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【ライブレポート】2022/5/21 山嵐“Painkiller”TOUR Season.1 @ 恵比寿リキッドルーム

山嵐のツアーに行ってきた。豊富なキャリアを誇るトップクラスのミクスチャーバンドであり、日本有数の夏フェス『男鹿フェス』を立ち上げた、ロック好きには今さら説明する必要もないバンド。

でも自分としては初めてのライブ参戦。今回が山嵐初体験だ。

そんな自分が小難しいことをあーだこーだ語っても以前からのファンには釈迦に説法どころの話じゃないので、今回はもうシンプルに初めて観た山嵐のライブの感想をストレートに残そうと思う。

開演時間を少し過ぎた頃、場内の準備も整い、SEに乗ってメンバーがステージに。ソールド公演ということでしっかり埋まったフロアからは、スタート前からその興奮が伝わってくる。

オープニングを飾るのは、「山嵐」という曲。《やってきたぞ山嵐登場》という歌詞で始まる、まさにライブ幕開けにはこれしかないという一曲だ。7人のメンバーがステージに揃い、圧巻のパフォーマンスを繰り広げれば、フロアもそれに応えるリアクションでリキッド全体が一気にトップギアへ。

マスク着用で声も出せない中、手を上げたり飛び跳ねたりしてその興奮や喜びを表す観客たちの盛り上がりっぷりは、(ダイバーこそいないものの)ビジュアル的にはコロナ前に近いものがある。

SATOSHIさん(Vo)もフロアへ積極的に呼びかけていく。コロナ初期、観客側から見ても暖簾に腕押しのように感じた、ステージからフロアへの声かけが今はもう、ちゃんとライブの血となり肉となっているような感覚。

あと少し、もう少しと思わずにはいられない、そんなリキッドの景色だった。

山嵐にとって、コロナになってからは今日が初めての東京でのライブとのこと。SATOSHIさんは「山嵐、東京ガチワンマン。おもっくそ曲やり倒してやろうかと!」と気合十分だ。

また、KAIさん(Maschine)からは、「SNSや画面の中ばっかりに投影するのではなく、生で対面してやりあえることをホントに嬉しく思ってます! 俺たちはSNSじゃなくて曲で伝えたいことを伝えたいと思います!」とミュージシャンとしての矜持を覗かせるメッセージも。

ライブパフォーマンスは常にアグレッシブで、SATOSHIさんとKOJIMAさん(Vo)、ふたりのボーカルが入れ替わりながら次々とリリックを繰り出していく。

また、激しい曲だけではなく、武史さん(Ba)のジャズィなベース、さらにはオシャレなギターフレーズと共に届けられるムーディな楽曲も。

KOJIMAさんのMCでは、「おととい昨日と鬼練した」という言葉もあったが、実は今日のライブ、当初はAA=とのツーマンで組まれていた。直前でAA=サイドにコロナ陽性者が出てしまったため、出演キャンセルとなり急きょワンマンライブに切り替わった、といういきさつがある。

倍とまではいかずとも、大幅なセットリストの変更を数日で対応するというのはかなり大変だったと思うけど、そんな苦労はみじんも感じさせないパフォーマンスの数々は見事としか言いようがない。それこそ苦労が滲んでいたのは「鬼練した」というMCくらいだったのではないだろうか。ちなみに、山嵐と懇意にしているライターさんによると、17年ぶりとなるロングセットでのライブとのこと。

新曲だという「トライアンドエラー」はギターリフも耳心地良く、シンガロングパートもありアンセム感のある仕上がりになっていて、初めて聴いた自分としてもめちゃめちゃテンションが上がる一曲だった。SATOSHIさんも曲終わりに「(いつか)マスク外れたら一緒に歌ってくれ!」と、近い未来にきっと果たされるであろう約束のメッセージを。

キャリア26年を誇るバンドの新曲がカッコいいという、そのことがすなわちバンドそのもののカッコよさを示しているように思う。おそらくは今後のライブでもセットリストのレギュラー候補となりうるのではないか。

「Ride with us」のときには「跳べる奴は全員一緒に、俺と跳ぼうぜ!」と声を上げるSATOSHIさん。「跳べる奴は」と一言入れるあたりに優しさ、気遣いを感じる。体調面での不安から激しい動きはしないという人もいるかもしれないし、まだまだコロナ禍でのライブということもあってより慎重なスタンスでライブを楽しむ観客もいるはず。跳べない奴、跳びたくない奴はそのままでいい、という含みを込めたひと言によって、今日ここにいる観客全員と楽しみたいという思いが伝わってくるようだった。

KAIさんは思い思いに楽しむフロアについて「とてもとても、ちょうどいい節度のフロア感ありがとうございます。我慢なんかしてもらう場所じゃないんだけど、ライブハウスは。
我慢しなくていい場所を守ろうとして、とてもとてもちょうどいい節度ではしゃいでくれてるみなさんに感謝してます」とコメント。

フロア後方から見ていて、まったく同じ思いを抱いていた。我慢というか、マナーを守っているというか。今できる、許される最大限の表現でライブを楽しんでいるのが伝わってくる、そんな今日のリキッドリーム。

伊達に26年やってない。これだけ続けるにはファンの力も必要不可欠、という一面を垣間見るような時間だった。最近、ファンの暴走でライブが強制終了した、というニュースを目にしたばかりだったので余計にそう感じたのかもしれない。

ライブ終盤、SATOSHIさんは「Season.2も今仕込んでいるところなので、その時はかならずAA=も一緒に」と宣言する。

そして「音楽やってて今がいちばん楽しい」とも。これはファンにとってめちゃくちゃ嬉しい言葉じゃないだろうか。

アンコールでは再び新曲となる「涅槃」を披露し、さらに《マウスピース飛ばす一撃ドン ONE TWOかまして脳震盪》というザ・ボクシングな歌詞が印象的でこれまたカッコいい1997年リリースの「BOXER'S ROAD」を演奏。20年以上の時間を軽やかに飛び越える構成で唸らせる。

ラストは「湘南未来絵図」でフロア全員、手を左右に振りながらの盛り上がりで〆て、無事に『山嵐“Painkiller”TOUR Season.1』リキッド公演は幕を閉じた。

ビジュアル的にはどうしても怖さがある強面バンドマンの集まりではあるが、届けられるひとつひとつのメッセージには温かみがあって、でもステージでのパフォーマンス自体は強面ビジュアルに負けないくらい強く激しく、頼もしくて。

1996年に結成した山嵐と、2022年の今日、出会えたことを素直に喜びたい。


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