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宿泊施設を運営する「本社」がやりがちなミスと、本来あるべき姿

それなりに資本力のある会社が宿泊施設運営をはじめると、宿泊施設とは別に本社があって、そこで人事や採用、経理などを行うことがあります。

宿泊施設は作って売るだけの不動産ビジネスとは異なり、継続的に運営していかなければならないため、現場のオペレーションが最も重要となるのですが、本社にその認識が乏しい状態で運営を始めてしまうと起こるべきではない不要なミスが起きがちです。

以前、「ホテルの運営感覚でホステルやると失敗するよという話」という記事を書いたのですが、今回は運営体制の構造的な欠陥から起こりがちなミスについて書いてみたいと思います。


個人経営の旅館やゲストハウスは大抵、現場=本社機能のため、認識のズレが起きにくくこのような問題は起きないと思います。管理コストを抑えられ、コミュニケーションロスが起きにくいのも小さな組織の強みですね。

宿泊施設は現場のオペレーションを最優先すべき

宿泊施設において何よりも大事なのは目の前のお客様に満足していただくこと。その結果が、会社の利益に繋がり、その対価として従業員は給料をもらいます。

「現場は効率よくオペレーションを回して宿泊施設の価値(収益性・満足度・認知度)を最大化し、本社は現場がうまく回るように最大限サポートすること。」
これに尽きます。

しかし、往々にして本社には現場のオペレーションをわかっていない人の集まり(※ 現場叩き上げの経営者は違います)であることが多く、検討違いな要求をしてきたり、優先順位を判断できないなどのミスをして現場の足を引っ張ってしまうことがあります。

『本社の言うことを黙って聞いとけ』って体質のところは十中八九失敗すると思ってます。

よくあるミス1. 採用スケジュール

大抵の場合、現場責任者はチームとしての総合力や、それぞれのスタッフの入れるシフト、シーズン毎の稼働率、育成スケジュールなどを加味して採用の依頼をします。

例えば、7月に忙しくなり、人が足りないとわかっていた場合、6月に仕事を覚えてもらう必要があるため、5月中に募集、面接、採用まで行いたい。そのため、本社には4月の時点で採用依頼をすることになります。
これは単純な逆算ですよね。

ところが、7月に人が必要なので4月に採用をかけてくれと伝えたにも関わらず、勝手に締め切りを6月後半だと判断してしまう本社の人(または社長)がいます。

オペレーションに関する理解がないとそんな単純なことでさえわからないのです。

結果、7月の忙しい時にスケジュールを調整して面接し、採用してからも仕事覚えてもらうまでは、他のスタッフがサポートに入らなければならず、現場の負荷になってしまったり、お客様に迷惑をかけて満足度を下げてしまったりするということがおきます。

よくあるミス2. 現場の要求と異なる判断をする

オペレーションを行ううえで、どうしても備品や設備などが必要になる場合があります。通常現場で使用する消耗品などは現場で迅速に発注できるようになっているものですが、イレギュラーなものは会社に依頼することになります。

この時、頼まれたものをそのまま発注してくれればいいのですが、連絡も明確な理由も相談もなく、なぜか勝手に全く別なものを発注する人がいます。

以前、コピー機が壊れた時に、それまで使っていたものは過剰スペックだったため、A3カラーが出力でき、トナーも手に入りやすい手頃な価格の複合機を選んで購入してもらうように依頼したことがあります。

館内に貼る近隣情報や注意書き、イベントチラシなど、カラーで印刷する枚数は多くないものの、頻度としては少なくありません。
ラミネーターもA3まで可能なものがありましたし、情報量が多いものの場合はA3で作ったほうがいい。必要なスペックを持った製品の中で、トナーが手に入りやすく安価なものを選定して購入依頼を出しました。

するとある日、A4モノクロの複合機が届きました。
頼んでいたものと違うものが届いたので、理由を聞いてみたのですが、そちらのほうが数千円安かったからだそうです。
そして、カラーの印刷が必要な時は歩いて5分のセブンイレブンまで毎回プリントしに言ってくれと言われました。

このような勝手な判断をしてしまう人はいます。
現場にはなぜそれが必要なのか?という理由があるのです。

よくあるミス3. 勘違いした本社の社員

本社から保養所感覚で仕事を名目に来て、特に何をするでもないのですが、偉そうにしている社員がいました。
他のお客様がいても態度が大きかったりするのでいい迷惑なのですが、バイトは本社の社員ということで遠慮があるため、何も言えません。
これは本社がいかに現場を軽視しているかがスタッフ全員に肌感として伝わるため、モチベーションの低下の原因に繋がります。
モチベーションは高いにこしたことはないし、本社の人間がそれを下げてしまうのはどうかと思いますよね。

よくあるミス4. 見当違いの口出し

現場の人間には理由があってそのやり方があるにもかかわらず、非効率なやり方を強要したり、口を出して混乱させることがあります。

百歩譲って口を出したいのであれば最低でも週に1日は朝から晩まで現場でオペレーションに加わり観察すること。
それができないのであればマネージャーに一任すべきですし、マネージャーに一任できないというのであれば、一任できるマネージャーに変えるべきです。

「とにかく現場を知れ。知らないなら口を出すな。」が基本です。
これは本社機能が上位であると勘違いしているから起きることです。

結論:宿泊施設運営のあるべき姿

『現場の人間が社長やマネージャーの顔色を伺って仕事をするのではなく、お客様と向き合い、活き活きと主体性を持って働き、それを本社が最大限サポートする。』

上手くいってる会社は意図しているかは別として、このあたりがキチンとできている気がします。あなたの会社はどうですか?

最後までお読みいただきありがとうございました。
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ばしょう(@hostelmanager_b)でした。


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