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杉並区のビーチコート(ビーチバレー場)は、国際規格で整備しながら「公式競技大会の開催実績ゼロ」

海のない杉並区に「常設ビーチコート」が設置されて5年が経過しました。

このビーチコートは、ビーチバレーボール競技を行うための国際規格を満たしている(公式競技大会を開催することができる)ことを売りに整備されたにもかかわらず、設置後この5年間、公式競技大会の開催実績はゼロとなっています。

開設から5年が経過するも公式競技大会の開催実績はゼロ


ビーチバレーは、直接的な対人接触が少ない屋外スポーツです。このため、コロナ禍にあっても公益財団法人日本バレーボール協会などが数多くの大会を開催していました。

しかし、予選会を含め、ここが公式競技大会の会場となったことは過去一度もなかったのです。これでは単なる砂場です。

杉並区永福体育館の常設ビーチコート


築29年の旧校舎(教室棟)を解体し、その跡地に常設ビーチコートを開設
したのは2018年9月のことでした。

社会全体が「五輪熱」に浮かれていた頃です。

当時は「園庭のない保育施設」が次々に急増していた時代でもありました。

区立公園を潰して保育所を整備した事例などもあったことから、貴重なオープンスペースをどのように利用できるようにしていくか慎重な検討が必要な局面でしたが、高まる「五輪熱」が優先されてしまった形です。

テレ朝「スーパーJチャンネル」などでも過去に話題に


このビーチコート(ビーチバレー場)の建設については「ビーチがないのにビーチバレーとはこれ如何に?」とのタイトルで当時スーパーJチャンネル(テレビ朝日・2018年1月25日)が報道したほか、噂の!東京マガジン(TBS・2016年6月26日)でも特集が組まれ、疑問視されていました。


なぜ、杉並区にビーチコートができたのか


新たに恒久施設としてビーチコートを常設させることになったのは、東京2020(オリンピック・パラリンピック東京大会)が影響しています。

事実関係をベースに、これまでの歩みを紹介すると次のとおりです。

常設ビーチコートの沿革とその前史

■1987年4月
・杉並区立永福南小学校を開校
(周辺校の児童増を受けたもの。当初から児童数が減少する将来そのまま校舎を他に転用できるように配慮され建設されていた

■2013年3月
・築25年で永福南小学校を閉校に(2012年度の在籍児童数は72人)

■2013年9月
・東京都、2020年五輪の開催地に決まる(猪瀬知事時代)

■2014年3月
・杉並区長、区立施設再編整備計画(第1期)第1次実施プランにおいて、閉校となった旧永福南小学校を改修し、老朽化した永福体育館を移転させる方針を盛り込む
・スポーツ振興議員連盟が「国際基準を満たしたオリンピック競技関連施設(ビーチバレーコート)の整備等を求める要望書」を区に提出

■2014年6月
・杉並区長選挙 田中良氏2回目の当選

■2014年10月
・杉並区長、公式競技大会を開催することができる国際基準を満たしたビーチコートを整備する方針を決定【旧校舎(教室棟)を解体し、屋外ビーチコートを整備する方針を決定】

■~2016年
・設計
■2017年3月 
・杉並区議会が予算及び工事契約議案を可決(賛成37票・反対10票)/旧校舎(教室棟)を築29年で解体することを決定
■2017年3月~
・永福体育館移転改修工事着手/旧校舎(教室棟)の解体を開始

■2018年9月
・国際基準を満たした常設ビーチコート開設
(永福体育館の移転とともに新たに設置。なお、永福体育館にプールはありません)

■2019年5月
・イタリア(ビーチバレーボール)の五輪事前キャンプ地に決定
■2020年3月
・五輪開催1年延期に
■2021年6月
・事前キャンプ中止に/イタリア(ビーチバレーボール)チームは選手村に直接入村と決定
■2021年7~8月
・東京2020(五輪パラリンピック)1年遅れで開催

