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黄金ロード

お酒とはつくづく不思議な飲み物だと思う。
同じお酒でも、ちょっとした気分や、体調、雰囲気なんかで本当に味が変わってしまう。
いや、どうかすると、楽しい時間に置かれたそれはまるで味がしない。
水で喉を潤すかのように、するするといつまでもグラスを傾け続けている。

ところが、心が刺々しいときはまるで、良薬のふりをして近づき、苦々しく舌の上に嫌な味を残す。
その苦さを消そうと、つい盃に手を伸ばしては後悔する始末。

お酒が苦く感じたら、それはもう心を切り替えるか、盃を置くか、どちらかということだろう。

近所に神社がある。
その石段下にはかつての参道を舗装した広い道がゆるやかな坂となって続く。
先日、参道が延びる先の西へ向かったとき。
自転車で下るわずかな夕刻の一時、視界が消えるほどの光に包まれた。
それは驚くほどの光量で、進もうとする道が、本当に目が開けていられないほどの輝きを放っていて。
日常の中にはおよそ存在しないほどの光は、これこそが金色だという色に溢れていた。

もしかすると、かつて誰かがそのように計算してつくった道なのだろうか。
そうとしか考えられないほど、神々しい瞬間だった。

誰かが意図したのか。
偶然の産物なのか。
舌を引き締めるアルコールの甘苦さ。
道の先ゆく者を阻むほどの光。
いずれも、安穏と緩んだ意識にひと粒の黄金を投じるように稀有な時間。
次はいつ出会えるのか。


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