第5話 廃墟

麻里子に連れられて診察してもらったという病院に行くとそこには病院らしき建物がありはしたが診察はしてなかった。よくよくググってみるとどうやら経営難でその病院は経営してない。ということがわかる。

「えへへ、病院なかったね。病気も気のせいなのかなぁ。」

と麻里子。

確かにこんな経営難で閉鎖になるような病院の診察は怪しい。だがな一応ということもある。

「麻里子、精密検査してもらえよ?」

「お姉ちゃん、一応もう一度診てもらったら?」

俺と理子の意見は同意見のようであった。今度はこういうことがないように、きちんとした大きな大学病院で診てもらうことにした。万が一にも閉鎖になるようなことはないであろう病院だ。無理やり麻里子を大学病院に連れて行き診てもらう。どうやら精密検査の結果がでるのは1ヶ月のことのようだ。

「1ヶ月か。長い1ヶ月だな。ねえライム。よかったら前みたいに一緒に旅行に行ってくれないかな近場の観光地でいいから?」

それは余命1年の女の子に言われれば断れるような頼みではないのだけど、コイツには色々手を焼かされたからなぁ。どうしたものか。いや余命少ない可能性はまだあるわけだから、ここはのまないといけないのだろうけれども。

手を焼かされたというのは、例えば、男女混浴に入ってイチャイチャしたいとか、死ぬ前なんだから私の理想の男を演じろとか、男女間のわがまま系にはじまり、死ぬ前にこれは食べたいといってウナギやらステーキやら懐石料理やら、贅沢三昧をひとのバイト代をあてにしてせがむ。といったものだった。

「なぁ、死ぬ前のお願いはさ、もう少し控えめにしてくれると嬉しい。でも一つだけなら、俺はお前の願いを俺にかなえられる範囲でなんとかしてみるよ。何かある?」

と恐る恐るたずねると彼女は涙を浮かべながら。

「生きたい。」

と言った。

「俺が神様ならその願いをかなえるところだけれども、残念ながらそれは難しいかな?」

と苦笑すると。

「なんで?神様はいるんでしょ?いるんだったらライムの代わりにその神様がこの願いをかなえてくれないと嘘だよ?」

そういわれてもな。うーん。悩んだ末僕は。

「実は俺は神様なんだ。だから、麻里子のその願いをかなえてあげるよ。」

と絞り出すように勇気を振り絞り言った。実際によく言ったものだ。俺が神であるわけなどないのに。でも、なんとなくコイツは健康で単に不安がっているだけなような気がしたから、安心させたくてつい神様を騙ってしまった。そして僕は結局彼女にまたお泊まり旅行にいくことを了承させられてしまった。だって彼女はあまりに儚げに見え、僕は彼女を現世に繋ぎ止めたくて、だからそうするのが最善に思えたのだ。たとえ、それがとんでもない旅行をすることになろうとも。



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