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加藤健一と佐藤B作の「サンシャイン・ボーイズ」〜素敵な芸人の話

9月に加藤健一事務所の公演「THE SHOW MUST GO ON」を観に行った際に、加藤健一と佐藤B作のコンビで「サンシャイン・ボーイズ」の上演予告を見た。映画化もされたニール・サイモンの脚本による名作との認識はあったが、見たことはない。

私は、大学時代にニール・サイモン脚本、ハーバート・ロス監督の映画「グッバイガール」(主演のマーシャ・メイスンは一時期サイモンの奥さんだった)を見て、その洒落た世界が大層気に入った。本公演は、「ニール・サイモン追悼公演」と銘打っているが、彼は2018年91歳でこの世を去った。

本来ならば、昨年に加藤健一役者人生40年、事務所設立30周年記念で上演されるはずだったが、コロナ禍で中止となった公演である。予定通り上演されていたら観ることはなかっただろう。何かの縁を感じて、観に行こうと考えていた。

3月5日の本多劇場、無事に幕は開いた。

加藤健一演じる、ウィル・クラークは、かつてアル・ルイスとコンビを組み、ヴォードヴィル界の人気者だった。コンビは諍いから解散、老いていくウィルはホテルの一室に住み、役者としての再起を目指す。

そこにテレビ局からコンビ再結成のオファーが届くが、ウィリーは断固拒否、甥でマネージャーのベンが必死で説得。ウィリーは重い腰を上げる。

相方のアル(佐藤B作)は、娘家族と同居しニュージャージーに住んでいる。彼はオファーに応じ、マンハッタンにあるウィリーのホテルを訪ねる。テレビ局のリクエストは、往年の名作コント「診察室」の上演である。二人は、稽古にかかるのだが。。。。。。

おぼん・こぼんのみならず、漫才コンビというのは、仲が悪いというのが定説だった。芸に対するこだわり、強烈な個性のぶつかり合いを生業とするので、必然にも思える。ウィルとアルも、そんな二人である。

それでも、二人はどこかで繋がっているはずである。そうでなければ、あの素晴らしい舞台はなかったはず。私は、そう思いながら舞台を観ていた。それが私の望む“素敵な芸人”であり、加藤健一と佐藤B作という、ベテランの二人はそれを体現してくれると信じていた。

終演後、私は「良い話だった」と満足した。

パンフレットをみると、加藤健一と佐藤B作は初共演とのことである。それも驚きだが、その二人が長年連れ添ったコンビを自然に演じていた。

日本語に訳するのはさぞかし難しいだろう脚本を、小田島恒志、小田島則子の両氏が見事に翻訳し、演出の堤泰之はニューヨークの空気を下北沢に生み出した。

パンフレットは加藤健一事務所30周年ということで、その軌跡ー上演演目/写真で振り返っている。それを眺めながら、ちょっと後悔していた。舞台は一期一会、逃すと取り返すことはできない。

芝居は面白い、もっと観に行こう


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