公園の現実逃避

おおやけのその とかいて、公園。
ぼくは、公園だ。
ぼくの周りは住宅街で、ぼくは家々に囲まれているといっていい。
春になるとぼくはさくらの木々でピンク色に染まる。秋には、ぼくは茶色や赤や黄色の木の葉で彩られるんだ。

ぼくのところには、いつもお子ちゃまばっかり寄り付くもんだから、いい加減飽きているのさ。
土管だの、ブランコだの、滑り台だのうんていだの、お子ちゃまが喜びそうなものばっかりあるから、仕方ないかもね。
子供のはしゃぐ声は好きだけど、もう少し大人の会話も聞いてみたいもんだ。

以下、現実逃避。

季節は私が一番すきな秋のこと。
早朝。
まだ人もあまり歩いていない時間帯に、たまたま公園を見つけた紳士なサラリーマンさんが、ベンチに座る。
そして何かをメモしている。
もしくは、ただ座って上を向いて考え事をしているのさ。その顔はどことなく、希望に満ち溢れていて。
2、30分だけじっと座っていたサラリーマンさんは、腕時計をみると、そっと静かにそこを去る。

お昼前。
公園の入り口にぽつんとある公衆電話に、どこかの家の奥様が駆け寄ってきた。
誰かに電話しているが、誰だろう?
電話ボックスから出てきた奥様は、公園を出ると、近所の奥様にばったり出会う。ちょいとばかりお話しをして、そして小走りで去っていった。

午後4時。いよいよ小学生のお子様がやってきた。おや?珍しく大人しそうなガリ勉タイプの男の子が2人。
仲良くランドセルしょったまま4人乗りの箱ブランコへ。駄菓子屋で買ったお菓子を交換しながら、真顔でほおばる。
何やら今日の算数のテストの出来について話しているようだ。だが、それもつかの間であり、
2人はこれから塾であろうか。
そのあとすぐに公園を出て、じゃあな、といって別れた。

夕方5時を過ぎた頃、
ネクタイをゆるめたサラリーマンが、同僚の女性と一緒にやってきた。
ベンチに座って、お互い、膝に資料のようなものを置いて、それを見ながら話し込む。
時折楽しそうにうなずいたり、ペットボトルのお茶や缶コーヒーなどをそれぞれ飲みながら、かれこれ1時間近く話している。
資料をしまってからもお互いに色んなことを話している。ああ、私が好きな話題だ。
人生について。
ちょっぴり抽象的で、哲学的だけど、的を得ている内容ばかり。女性は話す男性の目の奥をじっと見つめているようにも感じられた。
夕方の公園が2人を優しく包み込む。
なんて、いい空間だろう。
やがて2人はそのまま仲良く話しをしながら、すっかり暗くなった公園を去っていった。

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