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Unlock my locks.

片付けるというのは、「動かす」と「捨てる」というじつに複合的な作業だ。
「動かす」だけならば単なる模様替えに過ぎないけれど、「捨てる」となるとまた話は変わってくる。
これまでも幾度となく取捨選択を強いられてきた、こまごまとしたものたち。
今、手元に残るのは、それらの中からさらにふるいにかけられた選ばれしもの。
要は、もう後がないベテラン小品ばかりなのだ。

そんな中でも、いつもとりわけ手が止まってしまうのが「鍵」である。
どこのどなたかまったく思い出せないそれらは、学校のロッカー用のような薄っぺらいものから、ゼンマイでも巻くのかと思うような武骨な形状のものまで。
それらがいっしょくたに詰め込まれた袋を、居を移るたびに連れ歩いてきた。

もはや何の鍵なのかなどどうでもいいけれど。
どこかでその鍵を待っている鍵穴があるのだと思い馳せると、どうにも切ない気分になってくる。
きっともう、一生彼らが出会うことはない。

もしかしたら鍵をかけたままだっただろうか。
ひょっとして、鍵をかけることから解放されたのに、まだここにいるのだろうか。
鍵と鍵穴。
いやもう本当に、ロミオとジュリエット並みの悲劇を背負っているかもしれない。

そんなじつにどうでもいいことを考えながら、指先はまた、鍵をもとの袋へと押し込めている。
いやいや、これではいけない。
そろそろ、彼らを解放してあげなければ。

それはきっと、毎度追いかけてくる「いつか開けなくてはいけない」という思いに鍵をかけること。



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