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旅の記憶35(その2)〜油断が生み出したバースでの事件

(承前)

ストーンヘンジを見学、バースに移動し一泊したのですが、翌朝事件は起こりました。宿を出て、路上に駐車していた自家用車、真っ赤のフォルクスワーゲン・ゴルフに近づくと、なんと運転席の横の窓ガラスが粉々に砕けていました。

すると、道路に面した家の2階から女性が顔を出し、「昨夜音がしたので窓を開け、そこにいた男に注意したら逃げ去ったわよ」と。

当時(90年代)のイギリスでは、駐車した車のガラスを割り、車中のものを盗むという行為が発生していました。いわゆる車上荒しです。海外では車中にカバンを置いては絶対にいけません、必ずトランクに入れましょう。私もロンドンに赴任すると、同僚から忠告されました。

昔は、今のようにロックが連動していなかったので、鍵を差し込んでトランクを開けていました。その頃日本で販売されていた車には、その手間を省くために、運転席にトランクを開けるレバーがついていたと思います。イギリスで乗っていた車には、その装備がありません。ガラスを割ってレバーを操作し、トランクを開ける行為を防止するためです。

ということで、普通のイギリス人は車中にカバンなどを放置しないのですが、今度はカーステレオを引き抜いて盗むという行為が横行しました。カーステ(今や懐かしいですね。カセットテープの時代です)など盗んで、いくらになるのだろうと、日本人仲間で話していたことを覚えています。

大抵の車のカーステは、盗難防止の目的で、操作パネルが外れるようになっていました。車を離れる際は、パネルを外し携帯するか、トランクの中に入れておきます。普段はこれを励行していたのですが、ロンドンのような大都会ではないバースで、まさかそんなことが起こるとは想像せず、旅先で油断していたこともあり、取り外すのを忘れていたのです。

カーステを抜き出そうとした形跡はあったのですが、前述の女性が注意してくれたおかげで未遂に終わっていました。不幸中の幸いです。

ホテルに戻り、ガラスの修理業者を調べてもらい電話しました。同様の被害にあった友人から、「イギリスはすべてのサービスが鈍いけれど、車のガラス修理だけは早い」と聞いていましたが、電話すると午後一番にはできるとのことでした。

我が家は当初の予定通りバース観光を継続、ランチを済ませて車に戻ってみると、ガラスは綺麗に修理されシートに散らばっていたガラス片もすっかり取り除かれていました。

冗談で、「ガラス修理業者と、ガラスを破る一味はグルなのではないか」と話していましたが、あまりの手際の良さに「ひょっとしたら」とも思ってしまったのでした。

こうしてストーンヘンジとバース市街という2つの世界遺産は、車上荒し未遂事件とともに記憶に刻まれたのでした

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