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『サムライ・ハイスクール』~春馬くんよ、清らかに照れ

先日、Tverで期間限定で無料配信されていた『サムライ・ハイスクール』を一気に見た。

2009年10月から12月まで日テレの土曜ドラマ枠で放送されていたドラマ。当時は、私は育児奮闘中だったため、全く春馬くんのことはアンテナに引っ掛かっておらず、よってこのドラマの存在も知らなかった。

春馬くんが去ってからの秋くらいだったと思う、動画配信サイトで初めてこのドラマを視聴したが、その時には正直言って、自分の中の衝撃と悲しみがこのドラマのコメディ要素と乖離しすぎていて、中身はほとんど頭に入ってこなかった。なんとなくわちゃわちゃしたドラマ、という印象で終わってしまった。

なので、今回改めてじっくり見させていただいた。

ざっくり言うと、ヘタレ高校生小太郎が、ひょんなことから、時折、同姓同名の侍に乗り移られ数々の窮地を脱していく、というストーリー。
あらこれ、よくよく見てみると、ある言葉をキーワードに侍に変身し敵をバッサバッサとやっつけていく、男の子の大好きなヒーローものではないか。
更に、家族との絆や友情、そして恋愛などを通して、ヘタレ小太郎が成長していく成長物語だ。

この時、春馬くん19歳の若さ。

今回改めて見てみて、春馬くんの凄さに驚愕した。

春馬くんの演じ分けの凄さ

本作の中で春馬くんは、望月小太郎という名前のヘタレ高校生と同姓同名の戦国時代の侍の2つの役を演じている。正確にいうとヘタレ高校生の望月小太郎と、彼に乗り移った侍小太郎、更に過去のシーンで本物の侍小太郎の役と、3役を演じ分けているということになる。

この演じ分けの凄さといったら!

まず、過去シーンでの本物の侍小太郎の時。
戦国武将真田幸村に忠誠を誓う家臣。17歳にしていいなずけとの契りも交わし、 いくさに出陣する前に辞世の句を詠んでしまうほど、誇り高く芯のある勇敢な若者である。
春馬くん、同じ年の6~8月初舞台となる『星の大地に降る涙』で侍役を演じ、既に殺陣の稽古は積んでいたので、構える姿も立ち回りも決まっていて所作や風格も凛々しくまさに侍である。
赤い甲冑を身に付けた殺陣のシーンなどは、先日公開された『ブレイブー群青戦記ー』の元康様を彷彿させるかっこよさだ。

それなのに。
一変して主役のヘタレ高校生小太郎の時。
大半、小鼻を膨らまして口をとんがらせている。いつも文句を言ったり、言い訳したりしているからだ。目もキョロキョロとして落ち着かないし、ひとと対峙する時も体は斜め向きで自信の無い様子。いつも体幹弱そうにフニャフニャしているし、姿勢が悪く肩がすくんでいるのは、周りに流され自分という芯がない表れ。ビビりで注意力も散漫で、よく何かにぶつかったり、自転車を倒したり。
だけど、本当は素直で他人に対する思いやりに溢れ、実は筋の通らないことには首をかしげる。恐る恐るその不条理に抵抗してみるヘタレ小太郎に、思わず「がんばれ!」と応援したくなる。
よく見ると、スタイル抜群で美少年、お目々キラキラ肌も髪の毛もつやつやピカピカ、こんな最強のルックスなのに、これ程までにイケてない感を醸し出せる春馬くんってこの当時からだったの!?

対して、侍小太郎が乗り移った時の小太郎。
こちらは、過去シーンの本物の侍小太郎と同じようでいて、実は微妙に違う。過去の侍小太郎の時よりも、春馬くん、若干滑稽さを加えて演じていると思う。現代に浮きまくる侍言葉を滑舌よく流暢に、片目だけ細めて得意げに話したり。左手を腰に添え、右手にモップや定規という武器を持ち大袈裟に構え前傾姿勢で素早く走るのもなんとなく滑稽だし。
それに加えて腹から出したよく響く低めの声に、顎を引き眉間にしわを寄せ眼光鋭く、背筋を伸ばし首を長く、胸を張り体幹をしっかりと据えた立ち姿や殺陣シーン。しかも、この若さでこんなにクールな表情できるなんて、春馬くん、あなたってひとはどんだけ引き出し持っているの?!
この侍小太郎の滑稽さとかっこよさのコラボがまた何とも言えない魅力なのだ。スイカに塩をかけたような、アイスに醤油をたらしたような(なんのこっちゃ)。ほんとに、なんて愛らしいお侍さん。

最初は、こんなに対極にいる二役が、ストーリーが進むにつれて乖離が小さくなっていく。ヘタレ小太郎が、侍小太郎に感化されそちらに少しずつ寄っていき、筋を通す男に成長していくのだ。春馬くんのその寄せて行き方も絶妙で、うーん、やはりうまいな!と唸ってしまう。

