マガジンのカバー画像

【細野アーカイブ】

2
今ある【マガジン】への行き場が決まっていない「過去の拙文」を一旦置いておきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

推薦映画:私の心の一本 ピエトロ・ジェルミ監督作品『鉄道員』初出:読売新聞2017年3月10日

本 文 冒頭、邪気のない笑顔で小学校低学年の少年サンドロが足早に駅に向かって歩いている。ローマである。シーンバックで映し出されていくローマ駅に着く特急電車の機関士である父親アンドレアの働き盛りの様子。ホームで邂逅する二人。「パパァ! 」父アンドレアに駆け寄り嬉しそうに叫ぶサンドロ。そこにあの哀切の主題曲が流れ始める・・・。想い浮かべるだけで胸に迫るものを感じてしまうのは私だけではない筈だ。 一九五六年公開とあるから昭和三十一年。最早、戦後ではないッ、と言われた年の映画『鉄道員

15歳の春に観た「心の一本」『めぐりあい』(恩地日出夫監督 脚本・山田信夫/恩地日出夫 主演・黒沢年男/酒井和歌子)初出:Facebook(2016/1/23)

日本映画大学の細野ゼミで卒制の企画立案の参考試写として『めぐりあい』(監督・恩地日出夫 脚本・山田信夫)を見せる。 私は公開当時に横浜馬車道に在った東宝会館で観た。 中学を卒業し高校に入学する束の間の瑞々しい季節に観た。 黒沢年男が大学に行けなかった世代のイライラする青春像を巧みに好演。 酒井和歌子もある時期でしか表現できない瑞々しさが眩しい。 脚本も演出もビビッド過ぎるほどビビッド。 特に酒井和歌子の見た目で性に対する未知への慄きを捉えたショットは秀逸。 恋愛しか描