第1話 墓とイカれたリア充

 墓参りしている。
 俺は墓にお供え物をする。
 彼女が好きだった俺の詩集を。

 俺の名前はライム。言っておくが詩人としての芸名だ。実の名は忘れたことにする。思えば1年前彼女は不治の病をかかえ自殺しに海外へと旅立っていった。私のことは探さないでと言い残し。旅立つ前、空の墓を残して残されるものが寂しがらないようにと。

「星咲麻里子さん。楽しい思い出をありがとう……。」
 楽しい時はあっという間に過ぎ今あるのは空の墓だけ。奔放だった彼女は今はいない。
 さて帰るかな。俺の詩集読んできっと彼女は爆笑しているだろう。天国では幸せにな。
そんなことを思いつつ僕は墓を後に去ろうとして振り返るとそこには、彼女が生きて立って居るような気がした。いや、生きてるな。
「あれライム?本当に詩集を墓前に備えてくれたんだ?マジで??超ウケるんだけど。マジで、あれ本気にしたの?あんたの詩集読んだら死んでも死に切れないわ。だって。」 
星咲は死んで居るとは思えない機敏さで墓前にある詩集をガバッと手に取り朗読し始めた。

「ライムの渾身の感動作を読んで元気になろう!千円は安いもんだろ?」
 彼女は吹き出すと。
「本当に元気になっちまったわ。どうしてくれるんじゃい。死ぬ予定が狂っただろうが!」と大声で言い。ガハハと品のない笑い方をする。あまりのことにあっけに取られる俺。ええと取り敢えず素朴な疑問をぶつけてみるか?
「その不治の病だったというのは?」
と恐る恐る聞いてみると。
「ああぁ。病気は治った。というか検査ミスだったみたい。」
 おい。
「あ違う違う。私死んだけど、私は私によく似たアンドロイドなんですよ?ほほほほほほほー」
 それを俺が信じるとでも?信じないよな。
「馬鹿馬鹿 。星咲の馬鹿。生きてるじゃんかよー。」僕は大笑いしながら、彼女を小突く。
すると。
「おい、今からヘビーな話言うぜ。俺はな余命1年じゃなくて余命7年だっただけなんじゃい。」
と星咲は茶化して言う。
それを聞いた時僕は笑いながら泣いた。号泣した。嬉しいのか悲しいのか良くわからなかったから。

 


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