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中国が海外企業の先端技術とデータを狙っている!

「軍民融合」が合言葉の中国に警戒

 中国は「製造強国」を目指している。2015年5月に発表した「中国製造2025」計画がそれだ。その中で最も警戒すべきは「軍民融合戦略」だ。軍事・民間融合を促進して、製造業の水準を引き上げる戦略をいう。そのターゲットとして次世代IT、ロボット、新材料、バイオ医薬など、10の重点分野を掲げている。
露骨に軍事力強化のために海外の先端技術を導入した民生技術を活用することを謳っているのだ。
                                 
 炭素繊維、工作機械、パワー半導体など、民生技術でも機微な技術は広範に軍事分野に活用され、軍事分野では軍民両用(デュアル・ユース)の重要性が高まっている。例えば、炭素繊維もウラン濃縮用の高性能遠心分離機やミサイルの構造材料に不可欠だ。中国の場合、海外の先端技術に狙いを定めているから警戒を要する。
ターゲットとなる日本や欧米先進国は、まさに守りを固めるのに躍起だ。

輸出管理法で企業秘密の流出も

 その手段の一つになる恐れがあるのが、今、中国が制定しようとしている輸出管理法だ。先進各国は警戒感を抱いている。

 本来、輸出管理法は、保有する高度な製品、技術が北朝鮮、イランなどの懸念国に渡ると、安全保障上の脅威になることから、これを未然に防止しようするものだ。メンバーは先進国を中心とした有志連合で、各国で輸出管理を実施してきた。
今や世界第2位の経済大国となった中国が世界の安全保障に協力すること自体は歓迎されるべきことだ。輸出管理法という法制度を整備することは大国としての責任とも言える。
                          
 問題はそれがどう運用されるかである。運用次第では本来の目的からかけ離れて、軍民融合戦略の手段にもなる恐れがある。法案の目的に、「平和と安全」という輸出管理本来の目的以外に、「産業の競争力」「技術の発展」といった産業政策的な要素も規定されているのは異例で要注意だ。

                                 
 例えば、外国企業が中国に進出した工場から輸出しようとすると、中国当局から輸出審査において企業秘密にあたる技術情報の提出を要求される。
日本からキーコンポーネントを中国に輸出して、これを中国で組み込んだ製品を第三国に輸出するケースを考えてみよう。中国での輸出審査の判定に必要だとして、組み込んだ日本製キーコンポーネントの技術情報を要求される恐れもある。その結果、中国当局から関連する中国企業にその技術情報が流出する可能性さえあるのだ。
 法治国家では「法律の目的外使用」は禁止されるのが当たり前だが、そういう常識が通用しないのが中国だ。
  
 輸出管理そのものには大義名分があるだけに、それが目的外に使われないか注意深く見なければならない。同時に、中国政府に適正運用を強く求めていく必要がある。もちろん日本だけが言っても中国は歯牙にもかけないだろう。欧米各国とも国際的な連携をとってプレッシャーをかけることが大事だ。

データの囲い込みを狙った規制も

 デジタルの重要データについても中国の規制の動きが懸念される。本年6月に施行されたサイバーセキュリティ法がそれだ。民間企業が企業活動によって取得したデータなどのデジタル情報の流通を国家が規制しようとする。

本来この法律は国内の治安維持が目的であるが、運用次第では、外国企業に対して、サーバー設置の現地化を義務付けたり、国境を越えて情報を移転することを規制したりする恐れもある。これは産業界全体に及ぶ大問題なのだ。

 今や製造業はIoT(モノのインターネット)への取り組みが競争力の源泉になりつつある。そこではビジネスで得た顧客データや工場データを収集、活用するために、サプライチェーン全体のデータの一元管理が欠かせない。従ってグローバル企業にとって自由なデジタル情報の流通が確保されることが不可欠なのだ。特に、巨大な生産拠点、市場である中国での自社内のデータは企業にとって重要だ。それが中国当局の運用次第では制約されかねず、中国国内に囲い込まれる恐れがある。産業界にとって大きな懸念だ。

 この問題も日本だけが申し入れて、中国側の対応が変わるわけがない。国際的な連携で中国を追い込むことが必要だ。そこでこの問題を中国も参加する多国間のルールの俎上に載せることが重要になってくる。
具体的には、中国も参加している、グローバルな枠組みであるWTOにおいて日米共同でこの問題を討議する場を作ったところだ。

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 中国はこうしてさまざまな使える法制度を駆使して、海外の先端技術の獲得や重要データの囲い込みに邁進しようとしていることを忘れてはならない。それが軍民融合の号令のもとに、軍事力強化につながっていく。


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