ほっし~

非日常的な日常を。

ほっし~

非日常的な日常を。

最近の記事

心、ここにあらず。

35歳で若年性認知症と診断されるとは思わなかった。 先週末に信頼している主治医から精神科医としての診断を受けて、治療方針や今後の対応を聞かされてきた。それから数日が経過したいまも、まるで他人事、上の空が続いている。自分から診断を頼んだのに、提示された予見通りの診断を受け入れることが上手に飲み込めずにいる。 症状。具体的に言えば、夢と現実の境界線に分別がつかなかったり、息子の名前が咄嗟に出てこなかったり、注意力の著しい低下、感情をコントロールできない、自分で薬の管理ができない

    • 蝉の抜け殻

      突発性難聴になってしまい、殆どの声が聞き取れなくなったいま、それでもなお、時間の隙間を見つけて私に会いにきてくれる妻子には心から感謝しています。 すべてを把握している妻と違い、現在の父親の病状をある程度でしか理解していない娘。もしかしたら気遣ってくれているのかもと申し訳ない気持ちでいたところ、実際に「私が来れば元気になるもんね」と言われてしまい、子供の成長と思いやりの心が身に沁みました。 病院の隣の公園は噴水があり、木々が生い茂って居心地がいい。茹だる暑さと時折に吹きつける

      • 杜の都

        杜の都で行われている満席のオールスターをワクワクしながら見ている自分は、夕方のニュースを観ながら「オリンピックの無観客は当たり前だよな。1,400人も感染者がいたら大変だよ」なんて妻とやりとりしていたのです。 自分の都合で自分の匙加減で如何に考えているかを実感しました。 きっと同じことを考えているひとは多いはず。仙台と東京で感染状況は違うし、コロナ渦の状況が違うけれど、自分の浅はかさには辟易としましたね。 悶々とした気持ちがおさまらないので、たけのこの里をいっきに食べてリフレ

        • 外出許可当日

          朝は5時に目が覚めた。手足の末端から徐々に動かして、今日は何処が痛いのか、辛いのかをゆっくりと確認していく。そして自分の心と真剣に会話する。今日はどうだ、外出できそうか、OK、それならば準備をしよう。 今日は深く長く眠れたので、調子は良かった。病院のエントランスまで歩いてひとりでストレッチをする。守衛さんに挨拶して部屋に戻る。 7時に朝食をとり、外出時間に設定した10時までゆっくりと過ごした。看護師さんが部屋にやってきては「今日は頑張ってね」「ゆっくりしてらっしゃい」と肩を叩

        心、ここにあらず。

          外出許可前日

          予想に反して体調が回復してくれない。この治療をしたら、この経路をとって回復していくというガイドラインが朧気に解ってきてたのですが、今回はイレギュラーだった。こういうときはとにかく無理をしない。疲れることはしない。ベッドに横になるという行為が最上であると考える。無理して気持ちをあげようとすると明日の外出許可に響いてしまう。 そう、明日は外出許可なのだ。誓約は沢山あるけれど、家に帰れるだけで、妻と会えるだけで、猫に顔をうずめるだけでいいのだ。そのささやかな幸せを手に入れるために、

          外出許可前日

          絶不調

          今日は最悪だ。東京が緊急事態宣言になったことで病院の方針が変更されて、明後日15日の外出許可以降は、外出許可も外泊許可もおりないことが決定されてしまった。精神的なショックは相当なものだ。 そして「最悪」という言葉を使うこと自体、緊急事態宣言の重さを希薄に感じていることの証左を自覚した。 外出許可の頻度をあげながら、外泊許可もとれるようになり、8月末までに退院する計画を主治医とたてた矢先での変更。 そして主治医の都合上、中途半端な形で終わってしまった治療のストレスと、天気頭痛も

          服用

          朝食後に10錠と就寝前に18錠。今現在、私が生きていくうえで欠かせない薬の数だ。おかげさまで、この難解なパズルは最善手に近い組み合わせで、清く全身に沁みわたり、最悪ではない日中と、安眠に近い睡眠をもたらしてくれる。 週に2回。薬剤師と1時間くらい会話をする。今現在の量を飲み続けることは寿命を縮めることに繋がる。そのためには減薬しても今と変わらぬ体調を保持できる薬の組み合わせを探らなくてはならない。ですが。この薬のおかげで虫が這うような痛みが和らいでいるんで減らすことはできませ

          僕の全ての半分

          精神を病み、内臓をやられて、既に満身創痍だというのに、突発性難聴というおまけがついてきた。意思疎通がとれないストレスは相当なもので、入院生活は恐らく長くなるだろうし、緊急事態宣言が発令されれば家族と会える機会はもっと減るだろう。何処まで神様は私に試練を与えれば気が済むのか底がみえない現状に辟易としています。 今日は家族のことを書く前に、Twitter・YouTubeでいつも励ましてくださる皆様、そして流れついて興味を持ってフォローしてくださった皆様に、感謝の気持ちを伝えたい

