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あのふたりのように「#旅する日本語 睦ぶ」

福井県小浜市にある小浜公園から高成寺へと続く石畳の道には、濡れたイチョウの葉と割れたぎんなんが散らばって、霜月の訪れを感じさせた。見上げるほど大きいイチョウの木は、しっとりと雨天のさなかに立ちそびえている。

夫と二人、先日から北陸三十三ヵ所観音霊場巡りをしている。高成寺は四番のお寺だ。参拝し、御朱印をいただいて次の寺へ。御朱印帖からあたらしい墨の香がほんのりとたつ。

苔むした石段を、転ばないようにそろそろと降りていくと、年配のご夫婦とちょうど行き会った。道をゆずってくれたので「ありがとうございます」というと、二人よく似た笑顔が返って来た。私たちが下りたあと、旦那さんは奥さんをかばいながら石段を上って行った。

私たちはこの夏夫婦となったばかりで、まだお互いにわからないところも多い。でも、あのひとたちみたいにいつでも睦ぶ二人でいれたら。時雨れてゆく空に、北陸の秋がまた深まっていく。



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