5. 先生と生徒 大学編


今日もわたしは道で先生の車を探している






失恋してから、友達に紹介してもらったり、

合コンに誘ってもらったりした


だけど人見知りな自分には苦行だった


男の人と会えば会うほど

先生が忘れられない



先生にはメールをたまに送った

送るまで緊張して
返ってこなくて後悔して その繰り返しだった




大学の飲み会で、女の子たちと恋愛の話になった
一人だけ同じ高校の子がいた
ゆりえちゃんと言うらしい
高校時代は接点がなかったため、名前も知らなかった

その子が「私ね、先生にセクハラされたことあるの」と言ったのだ
えぇー!とみんな驚く
そんな酷い先生いるんだね!
と慰めながら、高校時代の先生たちを思い出す


誰だろ…
おじさん先生かな
モテる体育の先生や、女の子好きな化学の先生かなと
ぐるぐる考えていた


飲み会の帰り、ゆりえちゃんと一緒になったので、
さっきの話は誰?と聞いた




彼女の口から「○○先生…」と聞こえた






同じ先生だった
卒業式の日、先生の前で泣きじゃくっていた女の子はゆりえちゃんだったのだ






あいつやりやがったな


どういう立場からかわからないけど

そんな言葉が浮かんだ






詳しく聞くと、ゆりえちゃんは先生のことが好きだったけど、恋愛も初めてだったので
好きという気持ちだけで十分だったらしい

でも先生は手を出した



時期は聞いていないが、もしかしたら
「卒業まで会うのやめよう」と言った付近だったのではないかと思った


勝手な予想では
わたしに手を出したことに味をしめて
他の子も手を出したんだろうと思った



ゆりえちゃんと街中を歩いていると
「あの人、先生に似てる」と歩いている人を怖がり始めた
ゆりえちゃんは心に傷を負っていた


ゆりえちゃんにはわたしと先生が関係を持ったことは
口が裂けても言えないと思った



そんな事実もあり、問いただしたい気持ちもあった
「会いたい」メールをちょっと頻繁にしてみた




初めてメールに返事がきたのは
大学生になって4ヶ月ほどしたときだった



「先生、元気?会いたいなー」




「会う?」







返ってきた!! 
会う…ってでもやっぱりそういうことだよなー

と思いながらも
ドキドキしながら準備をする


時刻はすでに23時
わたしはこっそり家を抜け出した




車で迎えに来てくれて

先生の家に向かった




少し部屋が整頓されていた





「彼女が掃除してくれるの?」
「うーん、そうかなぁ」

ちょっとはぐらかそうとする


「ね、ゆりえちゃんとのこと聞いたよ」
と言うと、驚いていた


「手出したんでしょ」

わたしの問いかけに苦笑いでしか返してこなかった

ゆりえちゃんとわたし、どっちが本気だった?
それともどっちも遊び?


怖くてまだ聞けなかった




抱き合った後言われたことは

「会えるときはこっちから連絡するから、あんまりメールしないで」
だった




あぁこれでわたしは浮気相手になったんだ

自分が望んだ結果だった



何回かメールをした時
「浮気相手でいいから会いたい」と
言ったのだった




それしかなかったのだ
わたしがわたしの人生を生きるためには
先生に会うことしかなかった






その後は、3ヶ月に1回ほど会えた

場所はホテルだった






そのときのわたしは、わたしではなく
まるで女優のように演じた



また会ってもらえるように
絶対嫌われまいと失敗しないようにした



嫉妬はしない
重たくしない
こんな軽い付き合いがちょうどいいよ、などと
嘘をついて会っていた


そんなわたしを見て先生は言う
「いい女だね」







都合のね いい女だよね

って心の中でつぶやいた



「結婚して」と先生が冗談でいう


都合の良い女のような、面倒なことにならない人と結婚したいんだね、きっと。


わたしは無理矢理笑顔をつくって言う
「いつでも結婚してあげる」

冗談に聞こえるように
でも初めて本心を言った





こんな女がいいんだったら
わたしと先生は
彼氏彼女として成立することはないだろう



先生が見ているわたしは、本当のわたしではない







それに気付いて、少し目が覚めたようだった






大学2年生になり、サークル活動を始め
先生のいない生活に慣れ始めていた

少ししたら、わたしにはやっと好きな人ができた
失恋を乗り越えるには新しい恋




先生との関係を解消した


ふと怖くなったり、不安になったりして彼氏を困らせたけれど
寄り添ってくれて安心させてくれた







その後全く連絡を取らないまま
大学4年の教育実習で再会した

でもわたしから声をかけることはなかったし
先生からもなかった


一度すれ違うとき同時に
「お疲れさまです」
「さようなら」
の一言だけ交わした


その一言も噛み合わないなんて...
やっぱりわたしたちは合わないんだね


教育実習でいる間に
先生の結婚式招待状が配られていた



自分の悪運の強さを呪った





就職後、ゆりえちゃんと同じ建物で働いており
たまに会うと先生の話をしていた
ゆりえちゃんは彼氏もできて
先生のことも尊敬する先生と変化していた
ゆりえちゃんも教育実習に行っており
先生とは普通に喋っていたらしいのだ

ゆりえちゃんからは、先生には女の子の子供が生まれてあそこで会ったんだー
なんて話を聞く




情報が勝手に入っていた


聞きたいような聞きたくないような…





わたしがその後会うことはなかった
結婚して、違う土地に来たので
もう先生の車を探すことはない





でも先生はまだわたしを苦しめる
年に何回かわたしの夢に出てきて




あのときをもう一度再現してくるのだ
教室で先生を見ているわたしを




先生を探しているわたしを




緊張しながら話すわたしを





ふたりで照れくさそうに笑ってるあの場面を
何回も見せてくる



もういいのに
わたしは幸せなんだから



先生、わたしのこと少しでも好きだったことはあった?

ゆりえちゃんとわたし、どっちが本気だった?

あの彼女が赴任してこなかったら、わたしとの未来はあった?

わたしとはやっぱり遊びだったのかな

聞きたいことは今もたくさんある
でももう二度と聞けないのだ



ただ…
元気でいてよね

わたしの人生をかけた人だから
わたしの青春だから

元気でいてくれたらそれでいいから

また夢で会おうね

            おわり

拙い文章を読んでいただき、ありがとうございました

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