なんと言っても感心するのは、ヘタレ小太郎と侍小太郎のどちらとも、しっかりと愛すべきキャラクターに仕上がっているのだ。これって、春馬くんの力量だよね?どんな役も愛すべきキャラにしてしまう春馬くん。ほんとに、若い頃からさすがだ。

このドラマまでは、『恋空』や『ごくせん 第3シリーズ』、『ブラッディ・マンデイ』など、不良やクールでかっこいい役どころが多かった春馬くん。その直後のこの作品で、こんなにもコメディ才能を開花させていたとは。

でも、視聴率がそれほど振るわなかったところを見ると、同世代の女の子たちは、かっこいい春馬くんに恋愛のドキドキ、キュンキュン、キャーキャーを求めていたのかな。そういう意味では、どちらかと言うと男の子に向いているドラマだったのかも。
女性であれば、この素晴らしさをわかるのは、春馬くん世代というよりは、もうちょっと年上の女性なのかなとも思う。

春馬くん所縁ゆかりのスタッフと共演者の面々

今回、改めてこのドラマを見てみると、城田優さんや岸谷五朗さんは言わずもがな、その他にも春馬くんと所縁ゆかりのあるスタッフ、共演者だらけではないか。

◆濱田岳さん
 今や、日本のエンタメ界で唯一無二の存在の濱田岳さんは、第4話のみ不登校のクラスメイト小清水和也役で出演している。
濱田さんと言えば、なんといっても春馬くん若かりし頃の主演映画『キャッチ ア ウェーブ』で、ひと夏の冒険をする仲間の一人である田口浩輔役を思い浮かべてしまう。
実際の濱田さんは春馬くんより2つ上で、春馬くん同様子役出身、『キャッチ ア ウェーブ』では初々しい主演の春馬くんを、コミカルに安定の演技で支えていた。4年ほど経て本作では、演技力も増して少し逞しくなり、自分の殻を破りまくった春馬くん、濱田さんは同世代としてどんな感想を持ったのかな。また、前作の撮影の思い出なんかを二人で話したりしたのかな、なんて思い浮かべたりしてしまう。このあと、映画『永遠のゼロ』でもご一緒されているのね。共演シーンは無かったけど。

◆室井滋さん
 室井滋さんと言えば、『14才の母』で春馬くんと母子役で初共演。前作でのやり手の女社長キャラと今回の手厳しい女校長は割と近い感じがする。対して、春馬くんは、前作は優等生なのに彼女を妊娠させてしまうという一人息子役、今回は学校の不出来な問題児という役柄。前作の苦悩する我が子が、数年後こんなに多彩な演技をする若者になっているのを目の当たりにして、室井さん、驚いただろうな。
室井さんは、切れ長の目の印象からか役柄は厳しめのデキる女性の役が多いけれど、昔室井さんの著書「むかつくぜ!」を読ませていただいたことがあり、私のイメージではディズニー映画『ファインディング・ニモ』のドリーのような柔軟で楽しい方なんだろうな、と思っている。きっとこの撮影現場でも春馬くんの前作からの成長ぶりを讃えてくださっていたんではないかと思う。

◆金子ノブアキさん
本作では、近所の交番の巡査で元暴走族という役柄。同じ年の4月公開の映画『クローズZEROⅡ』では、春馬くん扮する美藤竜也と同じ鳳仙学園の不良集団のトップ鳴海 大我役だった。春馬くんは1年生にして幹部入りしたスーパールーキー役。前作では、終始男臭くお互い苦虫を嚙み潰したような表情で、現役のトップと次世代のリーダーとの熱い信頼関係を見せてくれた二人だが、本作では二人ともコメディ感満載。この役どころの違いに、面白いなあと感慨深く見た。

◆賀来賢人さん
 代議士の息子でサッカー特待生岩永仁役の賀来さん。本作の中で一番の悪役と言っていいだろう。同じ事務所所属の賀来さんとの共演は、この前の『ごくせん 第3シリーズ』の卒業スペシャル以来2回目。
実生活では、事務所主催のハンサムライブでは一緒にパフォーマンスしたり、なにかと親交が深かったようだし、撮影現場では和気あいあい過ごしたりしたのかな。若い頃は、トーク番組でよく春馬くんの話をしていた賀来さん。なんでも、賀来さんのお母さんも春馬くんのファンだったとか(以前「A-Studio」で鶴瓶さん談)。

◆丸山智己さん
 第3話で、あい(杏さん)を誘拐しようとした偽ディレクター役だった丸山さん。
本作の約10年後には、映画『天外者』の勝海舟役で共演するが、映画公開後ご自身のブログで春馬くんのことを語ってくださっている。

