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お稽古場探訪③ 関東宝生流学生能楽連盟 早稲田大学【當山淳司 先生】葛西舞台

宝生流能楽師の先生とお弟子さんに
能を「習うこと」の魅力をお話いただきます。

能を習ってみたいけど、誰に習ったら良いか分からない。
先生の雰囲気を知りたい。
稽古場の情報を教えてほしい。

という方はぜひご参考にどうぞ!


第3回目は
関東宝生流学生能楽連盟を特集します。
関東の大学の宝生流能楽サークルの集まりで、普段はそれぞれの稽古場でお稽古をしています。

今回は當山淳司(とうやまじゅんじ)先生が指導する、早稲田大学の早稲田宝生会に代表で
葛西舞台での稽古についてお話を伺いました。

▪️當山淳司 Toyama Junji
シテ方宝生流能楽師
昭和57(1982)年、東京都生まれ。
當山孝道(シテ方宝生流)の長男。1987年入門。
19代宗家宝生英照、20代宗家宝生和英に師事。
初舞台「鞍馬天狗」花見(1987年)。
初シテ「花月」(2008年)。「石橋」(2017年)、「道成寺」(2018年)、「乱」(2021年)を披演。


──當山先生の稽古場情報を教えてください。
僕のお弟子さんたちには東京の葛西にある自宅の舞台で教えています。自分の予定が空いている日とお弟子さんの予定を合わせて稽古日を決めています。

早稲田宝生会の稽古は、コロナ前は毎週水曜日に早稲田大学構内でお稽古していたのですが、コロナ禍になって大学での手続きが難しくなり、学生たちは移動が大変かと思いますが、葛西舞台に来てもらっています。

──この稽古舞台ならではの良さは何ですか。
周りが壁で囲まれているので狭く感じられるかもしれないですが、本舞台と同じ大きさになっています。
また、ここでは時間の制約や、施設を借りる場所代などの心配が一切ないので、お弟子さんの都合で来られなくなったときやお稽古の時間が遅れる場合に、柔軟に予定を変えられるというのも一つのメリットかなと思います。

──當山先生の、葛西舞台でのお稽古で大切にされていることは何ですか。
今はカルチャーセンターみたいに大人数を教えるお稽古の方法もありますが、ここでは基本的に一対一で稽古しています。
お弟子さんによっていろいろなタイプの方がいます。僕のお弟子さんは優しいのがいいとか、怒られないのがいいという方が多いですが、そこはアメと鞭を上手に使い分けています。

昔からのお弟子さんには稽古で怒られないと稽古を受けた気にならないという方もいまして、「はい。いいですよ。」と認めてしまうと、本当にこの先生は自分のことを愛してくれているのかなと思う人もいるみたいなんです。
塾で例えるなら、その人に合わせたカリキュラムを考えながらやっている感じですね。

──これから能を習ってみたいと考えている方にメッセージをお願いします。
全国各地に、宝生流の能楽師の稽古場があります。どのような先生かは稽古を受けてみないと分からないため、体験してみてこの先生合わないな、と思ったら他の先生のお稽古を見学に行ってもいい。お稽古事は能に限らず、まずは一回やってみるのがいいと思いますね。


【おまけ】
當山先生が「受け継いできたもの」と「私の推し面」についてご紹介しているこちらの記事も併せてどうぞ!


當山先生のお弟子さんにインタビュー

■今回お話を伺ったお弟子さん
早稲田大学に通う2年生。早稲田宝生会には1年生のときに入部し、それ以降、當山先生に稽古をつけていただいている方。

──お稽古を始められたきっかけを教えてください。
當山先生:僕は聞いてない方がいいかな…(笑)。
お弟子さん:先生に聞かれてまずいことは少しもないので大丈夫ですよ(笑)。
私は大学に入ってから能のお稽古を始めたんですが、大学に入るまでは、教科書に能と狂言が古典芸能としてあると書いてあったことくらいしか知りませんでした。
一昨年、早稲田大学で宝生流の佐野玄宜先生が授業をされていたのですが、そちらで能の「羽衣」を実際に舞って謡う体験をして、興味を持ち始めました。

