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お稽古場探訪⑪【武田伊左 先生】文京区の稽古舞台

宝生流能楽師の先生とお弟子さんに
能を「習うこと」の魅力をお話いただきます。

「能を習ってみたいけど、誰に習ったら良いか分からない。
先生の雰囲気を知りたい。
稽古場の情報を教えてほしい。」

という方はぜひご参考にどうぞ!

第11回目は
武田伊左(たけだ いさ)先生です。
東京都文京区でのお稽古についてお話を伺いました。

■武田伊左 Takeda Isa
シテ方宝生流能楽師
平成2(1990)年、東京都文京区生まれ。武田孝史(シテ方宝生流)の長女。2000年入門。19代宗家宝生英照、20代宗家宝生和英に師事。初舞台「草紙洗」子方(2000年)。初シテ「吉野静」(2013年)。

──伊左先生の稽古場情報を教えてください。
東京都文京区(有楽町線の江戸川橋駅より徒歩約8分、丸の内線の茗荷谷駅より徒歩約10分の場所)でのお稽古は朝9時以降、夜は20時頃まで、土日含めてどの曜日でもお稽古できます。

東京以外ですと群馬県太田市や宮城県塩釜市・多賀城市、千葉県木更津市・流山市にもお稽古場がございます。新たに要望があればその土地に伺うようにしています。

基本的には月2回で、1回のお稽古で謡と仕舞の両方を受講していただいております。ご希望に合わせて月1回、月3回と回数を変更したり、謡だけ仕舞だけとご自身のライフスタイルや好みに合わせてカスタマイズしていただくことも可能です。

文京区の稽古場の様子

──稽古場の特徴を教えてください。
お越しいただく方のご都合に合わせて日時を調整できるので無理なく続けていただけると思います。
能はどこでもお稽古できるのが良いところで、和室でもできますし、ちょっとしたスペースがあったら謡も舞も練習できます。
お声かけいただけたら出張稽古もしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。

今週末には発表会があるので、今月は舞を習っている方は宝生能楽堂の本舞台でお稽古しています。

能「半篰」
仕舞「紅葉狩」/「猩々」

発表会では独吟、素謡、仕舞、舞囃子、能、様々な形式での発表があります。
10月29日に宝生能楽堂で行われた喜宝会(父・武田孝史の同門会)・喜祥会(武田伊左の同門会)はこのような感じになりました。

能「半篰」©︎吉越スタジオ
素謡「土蜘」 ©︎吉越スタジオ


──お稽古で大切にされていることは何ですか。

もちろん楽しんでいただくことが一番ではありますが、同時に新たな発見や達成感を味わっていただくことを大切にしてきます。
段階に合わせた細かいアプローチの仕方で、次のお稽古や発 表会までといったように、必ず目標を持ってお稽古してもらうことを意識しています。

──先生の今後の公演情報を教えてください。
12月3日(日)に「武田孝史 古稀記念公演」があります。父の武田孝史が11月で69歳になりますので、数えで古稀の記念公演をすることになりました。渋谷のセルリアンタワー能楽堂で行います。父が「石橋」の白獅子を勤め、私は赤獅子の披キ(※)をさせていただきます。
※宗家の許しを得て特別な演目を演じること。

父と連獅子をやることは私の小さい頃からの夢でした。挑戦させていただけることにワクワクしております。ぜひたくさんの方にお越しいただければ幸いです。

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🌸武田孝史先生の「推し面」についての記事も掲載中です。


──これから能を習ってみたいと考えている方にメッセージをお願いします。

能は難しそう、敷居が高いと思われることもありますが、まずは体験に来ていただけたらと思います。体験をしたら必ず入らないといけないというわけではなく、体験だけで終わる方もたくさんいらっしゃいます。生涯の趣味になる方もいれば、能を観るのが楽しくなったと言ってくださる方もいらっしゃいます。達成感や自分の中での気づきを大事にできる場を目指していきますので、ぜひ気軽にお越しください。

🌸武田伊左先生の稽古体験や
お問い合わせはこちら

メールアドレス:takeda.kishokai@gmail.com



■伊左先生のお弟子さんにインタビュー

伊左先生のもとで能を習われているご夫婦にお話を伺いました。

──お稽古を始められたきっかけを教えてください。
奥様:歌舞伎を観に行ったことはありましたが、能について何も知らなくて、結婚前の主人と当時、仕事でご一緒していたときに、能を観に行きませんか?と誘われたのがきっかけでした。

ご主人:私は東京大学で、大手企業の会長や社長らが集まった、デジタル社会の未来を考える研究会を主宰していたのですが、未来の可能性を洞察するときに、650年以上続いている日本の伝統芸能の能から多様で深淵なヒントを得ることができると考え、海外でも活躍されている能楽師の伊左先生に登壇いただきました。
研究会では周囲に強く能を勧めておきながら、自分自身が入門すらしていないのはどうかとの思いから、もっとも連れて行きたい人(現在の妻)をお能鑑賞に誘い、その後ふたり一緒に伊左先生に師事を仰ぎました。

