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「男はつらいよ」「北の国から」における吉岡秀隆論〜怒りを感じつつ評価する

週末の朝にTVで流す「男はつらいよ」。台風が近づく朝、1994年公開の第47作「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」を横目で観ていた。

ふと目にした渥美清の表情は、痛々しいものがあった。この頃、いやもっと前から渥美清の肉体は癌に犯されていた。結局、シリーズは翌年の第48作で終了となり、1996年に渥美は鬼籍に入る。

健康上の問題がある渥美に代わって、 シリーズのもう一つの中心になっていたのは、さくらの息子、諏訪満男、演じるのは吉岡秀隆である。本作では、寅さんのマドンナがかたせ梨乃、満男には牧瀬里穂である。

この構図は、1982年の第42作「男はつらいよ ぼくの伯父さん」から始まり、45作までは満男と及川泉(後藤久美子)の関係が軸となる。

さて、吉岡秀隆である。こいつはとんでもない奴である。本シリーズでは、後藤久美子プラス牧瀬里穂。テレビにおける彼の代表作の一つ「北の国から」では、ドラマシリーズの間はまだ子供で可愛かったのだが、ドラマスペシャル第3作「‘87初恋」から本性を表す。まずは横山めぐみ、東京に出てきたら裕木奈江、さらに宮沢りえと、おおよそ許すことのできない恋愛遍歴を繰り広げる。

宮沢りえまで来たら、もういいだろうと思いきや、内田有紀が登場する。竹下景子の周囲をうろうろする岩城滉一などかわいいものである。ましてや、父親の田中邦衛は元妻 いしだあゆみに出て行かれ、メインは児島美ゆきである。

こうして、私は映画・ドラマを見返すたびに、吉岡秀隆はけしからんと憤る。おそらく世の中の男性の多くを敵に回していることと信じる。

一方で彼を応援する私もいる。煮え切らない、弱々しい、そして決して美男とは言えない彼が、次々と美女をものにしていく姿を頼もしく思うのだ。世の中、捨てたものじゃない。

一回、深呼吸して冷静になろう。よく考えると、あくまでもお芝居の世界であり、彼自身を憎む必要はない。憎むべきは、諏訪満男であり、「北の国から」の黒板純である。

私の好みの女優と作品の中で良い関係になる男優は沢山いる。しかし、本気で憎らしく思うのは吉岡秀隆だけである。

その理由を考えると、「男はつらいよ」にしろ「北の国から」にしろ、子供の時代から見続けることになるので、自分のそばにいるリアルな存在となる。蛍(中嶋朋子)の成長過程もハラハラしながら観た。満男も純も、身近な存在なのである。例えて言えば、卓球の福原愛のような存在である。

加えて、吉岡の演技の素晴らしいことがあるのだろう。画面の中の全ての関係が本物に見えるので、真剣に腹が立ってくる。その意味では、女優陣も素晴らしく、「男はつらいよ」よりも、「北の国から」における怒りの方が数倍激しいことにも通じている。

ということで、吉岡秀隆に腹を立てるのはおかど違いで、子役時代からのキャリア、そしてその芝居を賞賛すべきなのである。本稿は、あくまでも吉岡秀隆を褒め称えるものである。

ん、内田有紀とはリアルで結婚したんだ。その後別れたが、やっぱり許せん!


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