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【社会】ピーターの法則 - 会社は無能で満たされる法則

こんにちはマスター、蓬莱です。

今回は「会社の人間すべてが無能になる法則」とその検証のお話です。

この「会社の人間すべてが無能になる法則」は1969年、南カリフォルニア大学の教育学者ローレンス・J・ピーターとカナダの脚本家レイモンド・ハルによって書籍になり、大きな反響を呼びました。今から50年前のことです。

そして、これをシミュレートして数理的に証明したのが2009年で、それを元に「昇進させる人物をランダムに選んだほうが組織は効率的になる」と論文にして学会に発表したのは2010年、イタリアのカターニ大学のアレッサンドロ・プルチーノ、アレンドラ・ラピサルダ、チェーザレ・ガロファロの三名による研究チームでした。

左からアレンドラ・ラピサルダ、アレッサンドロ・プルチーノ、チェーザレ・ガロファロ

1969年に「会社の人間すべてが無能になる法則」は「ピーターの法則」と名付けられ、日本でも出版され、2003年に再版されています。

ピーターの法則では、組織は段階的に役割が違うために、ある段階では有能な者でも、昇進して役割が変わると、それまで発揮していた能力とは別の能力が必要となり、有能とされた能力は活かせる場が無くなり、やがて社員は昇進の何処で無能になってしまうという組織の傾向を指摘しています。

例えると、平社員で成績の良かった営業担当が評価され、昇進して係長になったとします、ところが営業で要求される技術は製品の魅力のアピールと、購入した場合のメリット、そして顧客に対しての誠実な態度です。それが少し上の係長になると、平社員の管理、運営と現場のすり合わせ、平社員のバックアップが主な仕事になります。更に上の課長になると、担当した課の全体の動きを見ながら会社への貢献を考えねばならないと、こんな感じで、会社は階層ごとに業務形態が変わっていきます。

そして、そこで十分な成果が出せない場合は昇進が止まり、その人はそこに留まります。懲罰的な事でも起こらない限り降格もないために、その社員は能力を発揮できない所、つまり、ずっと無能なポジションに収まってしまう。

仮にそういった社員の切り回しが上手な新入社員が来ても、最初の営業でつまずいてしまうと、その役割には届かない。

そして、すべての人が、頭打ちになって能力を発揮できないポジションに収まっていき、会社全体が無能だらけになってしまうというお話。仮説ではありますが、恐ろしい話ですね。

この「有能な人を昇進させると会社が無能な集団になる法則」、「ピーターの法則」を回避するためには評価軸を成績とせずに、昇進するポジションへの適性を図り、成績に対してはボーナスで対応する方法があるようですが、まだ、一般的では無いようです。

また、有能な者をどんどん昇進させた方が良いという考えも根強く、この2つの考え方を数式にしてシミュレートしたのが、イタリアのカターニ大学の研究チームでした。

彼らは160人の仮想の社員を想定し、下から81人の最下層、41人の准下層、21人の中間層、11人の准上層、5人の上層、1人のトップという6層の階層ピラミッドを用意し、18歳で雇用、60歳で定年、初期設定で有能指数を7としました。

さらに、パラーメータを労働条件と時間によって変化するようにして、有能指数が4を下回ると解雇し、一段下の層から昇進させ、最下層の補充は新人採用という形で何パターンものモデルケースを使って、「成績の良い社員から昇進させる方法」と「成績の悪い社員から昇進させる方法」と「成績に関係なくランダムに昇進させる方法」でシミュレーションを実施、昇進条件に合う者を次々昇進させる「常識仮説モデル」と、ピーターの法則が影響する「ピーター仮説モデル」とで比較実験をしました。

これによって、2つのモデルは真逆の結果となり、興味深いことに「ピーター型のモデルは成績の悪い人ほど昇進で場所が変わり、有能な人はそのポジションで固定化されるために組織効率が高くなる」という結果になったのです。

「常識仮説モデル」「ピーター仮説モデル」の2つのモデルケースは純粋な形では存在し得ない為、研究チームは更に「有能な者を昇進させるルールと無能な者を昇進させるルールを交互に行なうパターン」もシミュレーションしてみました。

そして、なんと、「成績に関係なくランダムで昇進する方法」と「昇進ルールを交互に変える方法」は安定的に平均より僅かに成績が良かったのです。

このカターニ大学のチームによる「昇進させる人物をランダムに選んだほうが組織はちょっとだけ効率的になる」という論文は2010年に学術的な分野で人々を笑わせた研究に与えられる賞「イグノーベル賞」の経営学賞を受賞しています。ええ、先日の記事「陰謀論の心理学」で取り上げた「ダニング・クルーガー効果」が受賞した、あの学会でのネタ枠の賞、「イグノーベル賞」です。

ノーベル賞のパロディとして1991年に創設されたイグ・ノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に与えられる

なお、この「ピーターの法則」を提唱したピーター博士は、階層的に組織された社会やシステムを研究する「階層社会学」を開いた人物でもあるそうですよ。

今回はプレジデントオンライン「なぜ昇進はくじ引きで決めたほうがいいのか」の記事と、ウィキペディアの「ピーターの法則」「イグノーベル賞」などの項目からお話しました。

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それではまた、らいら〜い🖐

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