伊左先生:その当時、ご主人に「能を習ってみませんか?」と聞いても「いや、僕は…」と断られていたんですけど、あるとき急に「能を習ってみようと思うんです。実はある女性が興味を持ってくれて…。」と話してくださいましたよね。


──最初に観た能の印象はいかがでしたか。
奥様:私が最初に観たのが伊左先生の舞台で、そのときは何がなんだか分からなかったんですけど、すごく美しくて惹きこまれたのを覚えています。伊左先生と私だけの空間のようで、時が止まった感じで見入ってしまいました。こんなに美しいものが日本にあるなんて、本当に良い国に生まれたなとか、いろいろなことを考えました。
ずっと前から日本の伝統的なもの、例えば茶道とか、何かやりたいなと思っていたのもあって、能を習ってみることにしたんです。

──習い続けている理由は何ですか。
奥様:去年の6月くらいから月1回習っていますが、楽しいので続けています。私はすごく飽き性なんですよ。なので、楽しくないと続けられなくて、私が楽しめるものに能がハマったという感じです。
もともと、新体操やバドミントンなどの身体を動かして覚える習い事をしていました。しばらく習い事から離れていましたが、能をやってみたら身体で覚えることを久しぶりにできるのが楽しくて。

あと、最近思っているのは、褒められない環境で習えるのがすごく居心地良いです。私はお世辞を言われることが嫌で、伊左先生のお稽古ではあからさまなお世辞はなく、その空間が生まれて初めてだったので、とても心地いいなと思います。


──先生のお稽古の雰囲気はどのような感じですか。
奥様:伊左先生の目を見ると、集中力がとても高まります(笑)。先生のお稽古モードと、普段のギャップがすごいです。

ご主人:私の場合は家内より相当下手なので、間違いがあるたびに先生から「ここが違います。」と言われ、大きく間違うと「うんんっ」と言われます。結構厳しいです。

伊左先生:謡いにくい箇所があって、それを家族で練習して来てくださるんですよね。

ご主人:そうなんです。家族が完全にその難しい箇所を覚えていて、録音した先生の謡を聞きながら私が練習していると、家族が伊左先生の言い方を真似して「うんんっ」と注意するので、私はそのたびにビクッとしています(笑)。


──習って良かったことを教えてください。
奥様:趣味というか没頭できるものができたことで、生活にメリハリがつきました。趣味がずっとなくて、「⚪︎⚪︎オタク」にもなれなくて、ようやく夢中になれるものが見つかったので嬉しいです。
この稽古場にいるときは背筋がぴんっと伸びて、きりっとするので、そういう時間を持てるのが良かったことですね。

──発表会での思い出を教えてください。
奥様:着物を着られることもすごく楽しいです。

ご主人:呉服売り場の人に相談して、能の発表会で使うことも伝えて、いろいろ見せていただいて購入しました。着物ってなかなか着る機会がないですし、ましてや訪問着を買う機会はめったにないですので、見せる場ができるのは嬉しいです。

奥様:発表会は今年の4月が初めてだったのですが、着物が少し長くて、自分の番が始まってすぐに着物の裾を踏むということが起きました。舞っている間にも3回ほど踏みました。踏むたびに頭が真っ白になって、正直その記憶しか残っていないです(笑)。これから発表会の回数が増えていくにつれて、どのような景色を見られるかが楽しみです。

伊左先生:周りからみたら動揺は全く感じられなかったですよ。

ご主人:家内も私も、土壇場で盛り返すというか、本番になると集中してリカバーできる才能があるのかもしれませんね。

──周りで能を習ってみようかと悩まれている方がいたらどのようにお声がけされますか。
奥様:まずはお稽古体験にどうぞ!観るのと自分がやるのってまったく違うんですよね。実際にやってみるとすごく一つ一つの動作は地味なのですが、全身で集中して、気づけばとても肩が凝っていました。お稽古では、普段使わない筋肉を使いお能への理解が身体知になっているので、お稽古体験を1回しただけでもその後の能の観方が変わり、親近感がわき、能がより近くになるのだと思います。

ご主人:僕はビジネスパーソンとして多くの企業人と接点がありますが、その中で能の話をよくしています。日本企業が世界をあっと言わせるようなビジネスを立ち上げたいのですが、発想法としてお能がすごく参考になると主張しています。
例えば「余白」。何もかも詳細に提供するのではなく、聞く人観る人に理解の「余白」をあえてつくることで、味わいをもたらしている。抽象化することで人の考える余白をつくり、聞き手から思考を引き出す。音符のように何もかも余さず表現することを良しとする欧米の方が余白の価値にリスペクトすることがあります。
お能から得られる視座は多く、世界に向けて画期的な仕事をしたい人にはぜひお能を観てほしいです。そして、それをより理解するためにちゃんとお稽古をつけていただくのをおすすめします。



インタビューにご協力いただきありがとうございました!


インタビュー日時:10月23日(月)、東京都文京区の稽古舞台にて。







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