見出し画像

夢が叶う日。

沖縄県立博物館に行った。


数年前からここに来るのが私の夢で、

車を降りて建物を見上げたとき、

まだ夢のなかにいるみたいだった。


二人分のチケットを買って、いざ展示室へ。


沖縄の鉱石、考古学、歴史、生物、民俗学……


どれも興味深いのだが、やはり考古学の前で足が止まる。


縄文時代晩期の土器は、薄く、なめらかで、

大仰ではない繊細な模様がとても印象的だった。


そして貝や骨を使った道具、飾り。


どれもとても美しかった。


子供時代を海のちかくで過ごした私にとって、

貝を使う文化は、特別なことに感じられる。


気がつけば、博物館に来ることに乗り気ではなかった彼も、

足をとめ真剣に展示を見ていた。


私にとってそれはあまり意外なことではない。


歴史は興味がないと言っているけれど、

もともと勉強家の彼なので、私よりも夢中で見るだろうと思っていた。


そう、来る前からわかっていたけれど、やっぱり嬉しかった。


沖縄を好きだと言うならば、

観光地じゃない沖縄の姿も彼には知ってほしかった。


夕飯のとき

「博物館で印象深い展示は何だった?」

と訪ねると、

「亡くなった人の骨を洗う風習があったこと」

と返ってきた。


そうなのだ。

亡くなった人を弔う方法は、土地によって、時代によって、

実にさまざまで興味深い。


私が考古学や民俗学に興味をもったのも、子供のときにエジプトの

ミイラを知ったからだ。


そして今日、彼もまた違う文化に触れて衝撃をうけたのだ、

と思うと不思議な気持ちになって、

こういうことが話せる二人になれたことが素直に嬉しくて、

自然と笑みがこぼれるのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?