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忘れられない 「#旅する日本語 喉鼓」

富山県は、なんといってもお寿司がおいしい。氷見港から水揚げされる新鮮な魚介が、お寿司屋さんにもすぐに並ぶ。独身時代、会社の転勤で富山に住んでいた際に行ったとあるお寿司屋さんの美味しさが忘れられず、小旅行もかねて、僕は妻を連れて富山市を再訪し、懐かしいのれんをくぐった。

二階の小あがり席に通され、わくわくしながら待つ。ほかにも、高校生くらいの息子さんと娘さんと一緒のご夫婦らしき人たちもいて、さかんに向こうの席でお父さんが彼らと進路についてとうとうと話しこんでいる。

温かいお茶と一緒に、お寿司が運ばれてきて、妻は歓声をあげた。ネタが大きくつやつやと新しい。醤油をつけて、そっと甘えびの握りを箸で口に運ぶとわさびの風味がさわやかに鼻へと抜けた。あとからえびのやわらかな甘みがとろけるように追ってくる。

喉鼓とはこのことか。あまりに美味しくて、食べ進むのがもったいないと思いながら、二人で箸をのばした。



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