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『僕のいた時間』と親友のこと~再会

以前、私の一番古くからの親友のRちゃんのことを書いた。

2017年にALSを発症したRちゃん。
この前会ったのは、2019年の4月の終わりだった。コロナ禍の前、インフルエンザの流行時期からRちゃんの入院している病院の面会規制が厳しかったので、今までずっと会えずにいた。
それでも、昨年の春に視線入力PCでメールを打てるようになったRちゃんとは、月2~3回のペースでメールのやり取りをしていた。

Rちゃんには春馬くんのことも話していたから
「こないだアマプラで『コンフィデンスマンJPロマンス編』見たよ~!竹内結子ちゃんも出ていたんだね。ほんとにもったいないね。」とか
「『真夜中の五分前』見たよ~!映像も音楽もすごい良かった!」などの感想のメールをくれたりもする。
また、父の癌が寛解に向かったものの1年後他臓器に転移していることを報告した時には、
「お父さん大丈夫だよ!前回治療で消えたからきっと大丈夫だよ!」なんて励ましてくれたりした。
そうやってメールでやり取りしていると、動けず話せないなんてことは忘れてしまうくらい、私の大好きな昔のままのRちゃんなのだ。
Rちゃんがこうなる前は、社会人になってからというもの盆と正月、GWの帰省の時に連絡を取り合っておしゃべりする程度だったのが、今の方が頻繁に会話し身近に感じている。

今般、父の介護で実家に長い間帰省していた私は、コロナの感染拡大も落ち着いている今ならもしや、と思い、Rちゃんに遠慮がちに会いに行ってもいいかと打診してみた。
即座に、「明日退院するから、会おうね(^▽^)」との返事。
Rちゃんは、通常2週間ずつ入院と自宅療養を繰り返している。
病院は未だ面会規制が厳しいけど、自宅にいる期間なら会える、とのことだった。(もちろん感染対策を万全にした上で)

直前にRちゃんから「私を見てびっくりしないでね。舌出っ放しだし、病気進行して筋肉が無くなり目があまり開かなくなっているから・・・」というメールが来た。
確かドラマ『僕のいた時間』の最終話、終盤の方で春馬くん演じる拓人は舌が出ていたな、と思い出した。それでも会おうとしてくれる気持ちが私は嬉しかった。

当日指定された時間に、私はRちゃんの自宅に出向いた。気さくな旦那様が出迎えてくれた。
Rちゃんのベッドは、リビングの大きなテレビの真ん前に位置していた。
「Rちゃん!久しぶり!」と覗き込むと、2年半ぶりに見るRちゃんの顔。びっくりしないでね、とは言われていたけど、違う意味でびっくりした。Rちゃんのお肌、つるっつる!しかも赤ちゃんみたいに可愛い。
もともと、Rちゃんはものすっごい可愛い子だった。茶色いストレートヘアはいつもさらさらで、お肌に吹き出物ができているのは見たことが無くキメ細かでつややか。中学の頃は、一緒に下校していると途中で男子が待っていて告白されたりしていたこともあったし、10年前に開催された中学校の同窓会では「いまだから言えるコーナー」というやつで全然違うクラスの男子から「昔、ずっと好きでした!」と公然告白されていた。だけど、可愛い見た目と違って実は性格は男前で笑い上戸。いつも涙を流しながらケタケタと笑い転げる明るいRちゃんが可愛くって羨ましくって憧れだった。そうそう、かつてNHK朝ドラのヒロイン時代の多部未華子ちゃんを見て、うちの母が「この子、Rちゃんに似てるわね」と言っていた。小さい顔と華奢なフォルム、確かに似ていると思ったものだ。
あ。ついついRちゃん自慢をしてしまった。
話を戻そう。Rちゃんのベッドには大きめのノートPCがちょうど目の前に固定されていた。初めて見た視線入力PCは、すごかった!
Rちゃんの視線がディスプレイの50音順に並べられたひらがなの文字の上を這う。そこで視線を小さく回すと入力エリアにそのひらがなが入力される。変換というキーの上に視線を置いてまた小さく動かすと、その候補となる単語がいくつか出てきて、Rちゃんの視線がその上を動きお目当ての単語の上で小さく視線を回すと確定。
Rちゃんは慣れたもので、実に早く正確に文字入力をしていた。
そして、『僕のいた時間』でも見たようにPCがその文章を音声で読んでくれる。ドラマでは、事前に録音しておいた拓人の声が読み上げていたが、RちゃんがこのPCを導入したのは既に人工呼吸器を装着し声を失った後だったので、自身の声は録音していなかったようだ。

Rちゃんが「一緒に写真撮ろう」と言うので、私がRちゃんの頭上に回ると、目の前のPCを視線ひとつで巧みに操作して写真を撮ってくれた。私とRちゃんのツーショットなんて、何十年ぶりだろう。二人とも随分と年を取ってしまい、いろんなことが変わってしまったけれど、今もこうやって友達でいられることがとても嬉しい。

筋力がもっと衰えてしまうと視線入力も難しくなるということだが、次は脳波を読み取って意思を表現できる技術があると旦那さんが話してくれた。
きっと今に、Rちゃんの指示のもとRちゃんの手足となってくれるロボットもできるだろう。ああ、科学ってこういうところにこそ使われるべきものだ。

少し前に来たRちゃんからのメールに書いてあったことを紹介したい。
時折入院している病院が新築の病院らしく
「お風呂がジャグジーで快適なの!」と喜んでいたり、
夏のオリンピックの時には、テレビで観戦を楽しんでいて
「昨日は侍ジャパン勝ったね!看護師さんがいいと言ってくれたから最後まで見れたよ~^^」と喜んでいたり。
一見何不自由なく動ける私からしてみたら嘆いていても不思議ではない状況にいるRちゃんからは、一言も愚痴らしい言葉は出てこなく、いつも小さな幸せを見つけてそれを感謝して喜んでいる。

もちろん、これまで辛い想いや苦しいことはたくさんあったに違いない。
でも、どんな状況にあっても、楽しみは見つけられる。幸せは見つけられる。光はあるのだ。

そういうことをRちゃんから教えてもらっているな、とつくづく思う。
心からRちゃんに感謝したい。

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そして、やっぱりどうしても春馬くんのことを考える私。
2年半ぶりにRちゃんと再会して、改めて、春馬くんはALSの患者さんのことを真摯に忠実に演じていたことがよくわかった。

なぜなら『僕のいた時間』の最終話の拓人の視線や表情は、本当にRちゃんによく似ていたから。
春馬くんきっと、実際の患者さんに会ったり、いろんな資料を一生懸命読んだりしたんだろう。でも、それは単に真似ているだけでなく、確かにリスペクトがあったことが演技からも読み取れる、と私は思うのだ。

そこにはプロ根性だけでなく、純粋な「こころ」があると思った。

来週あたり、また『僕のいた時間』見ようかな。
Rちゃんと春馬くんの笑顔を思い浮かべて、そう思った。

以前書いたドラマレビューはこちら。


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