──習い続けている理由は何ですか。
実際に舞や謡をやっていくと、昔と繋がったような感じがするんです。昔の人が考えていたことを感じられる気がして、それがすごく面白いなと思いました。

──早稲田宝生会は関東宝生流学生能楽連盟(※)に加盟していますが、そこでの活動内容はどのようなものですか。
普段は各大学ごとにお稽古をしていて、合同の発表会が年に2回あります。自演会では、関東で宝生流の能楽サークルがある大学の学生が集まり、宝生能楽堂の本舞台で稽古の成果を発表します。

早稲田宝生会の部員は私を入れて2名なので、発表会では出番を待っているときに、楽屋で他大学の学生と交流できるのが貴重ですね。

また、年に1回は「全国宝生流学生能楽連盟」という全国の集まりもあります。東京、京都、金沢、名古屋それぞれの会場で持ち回りで開催しています。

※関東宝生流学生能楽連盟とは関東の宝生流能楽部の学生が加盟している団体のこと。連盟校は東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学(宝生会、下懸宝生会)、國學院大學、相模女子大学、白百合女子大学、実践女子大学、日本女子大学、自治医科大学、十文字学園。年に2回の自演会あり。

──発表会に出てみていかがでしたか。
ただ見ているだけとは違って、能楽堂の舞台に出ると緊張しますね。プロとして舞台に出演されている師匠のすごさを実感します。

──周りで能を習ってみようかと悩まれている方がいたらどのようにお声がけされますか。
能は格式が高い感じがして、とっつきにくい習い事だと思うんですが、先生がおっしゃったように、実際にやってみて、自分に合うのかを確かめるのが一番いいです。もし合わなくても色々な先生がいらっしゃるということなので、少しでも古典に興味があったらまずは挑戦してみてほしいなと思います。


早稲田宝生会の部長の学生にも聞いてみました。

──先生の雰囲気はどのような感じですか。
自分では気づかないような癖などを具体的に指摘してくださいます。
お酒が大好きで、居酒屋トークに花が咲く、ノリのいい先生です。

──習い続けている理由を教えてください。
プロの舞台を観れば観るほど、自分の芸との差を痛感すると同時に、能の持つ奥深さに引き摺り込まれていく心地になります。
宝生流は「謡宝生」と言われるように、息をベースにした重厚な謡が魅力の流派です。息の使い方や呼吸方法など謡い方が複数あって、それを場面や節ごとに使い分けて実験する事に面白さを感じています。能には他にも、舞や能面、更には夢幻能など、様々な魅力的要素があります。能オタク、謡オタクとして長く稽古を続けています(笑)

── 今年6月10日(土)に、第139回関東宝生流学生能楽連盟自演会が開催されますが、ぜひ宣伝をお願いします。
139回という公演回数に、先輩方が紡いできた歴史の重みを感じ、連盟員一同身の引き締まる思いです。
当自演会では、関東の様々な宝生流能楽サークルが日頃の稽古の成果を披露します。
サークルによって謡い方や舞い方が異なるなど、各サークルの雰囲気が芸に表れており、とても新鮮です。
能楽サークルを巣立った先輩のなかには、プロの能楽師として活躍したり、能楽関係の仕事に就いたりされた方もいらっしゃいます。
能楽を強く愛する心が、今も昔も変わらず連盟員を結ぶ、温かな絆の源です。
能楽をこよなく愛する皆様、お気軽に宝生能楽堂・当自演会へお越しくださいませ。

當山先生 : 早稲田はもちろん、全学生が全力で舞台に挑むと思います。能楽に限らず若者が何かに一生懸命になる姿は見ているだけで元気になれると僕は思ってます。


インタビューにご協力いただきありがとうございました!


インタビュー日時:2月16日(木)、葛西舞台にて。


春から早稲田大学にご入学される方、
在学生で能を習ってみたいと考えている方は
ぜひ早稲田宝生会へ!🌸


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他大学の稽古風景はこちら。

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関東宝生流学生能楽連盟のみなさま、
写真をご提供いただきありがとうございました!

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