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能楽、海を越える②-1【佐野玄宜 先生】公演編

宝生流能楽師にインタビュー

🌏能楽、海を越える✈️

海外公演を経験された先生方に
海外で能はどのように受け入れられているか、
公演から学んだことや気づき、苦労したことなどをお話いただきます。

また、観光編として、能楽師がおすすめする観光情報も掲載していきますので、
ぜひ今後の旅のご参考にどうぞ!

第2回目は
佐野玄宜(さの げんき)先生です。
韓国での公演や、金沢の姉妹都市について
お話いただきました。

■佐野玄宜 Sano Genki
シテ方宝生流能楽師
昭和56(1981)年、東京都文京区出身。佐野由於(シテ方宝生流)の長男。1986年入門。19代宗家宝生英照、20代宗家宝生和英に師事。初舞台「鞍馬天狗」花見(1986年)。初シテ「小袖曽我」(2007年)。「石橋」(2014年)、「道成寺」(2015年)、「乱」(2018年)を披演。学習院大学、椙山女学園大学非常勤講師。國學院大學宝生流能楽研究会を指導。


──海外公演はどの国でされましたか。
2005年に韓国のチョンジュ(全州)とソウルに行きました。チョンジュは文化財がたくさんある歴史的な街で、金沢の姉妹都市に登録されています。
その時も両市の交流を目的とした公演で、父(佐野由於)が団長でしたので、弟(佐野弘宜)と一緒に参加しました。
最近は家元にご一緒させていただいて香港に何度か行っています。

──チョンジュでの公演はどのような内容でしたか。
能と同じくユネスコの無形文化遺産に登録されているパンソリ(※)の演者たちと一緒に企画して行いました。能としては「船弁慶」や「胡蝶」などをやりました。私は舞囃子「高砂」を舞ったように記憶しています。

※パンソリとは:歌い手と太鼓の伴奏者の二人だけで演じる韓国の伝統芸能。

チョンジュでの公演パンフレット

──韓国のお客様の反応はいかがでしたか。
すごく興味を持って、いろいろと質問をしてもらいました。
日本人にとって、能は日本語だから分かって当然のように思いますけど、実際には何を言っているかよく分からないから退屈になって眠くなりますよね。
外国の方は最初から分からないものとして聞いていると思うので、フラットな目で前のめりになって観てもらえた気がしました。言葉だけでなく、装束の綺麗さなど、いろいろなところに注目してくださったように思います。

──海外公演をやって苦労したことはありましたか。
道具や持ち物がいっぱいあって、運んで準備するのが大変だった記憶があります。
当時、私は大学院生だったのですが、若手が少なく、楽屋もまだそれほどよく分かっていない状況だったので苦労しました。
家元はお忙しい中でも弾丸ツアーのように海外に行って公演を企画されてすごいと思います。私には真似できないですね。

──海外公演を通して気づいたことを教えてください。
どうしても日本の中で考えがちですけど、これからは外国に出て行って、日本の文化として伝えていかないといけないし、海外に行ったからこそ生まれてくるものがあると思います。
日本だけでやっても行き詰まるところもあるはずなので。
私はチョンジュでの公演は2005年以降できていないですが、今でもパンソリ関係者と交流を続けています。3年前には新型コロナで行き来するのは難しかったので、オンラインミーティングをして、お互いに能とパンソリを紹介して、これから未来に伝えていくために、どのようにアプローチしていくべきか話し合いました。

韓国の青年団作心(ザクシン)とのオンライン交流


──金沢の姉妹都市のお話がありましたが、金沢は海外との交流が盛んなようですね。

金沢は世界の7つの都市と姉妹都市の提携を結んでいます。文化や歴史など、金沢と似ている都市が選ばれているみたいですよ。

最初の海外公演は私が生まれた1981年、ベルギー・ゲント市での公演だそうです。祖父(佐野正治)の最後の舞台は1987年ハワイ大学での「綾鼓」だったと聞いています。

最近ではアールヌーヴォーの街として有名なフランスのナンシー市と金沢が姉妹都市提携50周年になりました。
ナンシー市での記念式典に合わせて、能楽や金沢の伝統文化を生かした交流事業が行われたそうです。ナンシー美術館には能面がいくつかあるようで、金沢の能面師の後藤祐自さんが現地で修復の指導をされました。

ナンシーでの後藤先生の講演


──先生の今後の公演情報を教えてください。

2024年2月17日(土)の宝生会定期公演において「小塩」のシテを勤めます。それほどポピュラーな曲ではなく、ちょっと渋めで、通好みな演目です。
前半は在原業平が桜の花を持ったおじいさんとして現れて、後半は本来の姿で舞を舞うというきれいな曲です。おじいさんですが業平の化身なので、全体を通して品のある感じをうまく出せたらと思っています。
大河ドラマもあって平安文化にスポットが当たっているかなと思うので、たくさんの方に見ていただけたら嬉しいです。


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──読者の皆様に向けてメッセージをお願いします。
金沢の場合は姉妹都市との交流ということで海外公演ができていますが、現地とのコネクションがある人がいないと公演を企画することは難しいです。海外にはまだまだ可能性があると思うので、日本の文化を海外に紹介したい!という方がいたら、ぜひ声をかけていただければ大変ありがたいです。



インタビューにご協力いただきありがとうございました!


インタビュー日時:1月18日(木)、宝生能楽堂稽古舞台にて。


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