見出し画像

ホテルの運営感覚でホステルをやると失敗するよという話

ホテルはホステルの上位互換ではない

大手資本がホステルを運営し始めた時にやりがちなのが、ビジネスホテル経験者をトップに据えてしまうことである。
多くの場合において、ホテルはホステルの上位互換にあると誤解しているようで、ホテルの支配人クラスであれば問題なくホステルを回せると思いこんでいるようなのだ。

ホテルとホステルは業種は一緒だが業態が異なる

ホテルとホステルはベッドを売る(厳密には宿泊を含めた体験を売っている)という意味では同じ業種ではあるが、業態は異なり、ホテルのやり方がホステルでそのまま通用するとは思わないほうが良い。

百貨店と商店街のお店では、たとえ似たようなものを売っていたとしても、客層は異なり、求められることも、距離感も、優先順位も、従業員も全く異なる。そして、それはホテルとホステルにも同じことが言えるのだ。

根本的に求められているものが違う

多くのホテルではプライベートやプライバシーに最大限配慮しつつ、先回りしてあらかじめ最大限のサービスを行う、言ってれば非接触推奨型サービス業という趣があるように感じる。
お客様に言われる前に全てやるのがおもてなしであり、大げさに言えば『言われたら負け』くらいのスタンスとも言えるかもしれない。

もしホテルのフロントスタッフがお客様にプライベートなことを聞き始めたり、自分のことを話し始めたら、それを見たホテルの支配人はどう思うだろうか。おそらくドギマギするのではないだろうか。

一方でホステルはどうかというと、全くの逆である。
チェックイン時の些細なことから盛り上がり、シフトが終わったあとに一緒に飯を食いに行くというようなことが日常的に起きる。『〇〇はどこにあるけど、わからなかったら聞いて。』という友達をもてなすようなお客様との距離感がデフォルトなのだ。
客室のドミトリーがデフォルトであることから、お客様同士の距離感も近く、そのお客様同士の接点になったりすることも多い。

そして、そのような距離感だからこそスタッフ層も全然異なる。

ホテル経験者は言葉遣いやマナーなど、その教育がしっかりなされていることも多く、ビジネスマンとして他の業種に行っても通用する人材は多いかもしれない。

しかし、ホステルでは語学は堪能であることは当然なのだが、言葉遣いやビジネスマナー、社会人的な常識よりも、友達を大事にするいいヤツであったり、個性的であったり、冗談をさらっと言えるユーモアのほうが重要であったりするのだ。
もちろん気が利くとか、きれい好きな人のほうがいいことは言うまでもないが、バックグラウンドも含め、スタッフの層はかなり異なっているといっていい。

正社員とバイト

客単価が高く、人件費を確保できるホテルでは基本的にフロントスタッフは正社員、もしくは契約社員であることがほとんどだろう。
それに対して、客単価の低いホステルではほとんどがバイトで数人の社員といったバランスのところが多い。
責任感も違うし、入れ替わりのスパンも早く、教育に時間をかけることはほぼ不可能な状況下で、スタッフをマネジメントする労力やコツは全くことなる。

レベニューマネージメントはより複雑

おそらくビジネスホテルなどのレベニューマネジメントは本社で一括して行っていたり担当者がいることが多いと思うのだが、ホステルの場合は支配人やマネージャーという立場の人間がレベニューマネジメントまで行うことが少なくない。

ホテルの場合はシングル、ダブル、ツインといった個室がほとんどであるのに対し、ホステルの場合はドミトリーや団体部屋など部屋のパターンも多く、競合他社も多種多様なタイプの宿が多いため、とるべき戦略も複雑になってくる。変数が圧倒的に多いのだ。

最終的には資質による

ここまでさんざん書いておきながら、最終的にはもちろん個人の資質によるところが大きいということは誤解を避けるために書いておかなければならないだろう。

ホテル経験者が駄目というわけではない。
ただ、ホテル経験者ということだけが優位性であり、その経験をホステル運営に期待しているのであれば、それはよく考えなおしたほうが良いだろう。
特にかけられるコスト面や、人事マネジメントで躓く事になりかねないと思うのだ。

さいごに

過去にホテル経験者がホステル運営会社の社長になって迷走したり、元ホテル支配人がホステルの支配人になったはいいが、うまく回せずに飛んでしまったというケースを見てきた。

個人的には無理もないと思うのだが、この辺りの誤解はまだまだ解けないんじゃないかと思う。これを読んだ人が同じ轍を踏むことがないように、または失敗した後にたどり着く『予言の書』としてここに書き残しておこうと思う。

最後までお読みいただきありがとうございました。
記事を続けるモチベーションに繋がりますので、よければ『フォロー』、『スキ』していただけると嬉しいです。

ばしょう(@hostelmanager_b)でした。


そのお金は僕の知識に変わります。