた書店員さん。納得のコメントでした。良かったねぇ、本当に良かった。

○第二位
ころべばいいのに(ブロンズ新社)
ヨシタケシンスケ

幼稚園でも小学校でも、今の子供たちは“嫌い”という感情との向き合い方を教えてもらえません。それは抱いてはいけない感情であり、すぐに“仲直り”を強要されてしまいます。辛い気持ち、嫌な気持ちは、それでは決して消えてなくならない。正しさと生きづらさ、そのはざまで揺れているのは、大人だって子供だって一緒です。どうか、一人でも多くの子供たちの心の澱を、この本が優しく溶かしてくれますように。

第二位、ヨシタケシンスケさんの『ころべばいいのに』。(ランキング2位)ごめんなさいね、王道ばっかりに投票して…だって面白かったから仕方ない。
子どもが話してくれる「今日学校であったこと」の、一番多いのが愚痴。〇〇さんに嫌なことをされた、こんな事があってモヤモヤした…わかるよわかる、いつの時代も一緒だ。それでどうなったの、その後を聞いてみると、結局「無理矢理仲直りさせられた」が一番多い。
謝ることも難しいけれど、それをすぐに「許すこと」はもっと難しい。突き詰めると結構すごいテーマを、わかりやすく、面白く、絵本という形に落とし込んでくれるヨシタケさん。やっぱりすごい人だなぁと読むたびに思うのです。

○第三位
こんとん(偕成社)
夢枕獏・松本大洋
子供にはちょっと難しい、でも大人には確実に響く一冊は、いつかわかる日が来るまで、ひっそりと本棚に忍ばせておきたい。
夢枕獏×松本大洋という夢のようなタッグで、今年“バズった”絵本。絵本の懐の広さと、その可能性が無限大であるという事を、改めて感じさせてくれる強力な一冊でした。

第三位は『こんとん』。今年バズったとかシレっと書いていますが、バズらせたのは私です(ドヤァ)あの時は楽しかったなぁ…。ランキングは発表されているギリギリの30位に滑り込みました。荘子の『渾沌』を文字で読んだところで、私はここまで惹き込まれる事はなかったんじゃないかと思う。
その要素を極限まで煮詰めたような夢枕獏さんの文章、そして視覚に飛び込んでくる松本大洋さんの絵。その化学反応がすさまじい。バズったツイートに「暴力的」という言葉を使っていましたが、まさにこれは絵本と言う名の暴力。読むたびに鳥肌が立ち、色々なものを「持っていかれる」絵本でした。

絵本業界は既刊9割新刊1割ともいわれています。
今月発売の東野圭吾さんの新刊よりも、夏目漱石の『こころ』や太宰治の『人間失格』がブッチギリで売れている業界です。
確かにレジェンド絵本は読み継がれていくだけの理由のある素晴らしい作品ですが、新しい作品・新しい作家さんが評価されなければ、新刊の数は少なくなる一方なのでは…そんな心配を勝手にしています。
MOE絵本屋さん大賞2019は、去年一年に発売された新刊が対象です。
是非これを機に、新しい作品、新しい作家さんに出会っていただければと思います。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?