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旅の記憶21〜パリのオペラ座でのサプライズ

松任谷由実、恒例の苗場でのコンサート“SURF & SNOW“最終公演が、関係者の感染により中止になったとの報道があった。ライブにせよ舞台にせよ、祈るような気持ちで毎日を過ごしていることだろう。コンサートのためにわざわざ苗場まで行くファンが多いだろうから、彼らにとってもショックは大きいことだろう。

このニュースを聞いて、我が家のパリでのハプニングを思い出した。

1997年あるいは98年だったと思う。パリのオペラ座で上演されるリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」が観たく、週末に家族でパリに赴いた。パリにはオペラ座が2つあり、この日に向かったのは、フランス革命ゆかりの地、バスティーユ広場に立つ1989年開場のモダンの建物、オペラ・バスティーユであった。

開演前に、軽く夕食をすませ会場に行くと、どうも雰囲気がおかしい。開演を控え、入場する人、待ち合わせの人などがさんざめく感じがないのである。会場に入ると、係員が立っており、この日の公演はキャンセルになったと告げられた。理由は、オペラ座で働く人たちのストライキである。

そう言えば、パリのホテルでストライキに遭遇したことを書いたが、このオペラ座の事件はそれよりも前の話である。

我々は呆然とした。ほぼこの公演のためだけに、ロンドンからわざわざやってきた。チケット代は返金されるが、交通費や宿泊費は持ち出しである。しかも、既に夕食はすませており、レストランに行くこともできない。子供づれで酒場巡りもままならない。結局、ホテルの部屋で過ごすしかなかった。

イギリスに住んで学んだことは、文句がある場合は主張すること。黙っていたら満足していると思われる。帰英後、私は早速手紙を書いた。パリのオペラ座宛である。

<小さい娘2人を連れオペラ座に行ったのにキャンセルとなり、家族一同がっかりした。費用も相当かかった。子供の心と、私の財布、どうしてくれるの?>といった趣旨である。

すると、オペラ座から返事が来た。<大変申しわけないことをした。ついては、年末にパリに来る予定はないか? もし来られるのなら、オペラ座のバレエのチケットをプレゼントする>。

交通費等の負担は生じるが、この誘いに乗ってみるのも面白いと考え、私はこのオファーを受けることにした。ついでに、にっくきオペラ・バスティーユで同時期に上演されるレハールのオペレッタ「メリーウィドウ」のチケットもお願いした(こちらは有料である〜結果的にはオペラ座の売上に貢献した)。

招待されたバレエが上演されるのは、設計者の名前を取りガルニエ宮とも言われる、パリの中心にある豪華絢爛たる劇場である。私も欧州の様々な劇場に行ったが、ロケーション、外装、内部の豪華さは、このオペラ座が群を抜いている。

このオペラ座の平土間(アリーナ)席は緩やかな傾斜があるのみならず、中程が一段上がった構造になっており、通された席はこの一段上がった列の中央席。視界を遮るものがなく、ほどよい距離で舞台が見渡せる最高の席である。頭上の天井にはシャガールの絵が描かれ、中央からは美しシャンデリアが下がる。そんな空間でバレエを堪能した。

教訓、ハプニングにはめげずに、次につながる行動を取る。さすれば、ポジティブなサプライズを得ることができる〜かもしれない


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