GWに読んだ“すごい”マンガ〜山下和美「ランド」

なるべく新しいマンガ/マンガ家には触らないようにしている。私自身のキャパシティの問題である。それでも、なんとなく状況は眺めているので、時折、どうしても読まねばと思う作品が出現する。そのきっかけは、新聞や雑誌の記事が多いが、各種の賞や「このマンガがすごい!」のようなランキングに刺激されることもある。

GWの直前という絶妙のタイミングで、「手塚治虫文化賞」が発表された。昨年の受賞は、高浜寛の「ニュクスの角灯(ランタン)」で、気になったので直ぐに読んだら、それはそれは素晴らしかった。

そんな成功体験もあり、今回の受賞作を見ると、山下和美の「ランド」という作品だった。「不思議な少年」など、読んでみたい作品のあるマンガ家だが、未だ手に取ったことはない。全11巻という丁度良い長さでもあったので、GW中の課題図書に認定し取り組んだ。

“すごい”マンガだった。どう“すごい”かを説明するのは、極めて難しい。と書いてしまうと、元も子もないので、少しだけ内容を紹介する。物語は、四方を山で囲まれた小さな村で始まる。東西南北には四つの神が立っている。かつて、人はこの四ツ神を怒らせた。主人公の杏(アン)の叔母、真里は神を怒らせた理由をこう話す。<教えを忘れ飽食し>、人口が増加、<山を切り拓き始めたのさ いわば神様の領域侵害だね>、<そして一番が不老不死の欲だね>。

こうしたことを受けて、この村では様々なしきたりが存在する。子供を生贄とし山に捧げること、50歳まで生きると“知命”となり死ぬこと、名主と呼ばれる人間が最高権力者であることなどである。

そして、この村の世界を人は「この世」と呼び、山の向こうの世界を「あの世」と呼ぶ。「この世」とは何なのか、そして「あの世」と「この世」はどう結びつくのか。

さて、改めてどう“すごい”か。冒頭から最後まで、「ランド」の世界観が見事という手口で描ききられている。示される出来事を読みながら、読者は現実社会を想起し、フィクションとノンフィクションの狭間を回遊する。そして、物語の中で、登場人物が全て生き生きと動き回り、飽きさせる瞬間がない。

これが的確かどうかは分からないが、私には、この程度の表現しかできないので、手塚治虫文化賞の記事から引いてみる。

大賞は8人の選考委員が投票し上位となった第一次選考の9作品と、書店員などからの推薦1位で最終選考会が行われた。第一次選考の1位と推薦1位はどちらも「鬼滅の刃」である。第一次先行で「ランド」を推した審査員はただ一人、中条省平だけだったが、議論の末、「ランド」が大賞、「鬼滅」は特別賞となった。

朝日新聞デジタルによると、<「鬼滅」を推す声が強かったが、議論の過程で「ランド」が、「現代の抱える多様なテーマを抱えながら高らかな人間賛歌となっている」(中条)と支持を集めた>とある。

これを書きながら、最初から読み返しているが、様々なディテールが結末につながっていることに改めて感心している。やはり、“今”のマンガを読むことも大事だ

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