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【ライブレポート】2023/11/25 少年キッズボウイpre.「少年キッズボウイのお楽しみ会」@渋谷Milkyway

少年キッズボウイの1stアルバム『少年キッズボウイ1』レコ発企画に行ってきた。会場は渋谷Milkyway。対バンは、板歯目にインナージャーニーだ。


板歯目は、彼女たちが高校生の頃からライブを観て応援していたバンド。まさか少年キッズボウイの対バンとして観ることができるなんて、夢のよう。好きと好きが同じステージに立つって最高だ。

少年キッズボウイのGB(Dr)が別バンド時代に対バン経験があり、ずっと交流を続けてついに対バンが叶ったとのこと。一方インナージャーニーはこーしくん(Vo)の希望で対バン決定。彼女たちの曲やビジュアルだけでなく、特にその歌詞が好きらしい。

今回、ライブ当日までの期間、少年キッズボウイのセットリスト当てキャンペーンを実施。さらに当日はオリジナルステッカープレゼント&当選者にはポスター付与と、様々なホスピタリティでもって来場者を迎えてくれた。

そんな少年キッズボウイのことが好きな奴らでガッツリ埋まったMilkyway。それはもう最高に盛り上がった。開演前、そして転換中にはメンバーによるDJも。転換BGMもライブとライブの間を繋ぐ、対バンライブでの楽しみのひとつだが、DJは転換BGMとは少し種類が異なる。ブースには曲を流す「人」がいて、また会場の空気を感じつつ曲の出し入れをしたり、あるいは自らのアクションで盛り上げたりと、ライブ感が生まれるのだ。

先日、DOPING PANDAとSCAFULL KINGのライブに行き、太一くんやCHABEさんのDJプレイを観て同じように感じた。ライブとライブの間にもう一本ライブがある、そんな贅沢な時間もありつつ、いざ開演。満員のフロアに、「中野シャンゼリゼ」でコラボした麦酒大学学長・山本氏の影アナが、トップバッター板歯目の名を告げた。

板歯目

千乂詞音(Gt/Vo)、庵原大和(Dr)、ゆーへー(Ba)の3人からなる、規格外3ピースバンド。めちゃくちゃハードな音とパフォーマンスが大きな魅力だ。

11月13日、20日と代官山で開催された自主企画を観たばかりだが、今日のライブはなんだか新鮮だった。上がる拳や歓声に呼応するように3人のアドレナリン濃度が上がっていくような感覚。

自己紹介がてら、とでもいうように1曲目に「地獄と地獄」の高速歌唱で惹きつけると、千乂の強みのひとつである怒涛の極太ボーカルがフロアを圧倒する。曲者なフロント2名に負けない大和の超絶ドラミングに、ゆーへーの、溢れんばかりの色気をまき散らすビジュアル&サウンド&プレイと、異常なまでに強度たっぷりなトライアングルによる演奏がグングン加速していく。

「歌と歌の間のひと呼吸」で終わらせない、聴きどころたっぷりな間奏もまた板歯目の楽しさであり、とにかく一瞬たりとも目、そして耳をステージから離すことができない。アルバムなどで「捨て曲なし」といった表現があるが(個人的に捨て曲、という言い方は好きではないが)、見逃せない瞬間が途切れることなく最後までずっと続いているようなライブだった。

冒頭のリフから名曲感溢れる「オリジナルスクープ」やサビの気持ちよさやその後の癖アリな展開が楽しい「オルゴール」、終盤に転調を繰り返す鬼ハードな「ちっちゃいカマキリ」など、比較的新しめな曲を並べたセットリストも楽しい。以前から交流のあるGBはSNSで「エバー」「沈む」といった、板歯目のeggsページにもアップされている高校生時代の曲を希望していたが、最新の自分たちを見せつけに来たかのようなステージ。

千乂がMCで、呼んでくれたGBとの関係性や感謝を語りながら、打ち上げを踏まえて(?)「お酒も飲めるようになったので」と告げた時にあらためて、ついこの間まで高校生だったんだな…としみじみしてしまった。

バンドはどうしたってボーカルがいちばん目立つのが常。板歯目も千乂がボーカリストとしてバンドの軸となり、彼女の魂がグッと乗った歌声が光る。同時に、千乂と同じくらいの輝きを放つ大和のドラムとゆーへーのベースプレイもまた、板歯目を板歯目たらしめている欠かせないピース。