三浦春馬くん主演の映画『天外者』(てんがらもん)が12月11日公開になりました。
わたし、僭越ながら勝海舟を演じさせていただきました。
日本の未来のために情熱を燃やし続けた漢『五代友厚』を三浦春馬くんが演じています。ピュアでまっすぐでエネルギッシュな春馬くんがそこにいました。僕はそれを上から眩しく眺めていました。
普段は人懐っこい笑顔で挨拶してくれる好青年でもひとたびカメラが回ると放つエネルギーは凄まじいものがありました。
彼のほとばしる輝きを、是非劇場でご覧いただけたらと思います。
   ~丸山智己オフィシャルブログ「躍るアホウ」2020-12-12 

◆キムラ緑子さん
 本作では春馬くんの母親役、そして去年放送のドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』でも母親役。『おカネの切れ目が恋のはじまり』では、直接会話するシーンは無かったが、本作では母と息子としてしっかりと絡んでいた。望月ファミリーの、女が強く男が弱い感じ(我が家と同じ?)が親近感沸いて、出来の悪い息子を叱咤激励するお母さん役のキムラさんの、のんびりしたお父さん役の岸谷五朗さんとの正反対のキャラが立っていてとても良かった。
春馬くんが去ったあの日、キムラさん、その苦しい胸の内をブログに吐露されていた。

悲しいことが多すぎる
あたしのような行きずりの母でも
どうにもたまらなくて飲み過ぎてしまうのだから
日本中のどれ程の人が今夜は眠れないことでしょうか
明日のことは、なあんにもわからない世界で
ミジンコのようにいきているよ
せめて、
こっちの世界は、楽しいよう!!
って言ってくれ!
さよなら
つらいわ
キムラ緑子の『いつか~~の前に』今日の世界 2020年 07月 18日


そして、さらにスタッフ陣も所縁ゆかりのある方々。

◆脚本家の井上由美子さん
 『14才の母』に続き、今度は春馬くんを主役にしての脚本。本作は、春馬くん当て書きだよね。このドラマの後には、『陽はまた昇る』でまたしても春馬くんとご一緒。井上さん、春馬くんのことお気に入りだったのだろうな。
前作の悩める優等生智志とは対極にある今回の小太郎役、井上さんは実に春馬くんの色んな引き出しを開けてくださっている。
井上さんは、その後大ヒットドラマ『昼顔』も手掛けているが、あの斎藤工さんが演じたような色気のある大人の恋愛ドラマを春馬くんで書いていただきたかったな。

◆演出家の佐藤東弥さん
 『14才の母』、『ごくせん 第3シリーズ』に続く3回目。
春馬くんがいなくなってから佐藤さんが発信したコメントは皆さんもきっとご存じのはず。3作も共演したこんなにもベテランの演出家の方に、「尊敬します」と言わしめる春馬くんの人柄って、やはり素晴らしい。

美しく、優しく、誇り高く、前向き
彼について語ろうとすると
そんなポジティブな言葉しか出て来ない
彼も人間だから
そんなことばかりじゃなかったと思う
でも彼は、それを外に見せないようにしていた
それは人間として
とても立派な態度だと思う
僕は生涯彼のことを尊敬します
佐藤東弥 監督ブログ「あの人のこと」2020年07月19日(日)より

◆音楽担当の菅野祐悟さん
 本作の音楽を担当された菅野祐悟さんは、本作の前年放送のテレビドラマ『ガリレオΦ(エピソードゼロ)』でも音楽を担当されたとのこと。音楽担当とは、どんな手順で曲を作成していくのかよく知らないが、映像を見ながら登場人物に合った曲を作成していくのであろうか。
こちらの菅野さんは『ブレイブ -群青戦記』でも音楽を担当されていたそう。元康様の「加勢いたす」など、春馬くんにぴったりのかっこいい曲を作ってくださった方だ。

あの日の翌日の菅野さんのつぶやき。命がけでの作曲、本当に感謝である。

終わりに

こんなに明るいドラマの記事なのに、段々しんみりとしてしまい申し訳ない。

春馬くんがこのドラマの最中にスランプに陥り、俳優を辞めて農業の道に進もうと考えた、という話は有名である。
「このドラマの関係者の皆さんには、本当に申し訳なかった」と何かのトーク番組で話していた。
でも、このドラマの映像からは全くその気配は感じれず、和気あいあいイキイキした様子にしか見えない。春馬くんの表情、演技からも、プロ根性しか感じられない。

やっぱり、春馬くんは若い頃から、役者のプロだったんだなあ。

最後に、侍小太郎が詠んだ辞世の句。

十七の 散る命火を
誇るべし
残る夜月よ 清らかに照れ
~『サムライ・ハイスクール』望月小太郎 辞世の句

残る夜月とは残された妻とこれから生まれてくる子のことらしい。つまり、その後繋がっていった現代の望月小太郎のことでもある。

「清らかに照れ」

なんて、まさしく春馬くんのことじゃない?
春馬くんよ、たくさんの作品を通して、清らかに照れ!

今も、そしてこれからも。


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