          僕の全ての半分

          女房に片思い~23~

          ひとりの後輩が彼女になり、結婚して彼女は妻になり、出産して妻は母親になっても、私が妻に抱く気持ちは、いつだってずっと、片思いだった頃の気持ちの延長線上にある。この子のことをもっと知りたい。もっと一緒にいたい。抱き締めてみたい。あぁ。眠れない。そんな気持ちをお付き合いしてから15年間経っても性懲りもなく抱き続けている。 私の座右の銘。【女房に片思い】という言葉は、妻を思う気持ちは片思いだった頃と何ら変わらず増していることを強く顕している。 目が覚めて「おはよう」とコーヒーを淹

          女房に片思い~23~

          初めてのラーメン屋~22~

          ラーメン屋でラーメンを注文をする。程なくして熱々のラーメンが出てくる。豪快に麺を啜るひと。レンゲで掬ってスープから始めるひと。色々な食べ方があり、畏まった礼儀作法はないけれど、妻と初めて行ったラーメン屋で私は驚かされたことがある。 私の実家、そして妻が通っていた大学は、大学から専門学校までが乱立する学生街の裏に位置し、大通りにでるとそこはラーメン激戦区であった。地方で成功をおさめて満を持して新しいラーメン屋が出店する。大通りに面した好立地。しかし熾烈なラーメン戦争に勝ち残れ

          初めてのラーメン屋~22~

          ゴム婚式~21~

          短い外出許可がおりたので妻とふたりだけの昼食を楽しんできた。娘は幼稚園。息子は保育園に預けて、私とふたりだけの時間をつくってくれた。ふたりぼっち。長男は里帰り出産だったので、ざっと計算しても約1年ぶりのふたりだけの外食でした。 子供がいるとなかなか目を離せないし、会話はいつも子供を軸としてまわるから、夫婦の会話をするのは子供達が寝静まった夜遅くになるし、その時間は薬の副作用で私がフラフラしているので、こうして肩の力を抜いて日中に会話できたことが本当に嬉しかった。 他愛もない

          ゴム婚式~21~

          お酒との距離感~20~

          私はお酒が苦手だ。お酒を楽しむ友人との時間を共有することは嫌いではないけど、無理にお酒を飲んで身勝手にクラクラするのは恥ずかしくて嫌いだ。業界にいた頃は付きあいのお酒を嫌というほど飲まされてタクシーに押し込まれたこともあったし、酩酊状態の先方を介抱したことも幾度となくある。だから醜態を曝してまでお酒を飲む楽しさがなかなか理解できない。いまは病気のせいもあって禁酒となっているが、恐らくほろ酔い1本で充分に気持ちよく眠れるくらいお酒は弱い。 一方で妻は人並みにお酒を楽しめる女性

          お酒との距離感~20~

          どうせなら同棲~19~

          長く一緒に生活していると、相手の好きだったところが、自分でも気づかないうちに嫌いに変質していたりする。例えば「ご飯を美味しそうに食べるところが好き」と結婚前には言われていたのに、健やかなる時も病める時もと誓ったはずなのに「ご飯だけは一人前以上食べるのね」なんて嫌味を吐かれて意気消沈しすることもある。私はそんな友人をビュッフェに連れて行き、おおいに慰めたことがある。 そういう点では結婚に踏み切る前に同棲期間を置くことは、世俗的な目は一先ずおいといて、決して悪いことではないよう

          どうせなら同棲~19~

          甘味と塩味~18~

          甘いものを摂取しないと恐らく死んでしまう親友がいる。1月末から2月にかけて、サロンデュショコラの期間は互いの家の冷蔵庫がチョコレートで埋め尽くされる。まさに恍惚。普段は物欲とは離れ離れの生活を送っている私も、この期間はお金に糸目をつけなくなる。正月を過ぎ、自分の誕生日を超えたあたりから、脳の50%はチョコレートで満たされて、たまに溢れる。 業界の人間だったので有名人と写真を撮ることを忌み嫌っていたけど、来日したショコラティエやショコラティエールとだけは、チョコレートが溶けるほ

          甘味と塩味~18~

          遅れること、待つこと~17~

          完璧な人間なんていない。私なんて身体の傷に比例して欠陥だらけの人間だ。そして大好きな妻にも、少なからず、いや、たったひとつだけの欠点がある。いまは年月を重ねて、その欠点すら愛せるようになったけど、妻には遅刻癖があった。 会社や幼稚園の送迎など遅刻が許されないときでも、いつもギリギリのラインを攻めているし、対象が私になると15分程度の遅刻は、彼女の概念では遅刻に含まれていなかった。 私は江戸っ子3代目。遺伝子レベルでせっかちな性格だ。そのうえ放送作家出身。締切や納期のせいで否

          遅れること、待つこと~17~

          携帯電話~16~

          お付き合いを始めてから11年間。長女を出産するまで、互いに携帯電話のロック機能を使用したことはなかった。疚しい気持ちを持ちあわせていない証左なのか。信頼関係の可視化なのか。トイレやコンビニに行くときや様々なシチュエーションで、妻に携帯電話を預けて出掛けることもあった。妻は承諾なく他人の携帯電話を覗き見るような人間ではない。その安心感があるから渡せることに躊躇はなかった。 そんな妻も長女が生まれてからロック機能を使用し始めた。「娘が携帯を触って誤作動させたら大変だから」という

          携帯電話~16~