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旅の記憶25〜ウィンブルドンが始まった(その1)

テニスの全英オープン、135回目のウィンブルドン選手権(正式名称 The Championships, Wimbledon)が始まった。2020年はコロナで中止。昨年は観客数の制限を設け、開催。今年は、完全に元に戻った、と言いたいところだが、ウクライナ侵攻の影響でロシアとベラルーシの選手は出場できない。

イギリスの新聞THE TIMESに、“Wimbledon:Ticket queues, no rest day and a farewell for Sue Barkerーeverything you need to know about SW19"という見出しの記事があった。今年のウィンブルドンのガイド記事である。当日券の状況(朝から並びましょうー"Ticket queues")、中日の日曜日は休養日とされていたが撤廃(no rest day)、30年BBCウィンブルドン中継のキャスターを務めてきた英テニス選手スー・バーカー(イギリス人としては現時点で最後の全仏優勝者)が、今回で引退することなどが書かれている。

この見出しに“SW19“という言葉があるが、これはイギリスの郵便番号。テニス会場のある地域、ウィンブルドンの番号、高級住宅地でもある。このシーズン、見出しに“SW19“とあればテニス大会のことである。

ロンドン地域の郵便番号は、中心地から見た方角と数字の組み合わせ、“SW“はSouthwestー南西という意味である。私が通算10年住んだのは、SW19の隣のSW20という地域だった。つまり、テニス・コートからはほど近い場所である。

したがって、ウィンブルドン観戦は年中行事として生活の中にあった。私が先行帰国した関係で、妻は通算12−3年ロンドンに住んだが、全ての年でウィンブルドンを出場〜観客として〜を記録している。日本に帰国した私が、ウィンブルドンの杉山愛の試合をテレビで見ていたら、観客席にいる妻が画面に映し出されたこともあった。

最初の年、1997年は会社帰りに行った。多くの試合が行われる1週目が狙い目である。夕方6時頃に着くと、多少は並ぶが比較的すんなり入れた。初めて会場を訪れた時の衝撃は忘れられない。それは、私がイメージしていたスポーツ・イベントとは、全く異なるものであった。

会場は、センターコートとNo.1コートを中心に、20近いコートがあるが、その間には多くの飲食施設がある。私が驚いたのは、沢山の観客がコート外の飲食スペースにいて、テニスの試合はそっちのけで、シャンパンや名物のピムス(Pimm's)を飲み、ストロベリー&クリームを食べ、おしゃべりに興じているのだ。

テニスを社交の機会として多くの人が集う。有名選手、応援している選手がプレイしていれば試合をのぞく、あとはイギリス人の大好きなお酒とおしゃべり。もちろん、純粋なテニス・ファンも沢山いるだろうが、会場に漂うのはゆる〜い空気である。

後に、隣接するウィンブルドン博物館を訪れたとき、ビクトリア時代のテニス・ティー・パーティーの絵や、20世紀初めのウィンブルドン選手権会場で、お茶を飲む観客の写真を見て合点がいった。まさしく、これが大会の原点なのだと。

こうした驚きで始まった、私のウィンブルドン体験を少し綴ろう

*ビクトリア朝時代のテニス・パーティー


*1906年 全英オープン会場でのアフタヌーン・ティー


*そして今


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