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短編会話劇「ダーウィンの思い過ごし」

警察官の相棒二人組が暇を持て余してダラダラ喋る短編会話劇

<登場人物>
望月 … 特殊犯罪対策課の刑事。ノリがいい。
桂木 … 特殊犯罪対策課の刑事。真面目。

警察署館内、特殊犯罪対策室。
望月と桂木は待機命令が出ているが、特に変わったこともなく珍しく穏やかな日である。

望月がうたた寝している。
桂木が入ってくる。寝ている望月を見て、ため息。

桂木  おい
望月  むぅ……(と身じろぎする)
桂木  望月
望月  むむ……(とさらに身動ぎ)
桂木  (独特な起こし方で)起きろ!仕事中だぞ!!!
望月  うえええ!!……なんだ、桂木くんかあ
桂木  なんだとはなんだ。
望月  いや、起こし方のクセ強……
桂木  文句があるのか、だいたい勤務中に居眠りとは全く。たるんでるぞ、警察官としての自覚を持て
望月  桂木くん、お母さんみたい
桂木  お前を生んだ覚えはない
望月  そういうことじゃなくてさあ
桂木  顔
望月  ん?
桂木  寝跡がついてるぞ
望月  あらやだ
桂木  夢でも見てたのか
望月  ええ?
桂木  (眉間を指して)シワが寄ってた
望月  あらやだ
桂木  (ため息をついて缶コーヒーとシュークリームを差し出し)ほらよ
望月  お、サンキュー

望月が缶コーヒーを開け、飲む。桂木も自分のものを飲む

望月  (シュークリームの袋を開けながら)暇だねえ
桂木  警察は暇なほうがいい
望月  そりゃ確かに
桂木  報告書は書いたのか?
望月  まーだ
桂木  おい
望月  書類仕事苦手なんだよね、桂木くんは?
桂木  俺は終わった
望月  ウッソ
桂木  あとはお前のを揃えてハンコ貰うだけだ
望月  マジか〜!
桂木  だからさっさと仕上げてくれ、手伝うか?
望月  よろしくお願いします
桂木  夕飯は奢れよ
望月  マックでいい?
桂木  せめて吉野家
望月  俺松屋派
桂木  じゃあそれでいい
望月  桂木くんさあ、適応力高いよね
桂木  そうか?
望月  うん。こういうやつが生き残るんだろうなって感じ。
桂木  どういう意味だ?
望月  自然選択説だよ
桂木  は?
望月  進化論。ダーウィンの
桂木  ああ、「種の起源」か
望月  知ってんだ?
桂木  生物選択だった。
望月  似合わね
桂木  大きなお世話だ、で?
望月  はい?
桂木  なんで俺が生き残るんだ
望月  選択されてんじゃん。世の中。
桂木  誰に
望月  神様とか?
桂木  信じないね。
望月  いや、適者生存の原理っていうか。結局、環境に適応できたものが生き残ってきてる訳でしょ?地球は。
桂木  それはダーウィンじゃないだろ
望月  あれ?そうだっけ
桂木  生物の進化はたまたま、その環境に合ったやつが生き残っただけ。
望月  たまたまって、なんかあれだね
桂木  まあ、そんなもんじゃないのか。そもそも、地球の歴史を人間の尺度に当てはめて考えようってほうがおこがましい
望月  そんな、元も子もない
桂木  「選択」だの「淘汰」だのは単なる思い過ごしじゃないのか
望月  ダーウィンかわいそう
桂木  それに
望月  ん?
桂木  選択はされるもんじゃなくてするもんだ。
望月  かーっこいい〜
桂木  茶化すな。没収(とシュークリームに手を伸ばす)
望月  わあ、ごめんごめん

桂木に追いかけられながら、望月がシュークリームを頬張る

望月  このシュークリームみたいに、食べちゃえればいいのになあ
桂木  なんの話だ?
望月  悪夢とか、悪いやつとか
桂木  悪食だな
望月  でも獏は食べるじゃん、夢
桂木  マレーバクか?
望月  その獏じゃない。妖怪の方。
桂木  ああ。
望月  あ、でもマレーバクもその妖怪から名前もらったんだからワンチャン
桂木  ない
望月  ないか〜
桂木  見た目は妖怪に見えなくもないがな
望月  わかる、なんで白黒なんだろう
桂木  パンダもな
望月  生き残れなさそうだよね、自然界
桂木  目立つだろうしな
望月  でも残ってんだよね、不思議
桂木  俺たちも、そう変わらないんじゃないか
望月  ええ?
桂木  この部署にいる連中が警察組織に適応してると思うか?
望月  思わない
桂木  肉食獣のくせに笹ばっかり食うパンダと似たようなもんだ
望月  悪食のバクかもよ
桂木  進化論から外れたはぐれものばかりか
望月  特殊犯罪対策課は問題児集団だからね〜!
桂木  (笑って)否定できない
望月  はは

望月がシュークリームの残りを少しかじる。コーヒーで流して、

望月  ……さっき見てた夢さあ
桂木  ああ
望月  ……あれ、なんだっけ?
桂木  忘れたのか、このタイミングで
望月  いや、待ってさっきまで覚えたの!桂木くん、もしかしてバク?
桂木  お前は何を言っているんだ?
望月  食べられちゃったのかな〜と思って
桂木  (ため息をついて)全く……

桂木が何かを閃いて、望月が持っている残りのシュークリームを食べる。

望月  あ!
桂木  ごちそうさん
望月  あ〜

桂木が出て行きながら

桂木  報告書!やるぞ!
望月  へぇーい

望月がコーヒーを飲み干して

望月  悪食め。

桂木を追って去る。
結局のところ、選択しようがされようが生きていくことに変わりはないのだ。

終わり

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