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クロックスが常態化する生活圏

2020年11月14日(土)、朝日新聞の連載「耕論」で、「百貨店の未来は」という記事が紹介されていた。

本記事は、リテール・フューチャリストの最所あさみさん、Jフロントリテイリング特別顧問の奥田務さん、法哲学者の谷口功一さんが寄稿している。

百貨店の閉店がたびたび報じられる中、デパートという「箱」の役割は何か?という観点でそれぞれ意見が寄せられている。

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デパートに限らず「箱」問題は、時代の変遷と共に浮上する。

携帯電話キャリアのdocomoも「iモード以降」のビジネスモデルが盛んに議論されてきた。今やApple StoreやGoogle Play Storeがコンテンツビジネスの主役になり、彼らでさえもNetflixやSpotifyなどの新興勢力の動きは無視できない。

自動車メーカーも、MaaSの動きの中で「車をつくる人たち」というビジネスモデルからの脱却を真剣に検討している。トヨタ・豊田章男社長が「モビリティカンパニーになる」と宣言したことは一時期話題を呼んだ。

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記事に関しては、正直、期待を超える内容ではなかった。もともと僕が、最所さんの有料マガジンを購読していたこともあったと思う。

百貨店がモノを売るためだけの装置でなく、消費者の深い需要に応えるためワークショップなど深い情報や学びを提供するような、半歩先のライフスタイルを提案する場所であるべき」は最所さんが常に語っていたこと。

編集としての役割が、百貨店で働くプロフェッショナルに求められているという点には強く共感するが、「その成功事例は結果論では?」と感じるものもあり、新しい視点は得られなかった。(そもそも前提として、全ての百貨店を一括りにし「百貨店的なもの」を三人に論じさせている記事構成に空回りの要因があるように思うが)

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その中で谷口さんが書かれていた「今の若い人にとっては「クロックスのサンダルで行ける」と言われるショッピングセンターこそが「故郷の原風景」になっている」という視点には肯けた。

ワーディングも秀逸だし、購買行動が画一化しつつある点を言い当てている。世代にもよるかもしれないが、市場動向を見ると、インフルエンサーマーケティングやECサイト購入が明らかに主流だ。

そのことは「私はこのスタイルにこだわる」という想いさえも、特定店舗やエリアへの訪問には繋がらないことを意味している。巣ごもり消費という言葉が象徴される通り、コロナ禍で「家から出ないで買い物する」という感覚はますます加速しているのだろう。

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そうなっていくと、外出は「ファッションのため」でなく「楽しむため」というフンワリしたものになる。ファッションが主目的ならお洒落をするだろうが、エンタメ全般を包括する目的感なら、機能性重視で良い。

その感覚は、必ずしも絶望だけがあるわけではない。

クロックスで「気軽に」動ける生活圏に、新しい価値が生まれるかもしれない。

それらはスーツからオフィスカジュアルへと変化する働き方改革などとも連動し、ちょっとした「ケの日の彩り」になっていく。

カラフルでも、シンプリシティでも、エンプティネスでもない。

ファストファッション全盛期と既視感はあるけれど。でも、そことは、ちょっと違う気がする。

彩りがあり無理しすぎない価値観。少しでも「個人の生きづらさ」が緩和される方向に進んでいってほしいと願っている。

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