見出し画像

お稽古場探訪⑤【野月聡 先生】わんや舞台

宝生流能楽師の先生とお弟子さんに
能を「習うこと」の魅力をお話いただきます。

能を習ってみたいけど、誰に習ったら良いか分からない。
先生の雰囲気を知りたい。
稽古場の情報を教えてほしい。

という方はぜひご参考にどうぞ!

第5回目は
野月聡 (のづきさとし)先生です。
わんや舞台でのお稽古についてお話を伺いました。

■野月聡 Nozuki Satoshi
シテ方宝生流能楽師
1970年、青森県青森市生まれ。1988年入門。18代宗家宝生英雄、19代宗家宝生英照に師事。初舞台「土蜘」トモ(1989年)。初シテ「竹生島」(1996年)。「石橋」(1999年)、「道成寺」(2002年)、「乱」(2001年)、「翁」(2013年)を披演。


──野月先生の稽古場情報を教えてください。
東京稽古場のわんや舞台では月2回、地方では月1回お稽古しています。
地方の稽古場は、札幌、青森の弘前、福島の会津若松、栃木の日光にございまして、今月(2023年4月)からは長野の長野市、上田市、黒姫の三か所でもお稽古を始めました。

わんや舞台でのお稽古の様子

✨野月先生の稽古場の詳細はこちら✨

私は内弟子を終え独立した20代の頃からこちらのわんや舞台を使わせていただいております。
わんや舞台には歴史があって、宝生能楽堂からも近いですので、いろいろな能楽師が利用しています。

下の階にはわんや書店があり、謡本や扇などが販売されているんですよ。
一般的には、謡本を注文したら発送されるまでしばらく待つことになりますが、この稽古場を使っていると、新しく何か購入する際に2階のわんや書店に買いに行けば良いので非常に便利ですね。

また、稽古場から神保町駅や九段下駅までは歩いて数分ですので、アクセスが良いのもメリットです。

──野月先生のお稽古で大切にされていることは何ですか。
能にはいろいろな解釈があるので、より理解が深まるように、どのような言葉で、どのような角度から伝えるのが良いかを常に意識しております。

また、毎回のお稽古で新鮮なことや発見があるように、一方的で機械的なお稽古ではなく、その方に寄り添ったオーダーメイドのお稽古を目指していますね。

稽古場を借りていますので、何時から何時までと時間に決まりはありますけど、空いていれば時間を早めてお稽古することもできますし、前日や当日に時間を変更することも可能です。
東京では月2回やっていますが、月1回しか来られない方にはオンラインでのお稽古も対応しております。月1回にしたい、来月は2回にしたい、お休みしたいといったご要望があった場合にも対応したお月謝をご提示しています。

発表会のときには、数に限りはございますが、着物や紋付、袴なども無料で貸出していますので、買わなきゃいけないかなという心配もなく、習いやすい環境を提供していきたいと思っております。


──先生の公演情報を教えてください。
5月20日(土)五雲能で三番目の「藤戸」を勤めます。前シテは息子を殺された母、後シテは裏切られ殺された息子。前後で違う役は能では珍しい配役ですが、共通するのはワキ(佐々木盛綱)に恨みをもって迫るところです。
理不尽な物語を演じるのはとても難しいですが、挑戦しがいがあります。
ぜひ足を運んでいただければ嬉しく思います。

🍀5月 五雲能チケットはこちら🍀


──これから能を習ってみたいと考えている方にメッセージをお願いします。

始める前は、能を習うにはどのような恰好をして行ったらいいのか、決まりごとが多くて大変なのかなと思われるかもしれないですが、普段着でお越しいただいて構いませんし、正座ができなくても問題ございません。能は年齢性別を問わず、いろいろな方がチャレンジして楽しむことができる習い事だと思います。
謡や仕舞には心が整って穏やかになる要素もあり、自分磨きにも繋がります。普段はお勤めなどの日常があるかと思いますが、ぜひ能のお稽古をして非日常を味わってみてはいかがでしょうか。

野月先生のお弟子さんにインタビュー

■今回お話を伺ったお弟子さん
約10年ほど野月先生のもとでお稽古を続けていらっしゃる方。

──お稽古を始められたきっかけを教えてください。
私の母が野月先生に習っておりましたので、母の紹介で先生にお稽古をつけていただくことになりました。習い始めて10年くらいになります。

──習い続けている理由は何ですか。
先生のお話にも「整える」とありましたが、わりと気忙しく仕事をしている中で、ここでの時間は、整えて確認する時間としてとても良いですね。仕事にも新たな気持ちで向き合えるようになります。

──能を習ってみて気づいたことなどはございますか。
謡の意味や解釈を知ることによって新たな発見がたくさんありました。
仕舞は10年やってきますとだんだんと難しさが分かってくるんですよね。最初は動いているだけでしたが、仕舞の動きの中にある意味の深さが徐々に分かってきたように思います。
謡にしても仕舞にしても、野月先生は言葉や動きの意味を丁寧にお伝えくださるので、私にとっては非常に分かりやすいです。

──お稽古は仕事終わりにされることが多いですか。
私の場合は仕事のお昼休みに来ることもあります。私が持病で稽古場に来られないときに、先生にZoomで謡のお稽古をつけていただいたこともありました。

──発表会に参加されてみていかがですか。
毎年12月に宝生能楽堂で発表会(野月先生主宰の発表会)がありますが、夏の合同ゆかた会では、お弟子さんたちの発表の最後に先生方の仕舞や謡を見ることができまして、当たり前ですけど、力の違いを感じます。
個別に先生の能を拝見することはあっても、非常に身近に感じて、且つ、すごさが分かるのが、自分たちがその場所で仕舞をさせていただいた後に拝見する先生の仕舞や謡です。これはとても印象に残りますよね。

野月先生:実は、私たち能楽師が人前で仕舞をすることは少ないんです。装束や面を着けずに素のままでやる仕舞はまた違った緊張感や、やりがいがありますね。
私と同世代の能楽師とその社中のお弟子さん方も一緒になって合同で発表会をするので、人間関係が広がっていくきっかけになればと思っております。
発表会の場所としては宝生能楽堂がメインですが、都内には能楽堂がいろいろとあるので、表参道の銕仙会能楽研究所や神楽坂の矢来能楽堂を使わせていただくこともあります。

──周りで能を習ってみようかと悩まれている方がいたらどのようにお声がけされますか。
私より10歳ほど下の男性2人が私の発表会を見に来てくれたことがありまして、そのときに、「ぜひ習ってみたいのですが仕事の合間に行けますか?」「服装とかの用意ってどうしたら良いですか?」と聞かれたので、どなたも始める前は心配事があるかと思います。
実際は、フレキシブルに時間を調整することができますし、自由な服装でできますので、ぜひ稽古を見においでよと伝えたいですね。


インタビューにご協力いただきありがとうございました!


インタビュー日時:4月15日(土)、わんや舞台にて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?