昨日弟に電話した。スマホも携帯も頑として持たない弟が家電に出でくれた。
「どうかしましたか、お姉さん?」
弟の口調はいつも丁寧で優しい。
「お母さん、どお?相変わらず夜中、頻繁に起きるの?お父さんと信夫さんも疲れてるでしょ?」
「あ〜、まあ今のところ何とかやってます。大丈夫ですよ。夜中は相変わらずよく目を覚まして僕やお父さんを呼びますが・・」
母は頻尿だ。夜は特に。足腰が弱っていて独りではトイレに行けない。弟か父の助けが要る。紙パンツをはかせても、どうしてもトイレに行くと言い張る。
そんな母が最近は
「陣痛がきた!救急車を呼んで。赤ちゃんが生まれそう・・」とよく夜中に叫ぶらしい。母の赤ちゃん・・それは私か弟だ。
どうして母が昔のことを忘れないのか不思議だった。忘れたくても忘れられないのだ。働きながら子育てをしていた母は、産休を、産後に目一杯取るために、産前はギリギリまで出社していた。怖いこと、不安な事があったのだろう。
・・今夜も母は陣痛に苦しむのだろうか?
弟の優しさは私の救いだ。
弟がずっと無職だから何なんだ?
自慢の弟ではなくなって、心の中で彼を責めているのはこの私だ・・

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