Saekichi

更新はマイペースに。 博物館や美術館、遺跡や民俗学が人生の栄養分。

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最近の記事

失敗しても、いいってさ。

伝説の家政婦、志麻さんが…… 「家庭の料理だし、失敗してもいい」ということを話していた。 それを聞いて、たしかになぁとしみじみ思う。 私は自分ひとり分の料理をするのは苦じゃなかったけれど、人の分も作るとなると……妙なプレッシャーを感じてしまい、嫌で仕方なかった。 更に、自分自身が胃腸が弱いということもあり…… 人それぞれ体質が違う、求める栄養が違うということを考えた日には、献立を考えてることさえ苦痛で。半ば発狂しかけていた。 そんな状態でも、なんとか日々、料理を作り続け

    • ともだち。

      小学生から友達の子がいる。 いわゆる、腐れ縁で。 いわゆる、親友で。 一番のともだちと言われたら、真っ先に顔が浮かぶ子。 ある日、彼に「一番の友達はどんな子なの」と訊かれて、返答に困った。 誰よりも親しいということは、誰よりも良いところを知っていて、狡いところも知っている。でもそれをひっくるめて、好きで、大切だから。 それを言葉にするのは難しい。難しいから、とりあえず…… 「しゃべらなければ、可愛いかな」 「とにかく素直な性格だから、性格が悪いと思って会えば、結構良い子じ

      • 母と娘のふたり旅。(茨城県笠間市)

        母との旅は、いつも母の思いつきからはじまると言っても過言じゃない。 ある日「今度の休みに笠間に行かない?」と誘われた。 聞けば笠間では「菊まつり」なるものが開催されているらしい。 菊かぁ…… 心のなかで独りごちる。 菊は身近な花だけど、いつも自分とは縁遠いもののように思っていた。 けれど去年、父が亡くなって、菊に触れる機会が多くなったし、父の友人が手紙に書いてくれた漱石の菊の句が思いのほか心にしみて、次第に菊の花を好きになっていた。 「じゃあ、いこっか」と返事をして、あ

        • 対話する、インド細密画。

          久しぶりに東京の府中市美術館へ。 特別展の「インド細密画」を観に行った。 展示に興味があって行きたかったのはもちろんのことだが、個人的にここの美術館は好きだ。天井が高くて、開放的で、ありがたいことにすごく混雑することはあまりないので……(たまたまかもしれないけれど) 変に身構えずに気楽に行ける。 会場に入ると、インドの音楽が流れていた。 気になる企画展があればあちこち美術館や博物館に行っているけれど、BGMを流しているところってあまりない気がした。 音楽がある空間で絵を観

        失敗しても、いいってさ。

          虫の楽園。

          数日ほど家をあけて帰ってきたら…… 庭がものすごいことになっていた。 いわゆる草ボーボー。 畑のナスの枝が伸びに伸びて、隣のピーマンを容赦なく覆い隠している。 こういう状態になると、もはや、やりたいかやりたくないかではない。 やるしかないと思い、あちこち蚊に刺されながらも黙々と草取りをした。 庭にはたくさんの虫がいて、朝早くからエライ勢いで草取りをするもんだから、とんだ迷惑だろう。 ダンゴムシなんて見たこともない速さで逃げていく。 草取りをしながら、人間が手を加えな

          虫の楽園。

          すごい雲があるなぁと眺めていたら、左下に虹があった。 新しいスマホで最初に撮った一枚がこれなので、ちょっと嬉しい。

          すごい雲があるなぁと眺めていたら、左下に虹があった。 新しいスマホで最初に撮った一枚がこれなので、ちょっと嬉しい。

          古の想像力と、ちいさな野望。

          この夏いちばん楽しみにしていた古代メキシコ展に、ようやく行けた。 人の多さは……そこそこ。 ケースに入っている展示品のまわりには絶えず人がいるので、すいているとはいえないけど、人が多くて見られないほどではなかった。 展示品がどれも独特の雰囲気があり、美しいのは言わずもがな。 どうしてこんなにも表面が滑らかなのだろうと考えてしまう。 土器にしても、まるで陶器のような滑らかさだ。 土の粒子が細かいのだろうか? なにか釉薬を使っている効果なのだろうか? 焼きムラが一切ないのは

          古の想像力と、ちいさな野望。

          鳥の博物館

          ひょんな流れから、千葉県我孫子市にある鳥の博物館を訪れた。 以前から行きたいなぁと思ってはいたけれど、本当に図らずも行くことになって、こんなこともあるのかと少し呆然としたまま入館する。 一階でチケットを購入して、二階の展示室へ。 想像していたよりたくさんの鳥の剥製に圧倒される。 生き物好きではあるが、特に鳥に詳しいわけではないのだけれど…… それでもこんなド素人の私から見ても、鳥が飛んでいる様子や草木にとまっている様子がとても細密に再現されていて、感動した。 剥製が、

