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【お能の音響】意外と語られない【けど確実に大事】

今回は #お能 の舞台・演目に確実に影響する要素なんだけど、ほとんど語られたことのないこと書いてみます。

ズバリ言います!

音!

#能楽堂 で鳴る音がいいこと!どーいうこと???


1  まずはショーにとって音がいかに重要か


たとえば映画です。未来都市の闇を俯瞰するカットのときなどはズゥゥゥンという極低音が鳴ってたりします。別れの悲しみをシーンでは物悲しい音楽が挿入され、出撃や戦闘のシーンは躍動感あるサウンドに乗せています。

もしそれらの音が無いならそのシーンはよくわからない。それらの音があることでそれらのシーンは何のシーンかを明確化させるのです。

お能も「見に行くもの」ではありますが、エンターテインメントであり、ショーであるからには音、つまり「耳で聞く」こともすごく大切なはず。


2 さてその音の響きは?


お能を構成する音は、謡(うたい、シテ/ワキなど、地謡、アイ狂言など)、囃子方(能管/小鼓/大鼓/太鼓)ですね。ここでは内容については言及しません。それらの音の響き、つまり #音響 について語りたいと思います。

謡がよくてお囃子がよいお能は、きっといいお能です。けど、けどそれらが見所(けんじょ、客席および観客)に「効果的」に伝わるかは、音響次第です。

これはバンドと同じで、いくらいい演奏や素晴らしい歌であっても、音楽として成立してないMixだと、お客様には伝わりません。

先の映画の例でも、ズゥゥゥンという音が迫力をもって観客を包み込まなくては未来都市の闇は感じられないかも。だからお客様はドルビーアトモスの上映館を選びます。★(私の一人称)はお能も同じだと考えています。


3 能楽堂の「音響」とは?


ここで賢明な読者の皆さまは不思議に思うことでしょう。

お能って完全生音なんじゃないの? マイクやスピーカーは使ってないんじゃないの??って。。

その通り!

★の知る限りでは能楽堂では館内放送に音響システムを使用するくらいで、演能にPAシステムは使ってないと思います。

あ!薪能や能楽堂以外でのお能は今回は言及しません!

話を戻しますよ。能楽堂での演能では音響システムは使いません。なのに、音響って何が言いたいの?ですよね?

生音の音響、とは、 #ハコ鳴り のことです。それぞれの能楽堂が持ってる天然の響きです。能舞台の下に設置されたカメツボ、囃子方の後方、老松をあしらった #鏡板 、見所の広さや天高、その他様々な要素が相まって能楽堂のハコ鳴りを作ります。

学生時分、お能のサークルで活動してたころ、目黒の #喜多能楽堂 によく観能に出向き、その度に感動しておりましたよ^ ^ 何年かして #国立能楽堂 の柿落としがあり、いくつかの演能はそちらに移動しました。そして★は観能での感動が薄れました。

何が違うのだろう。。そしてすぐわかりました。

ハコ鳴りが★の好みではなくなったのです。★のお能音響の好みは「ふくよかな #LowMid 」だったのです。Low Midはお能の音だと、鼓(小鼓のことをお能の世界では鼓という)のふくよかな音、そして謡の迫力を形成する音、シテやワキなど演者の足拍子、だと思います。

それらが強い目に響いてると★はお能に感動するようです。


4 最近訪問した3つの能楽堂


★はこの3月、喜多能楽堂、国立能楽堂、大阪の #大槻能楽堂 で観能の機会を得ました。

喜多能楽堂は先に書いたように、LowMidがふくよかで迫力があります。また狭いめで客席も少ないめで、音が回りやすく、それも迫力を形成する要素かと感じました。喜多流のパワー地謡という特色もハコにとてもマッチ、独特の音楽的グルーブを生み出し^ ^ 実に★好みです^ ^

だからといって、国立能楽堂のハコ鳴りがダメということではないです。国立能楽堂は見所が広く #HighMid の音域がまっすぐ飛び、音の輪郭がくっきりハッキリしてて、アタック(ざっくり説明すると、鳴った瞬間の音と思ってください)がわかりやすい印象。結果お能の、音楽としてのビートがわかりやすいと思います。

大阪の大槻能楽堂は天然のReverb / Delayが絶妙に響いてました。お囃子だけがゆったり鳴るパートでは、これこら何かが始まる感をありありと表現するハコ鳴りでした。

これらは★の私見で、観能をまた重ねるうちに、新たなる発見もあるでしょうし、考えや好みも変わるかも。しかし能楽堂が異なれば、地謡の響き、お囃子の響き、シテやワキの謡の響きや足拍子、すべて聞こえ方が異なるのは事実。能楽堂それぞれのハコ特有の響きも演能における重要な要素だと、★は思うのです。


喜多能楽堂

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5 能楽堂見所はどこに座ればよいか?


お能の「天然の響き」が演能を左右する重要なファクターであるなら、見所でどこに座るか、も重要なのでは?そうお思いになることでしょう。

★はカメラ一台でカメラ内蔵マイクで音を拾ったお能映像を何本か見たことがあります。収録場所は見所の1番後ろ、収録音もそこで聞こえてる音です。その音バランスを聞いたところ、囃子方の音の方が地謡より大きい!さらに!演目は烏頭(うとう)でしたが、橋掛りでシテ(=メインアクター)が「うとう」と切なげに謡うところがよく聞こえない。ということは、、、見所その付近では切ない表現の「うとう」がよく聞こえないのでは?という仮説が★の中で浮上したまま。。

これはそのまま、お能の見所は何を重視するかで、席を考えた方がいい、ということかも。学生のころはワキ正面(=正面ではなく舞台の横から見ていた)に座ることが多くそこで聞こえる音が好みだったのかも。。ワキ正面は地謡の正面でもあります。地謡の迫力を1番感じられる見所かも知れないのです。

しかしここは今のところ仮説です。。

追って検証していきたいところです^ ^


お能の音響に関する★の私見。お役に立ちそうですか??^^;

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では最後に昔からお世話になってます、 #粟谷明生  先生の快諾を得られましたので、明生先生の謡の動画を貼り付けておきます。ご堪能くださいませ(*≧∀≦*)


#葛城キリ

粟谷明生 先生

写真 石田 裕 様 / 映像編集 加藤 俊彦 様

協力 喜多流刊行会 様 / 主催 株式会社 浄玻璃 様





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