◆ベンダーミミック✕バイオスモトリ◆

◆ネオサイタマTV教育チャンネル◆
◆バイオ生物ドキュメンタリー◆
◆『ベンダーミミックの一生』より◆

「…フンフーン…」
早朝のネオサイタマ、深夜営業の後の短い眠りの中。夜明けまではまだ時間がある。

「フンフフン…ハッキョーホー…」

バイオスモトリだ。腰にはヨロシサン製薬のエプロン、頭にはバリキボーイのマスク。大きなコンテナを引きずっている。裸の皮膚が朝の冷たい空気にさらされ、湯気が立っている。

彼は自動販売機の補充作業バイオスモトリだ。自販機を探してドリンクを補充し、報酬として大きなオニギリとダイコン・ピクルスを与えられ、ひんやりとしたコンテナに詰まって眠る毎日。

彼はそれに満足していたし、他の生き方など知る由もなかった。
路地裏にたたずむ旧型の自動販売機の前に着き、腰に吊るした鍵束から鍵を探す。

鍵束の揺れる金属音に混じり、彼の足元で粘膜の擦れる音がした。

自販機の取り出し口から触手が伸び、大きくうつろな目がバイオスモトリを見つめている。
ベンダーミミックだ。
決して慌てず、確実に獲物を仕留めるタイミングを見計らっている。長生きして知恵をつけた立派な個体だ。

「フゴーッ!?」

数十本の触手が彼の足元にわだかまり、悲鳴を合図に一気に脚へ絡みついた。
蛇ほどの太さのなめらかな触手が脚を縛り、柔らかい肉がハムめいて歪む。

「ドッソイ!」
遺伝子に刻まれたスモトリの本能により、足を踏みしめ重心を落とす。しかし、彼の本能プログラムにはこの先がなかった。相手にはぶつかる肩も、つかむべきマワシもない。

ひときわ長い触手が、エプロンをめくり下腹部へ這い上がる。
「アイエッ!?」
未知の感覚に、下半身の力が抜けスキが出来る。ピンホールカメラめいたベンダーミミックのうつろな目は獲物の反応を観察し、急所を見定めた。触手が腰の神経を正確に狙い、局所麻酔めいて毒液を注入した。

「ア…アイエエ…」

抵抗はここまでだった。四肢は感覚を失い、バイオスモトリは意識を失っていった。ソーマト・リコールにオニギリの中身を夢見ながら。

ベンダーミミックは動かなくなったバイオスモトリを触手で包み、通りから見えない自動販売機の陰へ引きずり込んだ。
丸々太った良質なバイオスモトリだ。肝臓を痛めたサラリマンより栄養価が高い。補充用のドリンクまで手に入った。

作業から戻らぬバイオスモトリをかえりみる者はいない。作業員の事故死は当然のロスとして損益計算の内なのだ。
害獣としてベンダーミミックの駆除を行うこともない。存在自体が都市伝説と化しており、旧型自販機を撤去するより新しい自販機を設置した方がコスト安だからだ。
彼は、無視されていた自販機を見つけてしまった。バイオスモトリの中ではいささか勤勉すぎたのだ。

1ヶ月後。
路地裏の旧型自販機と、隣に積まれた空き缶の山。備え付けゴミ箱の許容量を超えて空き缶をねじ込まれ、溢れ出したものだ。

自販機の取り出し口から触手が伸び、あふれかえったゴミ箱を引き倒す。
けたたましい音がして、空き缶が道に散らばり、転がっていく。
しかし、空き缶は転がったあとも止まらず、ズルズルと平行移動を始めた。

ベンダーミミックの幼体だ。
幼体は空き缶にひそみ、生ゴミやクローンヤクザの死体などをあさって生きる。
やがては親のようにバイオスモトリを襲えるまでの、立派なベンダーミミックとなるだろう。

◆ベンダーミミック✕バイオスモトリ◆
◆終◆

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