          鳥の博物館

          前に流行っていた「麻薬たまご」に今もハマっている。 家にたまごがたくさんあると、ウキウキしながら作るのだが、家族がぜんぜん名前を覚えてくれない。 母は「地獄たまご」と呼び、姉は「爆弾たまご」と呼ぶ。 想像力が物騒すぎる……

          前に流行っていた「麻薬たまご」に今もハマっている。 家にたまごがたくさんあると、ウキウキしながら作るのだが、家族がぜんぜん名前を覚えてくれない。 母は「地獄たまご」と呼び、姉は「爆弾たまご」と呼ぶ。 想像力が物騒すぎる……

          インドネシアの絣織り、イカットを見る。

          東京都墨田区にある「たばこと塩の博物館」で、 インドネシアの絣織りこと、イカットを見てきました。 墨田区といえば、スカイツリーが大迫力で見られるわけですが…… 博物館までは最寄り駅から徒歩10分ほどかかるということで、 スカイツリーどころじゃない。 道に迷わないようナビとにらめっこしながら必死に歩きました。 その甲斐があり無事に到着。 立派な建物に入り、さっそく二階の特別展示室へ。 入った瞬間、空気が変わる。 展示冒頭にある「あいさつ文」を読むと、主催者側が伝えたいこ

          インドネシアの絣織り、イカットを見る。

          父と娘

          最近、わたしは父から何を教えられ、受けとったのだろうと考える。 父は少し変わった人だった。 穏やかで、本や自然を深く愛し、知的な人だったが現代的ではなかった。 どこか古く、暗いなかで爆ぜるたき火の気配をまとっていた。 父のくれた本のなかでも特に気に入っているものに手を伸ばし、 ページをめくる。 久しぶりの読書に、最初はぎこちなく文字をたどっていた視界がだんだんと滑らかになった頃、すっと子どもの自分に戻ったような感覚に陥った。 たぶん、本はわたしの居場所の一つなんだと

          父と娘

          11月の小布施。

          今年2度目の長野県小布施町へ。 着いた日は、見事に雨。 色づいた葉が雨に濡れて下を向き、 すでに落ちた葉はびっしりと地面を覆って絨毯のようだ。 そんななか、向かったのは「日本のあかり博物館」 電灯が普及するまでの日本のあかり(灯火具)の歴史を学ぶことができる。 何度か訪れてはいるのだが、今回は企画展で「神戸のらんぷミュージアムコレクション」を開催していると聞いていたので、楽しみもひとしおだった。 とはいえ、館内に入れば常設展もじっくりと見てしまう。 何度も見ているは

          11月の小布施。

          とある日のこと。

          ふと思った。 忙しい日々のなかで、想像にふけることも忘れていたと。 私の大切な人は、「もしも○○に旅行をしたら」という話が好きだ。 それを、いつも他人事のように聴いていたのだけれど…… そういう想像をするのは、私も好きだったはずと、ある日思い出した。 なんとなく現実に追われて、いつの間にか増やしてしまったやらなければいけないことに、休日も明け暮れて。 ふと想像にふける瞬間を、自分の奥深くへと押しやっていた。 さぁ、そのことに気がついたところで、これからどうしていこう

          とある日のこと。

          新緑の記憶。

          今年の5月下旬、長野県の小布施町へ行った。 駅に降り立ち、途端になつかしさがこみあげる。 数年前までは毎年訪れていたのだから、 地元ではなくても「なつかしい」という感覚になるのは、 わたしにとっては自然なことに感じられた。 行きたいところが数カ所あって、なかでも今回一番来たかったのは 駅から少し離れたところにある「歴史民俗資料館」。 ここは土日祝のみ開館しているため、今までは日程が合わずに 来られなかったのだ。 昔、小学校だったという建物のなかに入ると、受付

          新緑の記憶。

          仲原遺跡。

          沖縄の伊計島にある仲原(なかばる)遺跡。 私はここの存在を知らなかった。 同行者が遺跡などに関心がないので、 遺跡があったとしても寄れないだろうと思い、 沖縄のあちこちにあることは知りつつも調べていなかったのだ。 なので仲原遺跡にたどり着くまで、 「伊計島に行こう」と言った彼の真意に気がついていなかった。 伊計島に着き、車がぐんぐん奥に進んでいって、 畑のなかの細い道を走っていく。 「目的地、この辺?」と助手席から訊いたけれど、 「うーん、まぁ……」となん

          仲原遺跡。

          夢が叶う日。

          沖縄県立博物館に行った。 数年前からここに来るのが私の夢で、 車を降りて建物を見上げたとき、 まだ夢のなかにいるみたいだった。 二人分のチケットを買って、いざ展示室へ。 沖縄の鉱石、考古学、歴史、生物、民俗学…… どれも興味深いのだが、やはり考古学の前で足が止まる。 縄文時代晩期の土器は、薄く、なめらかで、 大仰ではない繊細な模様がとても印象的だった。 そして貝や骨を使った道具、飾り。 どれもとても美しかった。 子供時代を海のちかくで過ごした私にとって、

          夢が叶う日。