■2023年10月
開設から5年が経過するも公式競技大会の開催実績はゼロ


このビーチコート(ビーチバレー場)の設置検証は、新区長の選挙公約の一つだった


新区長の公約の一つに、このビーチバレー場の設置検証がありました。

これを受けて、区長就任から半年後、区職員が検証した結果が公表されました(2023年春)。

新区長は、この問題に利害関係がないことから、客観的に、かつ、中立的な検証が行われるものと期待していました。

しかし、検証結果には「開設から5年が経過するも公式競技大会の開催実績はゼロ」という客観的事実に何の言及もなく「当初はビーチコート設置に反対していたが、利用している学生さんたちを見て良かったと思う」といった主観的な意見や利用率の向上が紹介されるのみで(実際には特定一部団体等が繰り返し利用しています)、ほとんどまともな検証は行われていませんでした。

ここは、単なる砂場ではなく、公式競技場としての国際基準・規格を満たしていることを売りに整備された施設です。そうであるにもかかわらず、開設後この5年間、公式競技大会の開催実績がゼロである事実は検証過程において全く無視されていたのです。

  1. わざわざ国際規格を満たして常設化したのは何だったのか?

  2. そもそも恒久施設として整備する必要があったのか?

  3. なぜ、日本バレーボール協会主催などの「公式競技大会」が開催されないのか?

  4. 国際基準を満たしているビーチバレー場の数はそう数多く存在しない中で、大会予選会においてさえ使用されないのはなぜなのか?


この5年を振り返り検証すべき事項は数々あったはずですが、このように不都合な事実は検証作業においてあえて取り上げられず無視されていました。

このビーチコートは、特定の団体が繰り返し使用することで利用率(稼働率)を引き上げており、区もこれを評価しているようですが、このような「茶番」で検証した(公約を果たした)ことになっているのは、残念でなりません。


穏やかで成熟した住宅地(第一種低層住居専用地域)の中に存在するビーチコート


国際基準で常設ビーチコートが整備された杉並区永福体育館は、甲州街道にほど近い住宅地(第一種低層住居専用地域)の中にあります。

穏やかで成熟した住宅地です。その南側には、お寺やお墓が多数広がっており、築地本願寺和田堀廟所のような大きな墓地もすぐ近くにあります。

ビーチコート(国際規格ビーチバレー場)が常設されている位置


場所は、杉並区永福1-7-6です。現地周辺の様子をGoogleマップなどで一度確認してみてください。


ビーチバレーボールは、仮設会場でも実施可能(パリ五輪2024も仮設会場)


ビーチバレーボールは、適切な砂を確保することができれば、仮説会場でも実施することができる競技です。

パリ2024(パリ五輪)でも、ビーチバレーボール競技は、エッフェル塔のふもとに広がるシャン・ド・マルス公園内に設置される仮設会場で開催されます。

すでに杉並区はビーチコート用の砂/オーストラリア産ホワイトサンドを何度か購入していますので、これを適切に保管し(必要に応じて柔軟に利用可能にし)、跡地は他の用途にも幅広く利用できるよう汎用性の高い空間に切り替える検討が必要です。

そのほうが強風・台風などで砂が吹き飛ばされるおそれもなく合理的というべきでしょう。このビーチコートは、残念ながら東京2020五輪後に特筆すべきレガシーを残しておらず、いつまでも常設化が続くことは疑問です。

駐車場や夜間ナイター設備も利用可能な永福体育館のビーチコート


ビーチバレー場の設置検証は、区長公約の一つでしたが、既得権への配慮が目立ち、客観的・中立的な検証が行われていない点に大きな問題があります。

決算審査において、この点を指摘したところ、新区長からは「これで検証が終わったわけではない」との見解が示されました。

元ビーチバレーボール日本代表が、参議院議員(東京都選出)であることは事実ですが、だからといって特別扱いすべきものでもないでしょう。適切な対応が図られることを期待しています。

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