縦横無尽に暴れまわる彼女たちが頼もしく思える、そんなステージだった。

1.地獄と地獄
2.芸術は大爆発だ!
3.Ball & Cube with Vegetable
4.オリジナルスクープ
5.オルゴール
6.ちっちゃいカマキリ
7.SPANKY ALIEN
8.ラブソングはいらない
9.dingdong jungle

インナージャーニー

学長・山本による影アナを合図に、本日2組目となるインナージャーニーが登場。音源はサブスクで聴いたことがあるものの、ライブを観るのは初めて。ほぼ予備知識なしで臨んだライブ。メンバーはカモシタサラ(Vo/Gt)、本多秀(Gt)、とものしん(Ba)の3人にサポートドラムを入れた4人編成だ。

板歯目とは打って変わって、こちらはポップなテイストで軽やかにステージを彩っていく。カモシタサラの爽やかな歌声が、情景や心情が浮かぶような歌詞を紡ぎ、あっという間にフロアをインナージャーニーとの旅へと誘う。

ライブでも歌詞の言葉一つひとつをしっかりと聞き取れるかたちで歌うカモシタのパフォーマンスは、楽曲の世界観まで含めてリスナーに味わってもらいたい、というスタイルの表れなのかもしれない。

本多秀のギターソロやとものしんのグルーヴィなベースなど、バンドアンサンブルとしての聴き心地もよく、確かな技術と瑞々しさが同居する不思議な魅力を放っていた。

「少年の心を忘れずに突き進めたらいいなと。少年キッズボウイに捧げます」というカモシタの言葉から「少年」へ。キュンとするようなカモシタの静かな弾き語りから始まり、オープンハイハットによるカウントでガラリと景色を変え疾走感を生み出す様は、まさに少年のような青春感を演出していた。

カモシタの歌声で始まった「少年」に続いて、とものしんのベースイントロに本多秀のギターが絡み合うオープニングが印象的な「少女」へと繋ぐ流れも美しい。こちらは「少年」とは異なり、スケールと深みを感じさせてくれるミディアムナンバーだ。

ライブ終盤にはメンバー紹介を挟み込み、そのまま音を止めずラストナンバー「会いにいけ!」という、オーラスにふさわしい勢いのある楽曲で〆る演出もバッチリとハマっていた。

冒頭、「サブスクで聴いたことがある」と書いたが、彼女たちも今日ここに立つ他のバンド同様、現場ならではの醍醐味を味わうことができる、ライブバンドに違いない。気にはなっているが「サブスクで聴いている」という方はぜひ一度、ライブハウスでインナージャーニーを体験してほしい。

1.クリームソーダ
2.PIP
3.少年
4.少女
5.グッバイ来世でまた会おう
6.ペトリコール
7.ラストソング
8.会いにいけ!

少年キッズボウイ

いよいよ最後は、主役の出番。ステージでの爆発力がすさまじい板歯目、そしてインナージャーニーと、頼もしいライブを繰り広げた2組に対して、トリを務める少年キッズボウイは、いったいどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。

フィンガー5「学園天国」をSEに登場するメンバー。この選曲からも彼らのスタンス、というかノリが伝わってくるというもの。

アキラの「少年キッズボウイはじめまーす!」を合図にライブスタート。1曲目の「スラムドッグ・サリー」は冒頭、きもす(Tp)のトランペットが鳴り響き、これから始まるパーティタイムの幕開けをアピール。続くアキラの「Hello、Guten Tag 、こんばんは、We are the 少年キッズボウイでーす!」というセリフも楽曲とセットになっており、オープニングナンバーとしてこれ以上ない適役だ。

おそらくセットリスト当て企画でも、ほとんどの人が1曲目にこの曲を選んでいたことだろう。

こーしくんもノリノリで「俺ら東京さ行くだ」の一節や「イーヤーサーサー」の合いの手など、青森(?)から沖縄までマッシュアップ歌唱を入れ込んで盛り上げていく。

続く2曲目は一転してグッとムーディで、服部(Ba)のベースが大人の雰囲気を醸し出す名曲「海を見に行く」。歌詞に何度もシャンディガフが登場するから、というわけではないが、気持ちよく酔うことができる一曲だ。

MCで山岸(Gt)は、自分たちが会社勤めしながら音楽活動していることを告げ、「会社員やりながらだからこそ、みなさんと分かち合える何かがある」と話すとフロアからは歓声も。

