ねえねえ、今夜はピザとろうよ！　ユッコが目をきらきらさせて言う。大学の春休みの真っ最中、私とリサはユッコのアパートで映画鑑賞会。二人とも、お泊りセットを持ってきていて、今夜はオールナイトで映画を観ておしゃべりしようって決めていた。

いいね！　とリサがスマホからピザ店へ予約する。あたしこのチーズピザがいい、いやまて、ペパロニ＆ソーセージも捨てがたいよね、定番のマルゲリータが私は好きだな。わいわいきゃあきゃあ言いながら、ピザを決めた。コーラとサラダ、チキンまでも注文する。

ねえ聞いてよ、サークルの後輩の高尾くん、８歳上の社会人の彼女がいるんだって。えーすごい、話合うのかなあ、たしかミキコが狙ってたのにね、ミキコこないだ泣いてたよ。

単位二つも落としちゃってサイアク、環境経済学の横島教授の設問難しすぎるんだもん、あと一個は体育で、出席日数足りんかった。朝一に起きられなくてさー。

バイトこないだやめたけど、また新しくなんか探したいなー、こんどはおしゃれなお店がいいなー、雑貨店とかカフェとかさー、女子の夢だよね、お金ほしーい、バッグも靴も漫画もほしいものいくらでもあるしさー。

就活準備とかすすめてる？（一斉に首を振る）だよねー、でもあまりうかうかしてられないのわかってるんだけどさー、だるいよねー。

恋バナも大学の話題もバイトの話題も尽きることがなくて、くっちゃべっているうちにあっという間にピザが届く。箱のふたを開けると、熱い蒸気とともにスパイシーなトマトとチーズの香りが鼻をついて、みんなで歓声を上げる。

友達と食べるピザは、ほんとうに美味しい。ピザを食べながら「いいダイエットないかなー」と言っては笑いあうのが妙におかしく、腹を抱える。体に悪いものほど美味しいねえ、コーラもピザと一緒に飲み食いする。

食べるのもおしゃべりも一段落したところで、ユッコがDVDをセットしてくれる。音楽と共に流れ出したのは、人気俳優が主演の昨年大ヒットしたサスペンス映画だ。怖いの苦手、だけどイケメンは見たい、というユッコは、一人で見るのが嫌だからと、私とリサを誘ってきた。三人とも寝巻に着替えてスタンバイする。ユッコは私とリサに身を寄せる。

部屋の明かりも、小さなオレンジの照明だけにして、三人で映画に見入った。ねえねえこれ犯人誰だと思う？　しっ、セリフが聞こえないよ、絶対最初に出てきたあの女が怪しいよね、テーブルの上では、食べきれなくて少しだけ残ったピザが、少しずつ表面のチーズを固くしていっている。ユッコが、明日朝温め直して食べるからいいよ、と言う。

ささやかなパーティの夜はきっとあっという間に終わってしまう。そう予感しながら、こんな時間が永遠に続いたらめちゃ楽しいのに、とふっと思った。映画のエンドロールが流れたら、シャワーを借りて、二人が眠るまで今度は私の恋バナを聞いてもらうんだ。