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【読む前に読んでほしい】芥川賞受賞作品:ハンチバック

こんにちは、ゆきのです。
海外生活が長くなると、原点回帰というか、やたら日本文化を摂取したくなるというか。
シンガポールの本屋では三島由紀夫や川端康成、古事記なんてものまでロングセラーだったし、中国では夏目漱石と芥川龍之介がやたら人気。

もともと年間100冊以上の電子書籍でポチポチ買っては読む私です。
海外生活って、1年目は観光気分でワクワク楽しめて、2〜3年目で慣れきって、4年目以降はだるだるに。
他言語も異文化も、「刺激的で楽しい!」とも言えるけど、逆から見たら「部屋から一歩出た瞬間、全方位ビシバシ刺激しんどい」ともなるわけです。

というわけで、平日夜の時間帯や休日は家にこもってひたすら読書が最適解。
ノンフィクションとかミステリー小説とか選べば刺激的な読書体験になることもあるけど、それって想定の範囲内なので、ほどよい低刺激が堪能できます。
なかでも最近のイチオシは「聴く読書」でおなじみのAudibleです。

平日ひたすら後回しにした家事のおともに、スピーカーや耳をふさがないイヤフォンで、小説、語学書、ビジネス書を聞き流し。苦手な家事でもそもそ両手を動かしていても、空いてる両耳で読書がはかどるのもいいですね。
よく考えたら紙の本でも電気書籍でも、手も目もふさがるし、ページめくらないと進まないので。
ながら作業にもばっちりAudible。だいたい無料セール期間に聴きまくって解約したりとか、無料じゃなくても半額セールもたまにあるので、正規料金で使用したことはあまりないような。

無料登録はこちらから

そんな無料で聴いてみて今年イチおもしろかった1冊、その名も「ハンチバック」。
ご存知の方も多いと思います、今年の芥川賞受賞作にして話題の衝撃作とか。

できれば、ここで一度、ぜひ一度! 無料で一気に聴けるので、ネタバレや前情報いっさいナシのまっさらな気持ちで!
この記事を読む前に、「ハンチバック」まず読んでほしい。

ここから下の部分は、直接的なネタバレは含んでいないのですが、前情報がいろいろあるので、ご注意ください。
私は前情報なしで「芥川賞受賞作品なんだー、とりあえず読んで(聴いて)みよ」と軽い気持ちで入ってズドン、読み終わって「え! なにこれ!」とやっと情報収集はじめてさらにズドドーン、ときました。

よろしいですか?

それではー

参りましょう!
まずは概要から。

【第169回芥川賞受賞作】
私の身体は、生き抜いた時間の証として破壊されていく。選考会沸騰の大問題作!
「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
井沢釈華(しゃか)の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす——。

2023年の芥川賞受賞作品「ハンチバック」は、その冒頭から終末まで強烈な印象を与えてくれる作品でした。なにがすごいって、導入からズドンときて、中盤からじわじわと加速して、どうなるのコレーとハラハラで迎える終盤はしんと静まり返った感じ。

まずは冒頭の導入。非常に強烈で、作品の世界観に引き込まれました。一気に物語に引き込まれるって、読者にとっては最高の体験ですよね。作者が文章を通じて読者を作品の中に引きずり込む力強さは、この作品の魅力の一つだと思います。

次に、中盤で登場する一文にもまたガツンとやられました。
「紙の本を読めることは贅沢。目が見える、本が持てる、ページがめくれる、読書姿勢が保てる、書店へ自由に買いに行ける」
この一文ですよ、ふおおお。
自分にとって当たり前の毎日の読書が、こんな目線で切り取られるなんて。この言葉が示すように、紙の本を読むことは実はたくさんの工程と行動力の賜物なんだと気づかされました。
私みたいな読書が好きな人にとって、これらのことは当たり前のことかもしれませんが、この作品を読んで(聴いて)、ある種の特権性を有する人にしかできない行動なんだと思い知らされました。

終盤は本当にハラハラしっぱなしで、「これ、オチどうなるの?」とラストまで一気読み。
物語の緊張感が最高潮に高まってからの、語り手が変わってひっそりと終焉するラストシーンは、個人的に好きです。ラストシーンの静けさが、物語全体を引き立てていると感じました。
「ラストシーンがちょっとよくわからない」という審査員の声があったみたいですが、全て伏線回収、すみずみまでスッキリ明快に語り尽くして終わるラストよりも、読み手の解釈に委ねられるちょっと余韻が残るような静かなラストが私は好みです。

「冒頭からパンチ効いてるなー」と一気に引き込まれた本作品。読み終えた感想は「これを芥川賞受賞作品に選出した審査員も、またパンチ効いてるなー」ということです。
作品が読者に対して問いかけ、考えさせる力があり、社会的なテーマにも触れていることは、文学作品において非常に重要な要素ですよね。

なお、今回の読書感想文は友人ししもんとのコラボ企画でして。
私が一方的に「読んで、いいからとにかく読んで。話はそれからだ」とオススメして読んでもらって、やいのやいの感想を言い合ったあとに「これ、お互い記事にしようぜー」「いいねー」という経緯があります。

これがまたおもしろかった。
というのも、ししもんと私の視点や感じ方、物語の解釈が、まっったく一致しないの。
性別や性格の違いはもちろんあるにせよ、「同じ本読んでここまで違うものが見えるんだなあ」と、またひとつ新たな感覚が芽生えました。

ししもん視点で読み解く「ハンチバック」読書感想文はこちらから。



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