3曲目は個人的に予想外だった「南池袋セントラルパーク」。そもそも、山岸の言う通り仕事しながらの活動ということもあり、ライブ本数が多いわけでない彼ら。それゆえ「レア曲」という表現がふさわしいかは微妙だが、それでもライブで披露される曲としては比較的珍しい部類に入るのではないだろうか。

続く4曲目は池袋から新宿経由(?)で中野へ…ということで「中野シャンゼリゼ」。中野レンガ坂にある、本日影アナを務めた山本学長の店・麦酒大学とのコラボソングだ。今日のライブ冒頭で、事情があって現場に行けないことを説明していた学長だったが(つまり影アナは録音データの再生)、ここでまさかのサプライズゲストとして登場。なんという裏切り、いやドッキリか笑。学長は音源にも参加しているのだが、今日のステージでも担当パートを歌い、そしてビールの美味しい飲み方をレクチャー。堂々たる仕事ぶりを見せつけるかたちとなった。

ちなみに麦酒大学はビールの味はもちろん、映える“注ぎプレイ”とセットの学長およびスタッフによる口上も名物となっている人気店。中野に来る際にはぜひ足を運んでほしい。
(繁盛店なので予約推奨)

ライブも折り返し、ここで披露されたのは「だってTAKE it EASY」。最新アルバムを2期のスタートとするなら、この曲は1期時代に産み落とされた名曲だ。まさにTAKE it EASYの言葉通り、肩の力を抜いてリラックスした空気がMilkywayを包み込む。

MCを挟んで、これまでの空気を変える「イン・ザ・シティ」へ。かなり初期に作られたという曲で、こーしくんのヒリついた激唱とアキラのコーラスに胸が熱くなる。わちゃわちゃと楽しいパーティソング群の中にあって、異彩を放っていた。

CDという形でアルバムをリリースしたことで、バンドをやっているんだなと実感したという山岸は、今日、会場に足を運んだ観客たちを見て「少年キッズボウイを聴いてくれる人がこんなにいるんだ」と感じたという。そして「バンドをやってて良かった!」と堂々たるコメント。

そんなMCを経て、最後のブロックへと突入する。今の彼らのアンセムとも言える「君が生きる理由」は、ただHAPPYを歌うだけではない、深いメッセージが込められた、少年キッズボウイが贈る希望の歌だ。陽気なメロディをピュアに楽しむ人もいれば、きっとその歌詞に勇気を貰う人もいるだろう。シンプルにして複雑、これぞ少年キッズボウイ。ライブもまさしくピークに到達するかのような熱気だ。

そんななか迎える本編ラストは「最終兵器ディスコ」。曲が始まる前のプロローグとして、こーしくん曰く、人生3回目だというコール&レスポンスを実施。フロアも全力で《愛とラヴを永遠にフォエーバー》と叫ぶ。バッチリ決まった!と思いきや、曲の入りでトチってしまうメンバー。仕切り直して、再びコール&レスポンスからリスタート。こういうところもまた、いい意味で少年キッズボウイらしさかもしれない。

ライブ後に公開されたセットリストで「無限転調Ver.」とあるようにサビがどんどん転調してキーが高くなる、板歯目の「ちっちゃいカマキリ」パターンだ。“転調ズハイ”にでもなろうかという盛り上がりで本編を締めくくった少年キッズボウイ。

すぐさまアンコールに応えてステージに再登場すると、今日最後の曲「ぼくらのラプソディー」を披露した。アキラのラップを引き継いで盛大に歌い上げるこーしくん、という構成もカッコいいが、やはりここにも、表向きは“陽”曲ながら《戦争ゲームを止める兵器がぼくにもあれば…》と昨今の情勢を憂う歌詞が組み込まれており、一筋縄ではいかない。

ライブ自体はまさにパーティ。ステージもフロアも、皆がとびきりの笑顔を浮かべながらこの数十分を思いきり楽しんでいた。「あー楽しかった!」という感想に、会場にいた誰もが共感するだろう。

しかし、油断してはいけない。「わちゃわちゃ」の皮を一枚めくると、そこには過去から現在に至る様々な音楽、そして今を生きる人々への豊かな愛が詰まっているのだ。


1.スラムドッグ・サリー
2.海を見に行く
3.南池袋セントラルパーク
4.中野シャンゼリゼ
5.だってTAKE it EASY
6.イン・ザ・シティ
7.君が生きる理由
8.最終兵器ディスコ 無限転調Ver.
EN
9.ぼくらのラプソディー

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