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死期を悟ったライオンが最後の力をふりしぼって自分の墓穴を掘っていた…わけじゃなかった話【お寺でわたしも考えた】vol.5

【お寺でわたしも考えた】は、私が日々何となく思ったことをつらつら書いていくエッセイコーナーです。

本当は昨日投稿するつもりだった記事なのですが、体調不良に連日の寒さが重なって、書いてる途中で頭が全然働かなくなってしまったので、断念しました…

今日はとても暖かくて過ごしやすかったです。三寒四温ですね。

今回は、あるショート動画について思ったことを書きます。


「感動的な動画」に見えるけど…


まずは、次のYouTubeショート動画を観てください。


こちらのショート動画では、感動的な音楽とともに、オスのライオンが、ふらつきながら一心に土を掘っている様子が紹介されています。

前足だけでなく、たてがみまで泥だらけになっており、非常に痛々しい姿です。最後には、自分で掘った穴の中に倒れこんでしまいます。

画面上部には「自分の最期を悟った百獣の王ライオンの行動」、下部には大きく「百獣の王」と書かれており、コメント欄は感動の声であふれています。

私もこれらのコメントを読んで、「ああ、死期を悟ったライオンが最後の力をふりしぼって自分の墓穴はかあなを掘っているということか…」と思ったのですが…

しばらくして、「いや、そんなことある?」と思い直しました。

実は、最近、他人の動画をつぎはぎして作ったニセ感動系ショート動画に何回も遭遇して、うんざりしていたんです。「怪我をした野鳥を救出して世話をしていたら、めちゃくちゃなついてくれた動画」だと思っていたら、途中で鳥の羽の模様が変わっていたり…なので、感動系ショート動画はまず疑うようになってしまいました。

それに、犬ならともかく、ライオンが穴を掘るなんて聞いたことがありません。普段掘らない穴を、死に際に掘ったりするでしょうか?怪しすぎます。

意外とすぐ出てきた元ネタ

さっそく、ファクトチェックしていきましょう。と言っても、Google検索するだけですけど。

「ライオン 穴を掘る」で検索したら、あっさり元ネタと思われる動画を紹介している記事が見つかりました。

こちらです↓(ライオンの捕食シーンがありますのでご注意ください)


さらに、上の記事の動画の引用元はこちらです↓

このライオン、イボイノシシの巣穴を7時間も掘り続けて、やっと捕まえたそうです。かなり大きなイボイノシシでした。やっぱり、自分の墓穴を掘ってたわけではなかったんですね。

しかし一方で、ライオンが穴を掘るのは珍しいことではない、ということもわかりました。動物園の方が運営しているブログにこんな記事がありました↓

イボイノシシやツチブタを狩るために穴を掘るそうです。こちらの記事で紹介されている動画には、生まれも育ちも動物園のライオンが、飼育員さんの試行錯誤の末、上手に穴を掘れるようになった様子が映っていました。

ライオンも穴を掘るんですね。これはとても意外でした。

知識不足と先入観のコラボが生んだ感動

結局、冒頭で紹介したショート動画に映っていたライオンは、「死期を悟り、最後の力をふりしぼって自分の墓穴を掘っていた」のではなく、「巣穴に逃げこんだイボイノシシを狩るために一生懸命穴を掘っていた」のでした。

しかし、コメント欄にはすでに3000件近いコメントが寄せられており、皆さん感動しています。もちろん、「自ら墓穴を掘っている気高きライオン」に対してです。

私が確認した限りでは、元ネタの動画があることを指摘するコメントは見つかりませんでした。

今回の件に関しては、「ライオンが狩りをするときに穴を掘ることがある」という情報が一般的に知られていないことと、「百獣の王ライオン(特にオスのライオン)は気高い生き物である」という先入観が合わさったことによって、「自ら墓穴を掘っている」と誤解し、「感動」が呼び起こされてしまったのだろうなと思います。「猫は自分の死期を悟ると姿を消す」という言説も少なからず影響していそうです。

だまされないように気をつけましょう

今回紹介したショート動画を、本当に「最後の力をふりしぼって墓穴を掘るライオン」だと認識してしまったからと言って、特にその人が不利益をこうむることはないと思います。

しかし、「人の知識不足と先入観につけこんで誤った印象を植え付ける」という手口が世のなかにはあって、自分もだまされてしまう可能性がある、ということだけは、常に頭の片隅にでも入れておいた方がいいのかもしれません。

こんなこと考えているなら、本当はこのショート動画のコメント欄に書き込んだ方がいいんでしょうけれども、それもちょっとこわいので、ここにひっそりと書いて終わりにしようと思います…

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今回は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、また。

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